意味
ピー。ピー。ピー。
何秒かおきに繰り返される機械的な音。
オオカミが雪山に狩りへ出かけたらソマリアの海辺で鳥が着水した。
風力発電機の羽根でサーフィンするのにうってつけの日だ。
アラスカの雲は尾根伝いに伝染する。
玉ねぎの皮はいつも水に沈んだまま、猫の冬眠を呼び掛けている。
青いカエルが53階建てのビルの屋上から飛び上がって月に手をかけている。
ほうき星が地面すれすれを駆け抜けるときには豚のあばら骨は鍋でコトコト煮込まれているだろう。
ガラスを透過する柊の葉は食べると甘いに違いない。
半分に割れたコンサートホールの旋律に従う二両目の新幹線。
落とし穴に頭だけ埋まったまま各地に指示を送る自走型ロボットは右腕をショベルといっしょに売り払ったらしい。
蓋のない水筒、塞ぎこんだガードレール、芯のないアボカド。
後ろ暗い日々にほうれん草とふきのとうを添えて。
ららららら。
りんりんりん。
リズムよ。リズム。調和のとれたリズム。ひょっとしてあの音が聞こえていないというのか。
ザー。ザー。ザー。
意味とは共通項だ。
異常とは差異だ。
どちらも錨からの距離であることに変わりないだろうに。
何が違うというんだ。
たがが外れていることに今しがた気づくのは断然無茶な話だろう。
ここに意味を見出せなかったとしたら、一体どこに見出すというのだろう。
ここに、あそこに、あちこちに、どちらに?
意味の端っこ。どうしてここが端だと分かるのか。
真ん中がどこかなんて迷子に分かるはずもあるまい。
このゆびとまれ。
説明したって無駄だ。ムダ。釈迦に説法。
一体、二体、三体。
そもそも真ん中なんてものはおもちゃのおもちゃ。
絶対座標にクジラはいない。
止まっているウグイスに道を尋ねても返ってくるのは仏の顔。
ゆったりとしたスウィング。
波はあひるのおもちゃを運んでゆく。