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推しは蠍男  作者: 八重花
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いない!

「いた!」

 コンパクトの光を頼りに進んでいた三人は、林の中からこちらに向かって走ってくるミノタウロスを見つけた。

 汐は悲鳴を上げそうになった。

 春巻が走ってくる。

 春巻が走ってくる(二回目)。

 テレビでしか見たことがない春巻がこちらにやって来る。

「きゃーー!本物ーーーー!!」

「ぎゅーーーー!」

 初果と雨が叫んだ。汐も叫びたい。

「良かった。無事だったんですね」

 苫だけ真面目に対応している。

「ブモ!!」

 二人のやり取りを聞きながら、汐は固まっていたが、心中では生春巻に浮かれまくっていた。

 サインを頼むべきか。でもこんな状況だし遠慮すべきか。

 とか思いつつ、ライブ会場で色紙の販売をしていなかったか記憶を掘り起こす。

 しかし、そんな汐の葛藤には気が付かずに苫は春巻に尋ねる。

「何があったんですか?」

「ブモ!ブモブモブモブモ!!」

 苫が困った顔をして汐を見てくる。

 射手国人の苫はミノタウロスの言葉がわからないのだ。

 汐が通訳しても良いが、手っ取り早い方法をとることにした。

「雨ちゃん、おねがい」

「きゅっ」

 雨が汐の鞄の中から飛び出す。

 春巻の頭上でぴたっと止まり、

「きゅ」

 雨の、一つしかない目の下にある口がぱっくりと開く。

『俺いつも本土で仕事してるから、クレタ島に戻ってくるのが久しぶりで。懐かしくて。休憩時間にこっそり抜け出して林の草を食べてたら、罠にかかって、男三人に誘拐された』

 子供のような声が、雨の口から発せられる。

 苫は驚いた顔をした。

 そういえば、苫が雨の能力を見るのはこれが初めてである。

 これが雨の能力、『腹話術』だ。

 言葉が話せない人や声が出ない人、もしくは自分の意見をうまく言えない人の伝えたいことを代弁する。口下手な汐には重宝する能力である。

「えーっと····」

「普通に会話してくれて大丈夫だよ」

 戸惑う苫に汐は言う。苫は気を取り直して、

「それで、どうやって逃げ出してきたんですか?」

『男性が助けてくれた』

 苫は春巻の周りに誰もいないのを確かめてから、

「その人はどこに?」

『わからない』

「どんな人でした?」

『髪の毛が赤くて長くて、背が高くて、目が少しきつくて、強くて·····手が刃物に変身する』

「変身?」

 苫が眉をひそめた。

「その人も星道具持ってるのかな」

 自分も星道具を使っているからこそ、その予想はすっと受け入れられた。何故か苫は難しい顔で考え込んでいるが。

「謎の変身ヒーローとか、かっこいいよね」

 鞄の中にいる蠍に同意を求めると、

「あれ?」

 鞄の中に毒虫の気配がなかった。

「蠍さんがいない!!」

「きゅ!?」

 雨と一緒に辺りを見回す。

 先程から姿は見えなかったが、初果や苫が一緒だから隠れているものだとばかり思っていた。

 会場のどこかで他の観客に踏み潰されていたらどうしよう。

「探しに行くよ!」

「きゅー!」

「あ、ちょっと汐!」

 初果が声をかけてきたが、慌てていた汐は雨とともにすでに走り出していた。

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