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推しは蠍男  作者: 八重花
4/8

救出

 ライブ会場から少し離れた林の中、屈強な男三人が網にかかったミノタウロスを担いで運んでいる。

 網は特別製なのか、ミノタウロスが暴れもがいても破けないでいる。

「このまま船まで運ぶぞ」

「あの有名な春巻なら高く売れるな」

 男たちがそう言い合っていると、

「すげえな、お前ら、こいつらの見分けがつくのか」

 声が上から降ってくる。

「誰だ!!」

 男の声に応えるように、木の上から赤い髪の青年が降ってくる。

「誰だ!!」

 男の一人がさっきと全く同じ台詞を叫ぶ。

「誰って言われてもな」

 普段毒虫やってる兄ちゃんですとでも言えば良いのか?と、赤毛の青年―蠍は笑う。

「誰でも良い!見られたからには、やっちまえ!」

 春巻がどさっと地面に投げ出される。ブモっと悲鳴が上がった。

「てめぇら、んなことするとファンに殺されるぞ」

 言いながら蠍はタックルしてきた男を軽く避ける。ついでに足を引っ掻けて転ばせた。

 男たちは三人とも体格が良いが、いざとなれば変身も出来る蠍に体格差はあまり問題にならない。極端な話、象に変身して蹴散らすことも可能だ。というか、そっちの方が手っ取り早いのだが、ここはライブ会場の近く。誰かに見咎められても面倒なことになる。

「この野郎!!」

 残りの二人も突っ掛かってくる。

 刃物でも持っているかと思ったが、意外にも素手で向かってきた。

 蠍は右手を振り上げると、男の一人の顔面に向かって叩きつける。

 ゴッと鈍い音がして、男が倒れた。

 変身能力で掌だけを鋼に変えたのである。

 卑怯とは言わないで欲しい。使えるものはなんでも使う主義なのだ。一応死なないように狙って当ててるから文句はないだろう。

 残った一人は蠍の謎の攻撃に怯んだが、それでも意地があるのか向かってきた。

 蠍は全く慌てずに、他の二人と大体同じように倒す(戦闘シーン、割愛)。

「悪いが、こいつは汐の推しなんでな」

 あの馬鹿馬鹿しいドラマが打ち切りになったら、汐は泣くかもしれない。

 蠍はまだ網に絡まってもがいている春巻に近づく。

 試しに網を素手で引き千切ろうとしたが、上手くいかない。やはりミノタウロスを捕まえるだけあってかなり丈夫な代物らしい。

 倒れた男たちの身体を漁るが、やはり刃物は見つからなかった。

 仕方なく蠍は手をナイフに変身させると、春巻を閉じ込めてる網を切りにかかる。

 太いロープで編まれたそれは刃をかなり跳ね返してきたが、力任せにギリギリと少しずつ削るように切っていく。

 悪戦苦闘しながらもなんとか春巻を解放できた。

 蠍は春巻をざっと見るが、乱暴に投げ出されていたにも関わらずかすり傷ひとつ負っていない。この丈夫さはさすがミノタウロスと言うべきか。

「ブモ···」

 春巻が蠍に頭を下げる。

 何を言ってるかはわからないし、表情も読めないが、多分礼を言っているんじゃないかと思う。

「気にすんな」

 正直な話、蠍にとっては暇潰しみたいなものだ。

「それより、早くステージに戻った方が良いんじゃねえか?」

「ブモ!」

 春巻は頷くと、草を掻き分けてライブ会場の方へ向かう。

 残された蠍は、

「どうすっかな」

 密猟者たちは破いた網で縛り上げて、後で匿名通報しておけば良いだろう。

 だが、

「またあのライブに戻るのか···」

 蠍はげっそりと呟いた。

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