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推しは蠍男  作者: 八重花
3/8

事件発覚

 苫の話を聞いてから、汐は考え込んでいた。

 ミノタウロスを誘拐。

 汐も先日謎の男たちに誘拐されかけた。

 犯人はすぐに捕まったが、犯人たちが黙秘しているため、未だに動機は不明である。

 汐はあのときのことを思い出す。

 怖くて仕方がなかった。車に押し込められて、目隠しされて。

 そのとき、誰かが助けに来てくれた。

 優しくて、大きな手。

 目隠しで顔もわからないのに、何故か安心出来た。

 その人がどこの誰なのかはわからない。

 けれど、あの優しい手を忘れられないでいる。

「後半なかなか始まらないね」

 初果に声をかけられて、汐は我に返る。

「え、あ、そうだね。どうしたのかな」

 春巻たちが舞台裏に引っ込んでから一時間以上。休憩にしても長すぎる。

 すると、ライブの前説をやっていた男性が慌てた様子で出てくると、

『まことに勝手ながら、トラブルにより、休憩時間を延長させていただきます』

 観客たちがざわめき始める。

 汐たちもわけがわからずまごついていると、

「汐ちゃん」

 見ると、苫がまた戻ってきていた。

「どうしたの?」

 汐が聞くと苫はものすごい小声で、

「出演者のミノタウロスが一人、いなくなった」

「うええ!」

 また大声を出してしまうが、周りもざわついているので気にする者はいない。

「なにしてんの!あんたら、警備してたんじゃないの!?」

 初果が苫の胸ぐら掴んで詰め寄る。

「初果ちゃん、やめなって」

 ファンとしての気持ちとイケメンへの敵対心がないまぜになって怒るのはわかるが、苫が気の毒なので汐は止める。

 しかし苫は慌てずに初果の手をやんわりと外して、

「汐ちゃんに頼みたいことがあるんだ」

「ウチに?」

 汐に捜査を手伝えるとは思えない。腕っぷしも頭も弱いし。

「前に、探し物が出来る星道具を使ってただろう」

「ああ、『コンパクト』のことだね」

 前に苫と遭遇したとある事件で犯人を探すのに使った星道具である。

 汐には祖父が遺した不思議な道具たち―星道具がたくさんある。

 便利すぎるので乱用するのは避けたいが、それで今助けられる人がいるのに使わないのは何か違う気がする。

 しかし問題があるとすれば、

「········」

 初果がジトッとした目で何か言いたげにこっちを見ている。

 (イケメン)に手を貸すと初果の機嫌が悪くなるかもしれない。

 しかし、先日誘拐されかけた身としては、拐われた(かもしれない)ミノタウロスを放っておけない。目覚めが悪い。

「わかった。その代わり、ウチも一緒に連れてってくれる?」

 危険かもしれないが、大事な祖父の形見を人に預けっぱなしにする方が不安になる。

「汐!」

 初果が怒ったような、というか実際に怒っているのだろう声を上げるが、

「B-foodsを見捨てられないでしょ?」

 それを言われると初果は黙る。

「じゃあ苫さん、行こ」

 初果が何も言わないでいるうちに。

 と思ったのだが、

「待ちな!」

 初果が引き止めてくる。しょうがなく振り返ると、

「あたしも行くからね!」

 初果は言って汐と腕をがしっと組んでから苫を睨み付けると、

「でも勘違いしないで!あんたのためじゃないからね!」

「その台詞、すごくツンデレっぽいね!」

 汐が言った。

 苫は『コンパクト』欲しいと思ってそう。

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