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【完結】暗殺の瞬が名を捨てるまで  作者: 二角ゆう
表の大戦(おおいくさ)編
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第48話-1 瑛真と毫越(ごうえつ)の闘い(前編)

 瑛真は毫越ごうえつをまっすぐ見つめると、赤龍の首飾りを手に持って毫越の方へ向けると息を肺いっぱいに吸い込み大きな口を開けた。


「我が名は赤龍の瑛真! 父・蘇芳すおうの仇を討ちに来た!!」


 毫越は瑛真の方へ馬を進めた。毫越は瑛真に近づくと何かピンと来たようだ。嬉しそうな、しかしねっとりとした笑みを浮かべ片方の口角をぐいっと上げるとこう言いながら馬を降りた。


「あの時の坊主じゃねーか。そこそこ強くなったのか? わざわざ会いに行った甲斐があったぜ。お前は炎を使うんだろ? 鎧で丸焦げは嫌だからな。鎧は取らせてもらうぜ」


 毫越は鎧を脱ぎ捨てた。それを見た瑛真も同様に馬から下りると鎧を外した。それを見た毫越は剣を抜きながら嬉しそうに言った。


「俺は強いやつが好きだ。少しでも長く楽しませてくれよ!」


 毫越は足を踏み込み剣を構えて瑛真に突っ込んできた。瑛真も剣を鞘から抜くと構えた。毫越は上から下へ剣を振り下ろした。それを瑛真は剣を横に倒して耐える。


 キィンキキキィン!!瑛真の腕には瑛真の持つ剣を金槌で勢いよく叩きつけられたような強い衝撃が来る。両腕を震わせながら毫越の剣威力を殺す。瑛真は剣同士が離れるとすぐに後ろへ下がり右へ回って剣を振る。


 キィン!毫越は軽々と瑛真の剣を払う。そして毫越は続けて体勢を低くし下から振り上げる。


 キキキキィィィン!刃と刃が擦れ合う。瑛真はすぐに構える。後ろに下がっている暇はない。前へ前へ進んで毫越の胸を狙わなければならない。


 キィン!キン!キィン!!キキキキィン!

 両者は激しい切り合いをする。毫越は瑛真の剣が上から振り下ろされると動きを揃えるように刃を添えて下ろすと下からすくい上げるように勢いよく振り上げ瑛真の剣を放り投げた。握っていた剣が自分の思った方向と逆方面へ動き瑛真の手から離れていった。


 カララーン、剣は地面を滑る。瑛真は毫越の動きを見つめながら右腰についている鎖付きの短剣二本を右手で出すともう一本の短剣を左手で持って後ろから腰へ鎖を回して持った。


「もう一つ武器を持っているのか。準備がいいな」


 それを見た毫越は少し口角を上げる。瑛真は毫越を見つめていたが居心地が悪くなり視線を外す。足元に違和感を感じ上へ飛び上がる。瑛真の足があった地面はボコッと隆起した。


(これが泥の力?)


「勘もいいんだな。俺の力は後で見せてやるよ」


 そう言うと毫越はニヤニヤしている。瑛真は毫越に視線を戻すと右手に持った短剣に力を込める。短剣は炎と風を纏いながら流線形に回転する。


 すると瑛真は毫越の方へ走った。遠い間合いで瑛真は右手を前へ突き出した。その短剣を毫越は剣を振り下ろして防ごうとする。短剣が毫越の剣に当たる直前に瑛真は勢いよく鎖を後ろへ引いた。短剣に纏っていた炎と風はそのまま毫越へ飛んでいく。


「くっ!」

 毫越に直撃した。


 ボンッ!煙が膨れ上がる。そのまま瑛真は左手に溜めていた炎風を纏った短剣を宙で思い切り毫越の方へ振り下ろした。短剣から放たれた炎風が毫越へ飛んでいく。


 ボンッ!また煙が上がる。風で煙が横へ流れていく。毫越の胸元の表面に泥の盾が出来ていた。瑛真は目を丸くした。そして毫越は瑛真と目が合うと片側の口角を上げて声を上げた。


「へぇ、こんな使い方があるのか、面白えな。そしたら今度は俺の力を見せてやる」


 毫越は剣を持っていない左手を前へ突き出すとこう言った。


「泥鉄砲」


 左手から泥の玉が勢いよく瑛真目がけて飛んでくる。瑛真は短剣で弾く。短剣に泥の玉のようなものがくっつく。


 また毫越の手から三つの泥の玉が飛んで出てくる。はじめの二つは短剣で防いだが一つは防ぎきれず左腕でガードする。腕に泥の玉がくっつく。


 その時、瞬が泥使いと戦った時の説明を思い出していた。


 ”固くもできるから手に着いた泥の内側をトゲにして刺してきた”


 瑛真は目を見開いて腕から泥を振り払おうとする。


 ズキン!!腕を1000本の針が刺すように痛みと熱さが襲ってきた。


「ぐああぁぁ!!」


 あまりの痛みに身体をよじる。炎で泥を固めると反対の手で短剣の柄で泥を叩いて壊す。左腕は泥のついていたところにたくさんの穴から血がにじみでて膨らんでいる。腕から血が溢れ腕全体が血にまみれた。その後、毫越は泥の玉をたくさん作るとこう言った。


「泥鉄砲・連弾」


 さっきよりたくさんの泥の玉が瑛真目がけて飛んでくる。瑛真は急いで手に力を溜めるこう叫ぶ。


「炎獅子!」


 ゴオッと突風とともに炎の獅子が毫越目指して走っていく。炎獅子は泥を飲み込む。固まった泥は地面へボトボト落ちていく。炎はそのまま毫越へ向かう。それを見た毫越は両手を広げて泥を集める。


「泥地獄」


 炎獅子を泥が飲み込んだ。そしてその塊は下へ落ちて地面に当たるとボロっと壊れた。


「なかなかやるじゃねーか。こんなのはどうだ?」


 毫越は瑛真に言うと毫越を睨んだ。すると毫越はニヤリとするとこう付け加えた。


「俺を見てる場合じゃねーぞ」


 瑛真は気配を感じてバッと後ろを振り向くと後ろから伸びる泥が目の前まで来ていた。そして泥の柱が瑛真を囲う。


「泥地獄・牢」

「炎風牢!」


 瑛真は自分の周りに一回り小さい柱を並べる。


 続けてこう叫ぶ。

「炎爆!」


 そう言うと炎風牢は外へ向けて爆発した。毫越の泥地獄・牢はボロボロになり四方へ散る。そこへ瑛真はこめかみから汗を垂らした。


(あまりにも攻撃が強い。攻撃を一つ食らうだけで大怪我になる。どうやったら毫越を倒せるんだ??)


 瑛真は先程までの攻撃を思い返していた。泥は身体に受けると粘性が強くて簡単に落とせない。固さも自由に選べる。攻撃の回避方法は今のところ避けるか炎で焼くかしかない。短剣から放った攻撃は意外性から初めだけ当たったが二度は通用しない。


 瑛真は左の短剣を仕舞う。斗吾とうごを倒した時のように力を圧縮しよう。それを短剣に纏わせたらどうだ?右手に持った短剣に圧縮しながら炎風を纏わせはじめた。短剣は本当の大きさよりも大きくなっていく。


 それを見た毫越は口角を上げる。

「なかなか楽しいな。次は何が来るんだ?」


 瑛真の短剣は炎の大剣になった。構えると毫越の方へ走った。それを見た毫越はこう言う。


「泥鉄砲」


 瑛真は飛んできた泥を意図も簡単に切る。毫越は両手を前へ出す。


泥壁どろかべ


 毫越の前には分厚い泥の壁が出来上がった。壁は大きいのでこれを避けて毫越へは攻撃をすることが出来ない。瑛真は右手をグッと引くと刃先を壁に向けるとそのまま刺した。


 バキバキ!泥の壁はヒビが入る。外側を大きく纏う炎風は小さくなる。毫越は壁を突き抜けて伸びる炎の刃先を見ると身体の表面を泥の盾で覆う。小さくなった短剣は炎風を圧縮した力を纏っている。短剣は割れないで泥の盾と対峙している。毫越の胸元へ短剣が迫る。瑛真は力を込めた短剣は纏った炎風がどんどん小さくなる。


「刺されーーー!!!」

 瑛真は叫ぶ。


 ビキンッ!毫越の泥の盾が割れる。

 瑛真の短剣は炎風の力を失った。

 毫越の胸元には5センチほどの切り傷が出来ていた。


 ツーッと血が流れ始めた。毫越は自分の胸を流れる血を見ると下を向く。それを見た毫越は肩を震わせている。


「ははははは!! 血を見たのはお前の親父以来だ! 嬉しいなぁ!!」

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