表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/137

【過去編 白狼の記憶】第24話目 白狼、八傑になる(前編)

【過去編】は一話目に繋がる白狼の過去についてのお話です。

 白狼は大通りを歩いていると恭一郎に合ったがバツが悪かった。この前長月に派手に負けて99位に戻ってしまったのだ。そこへ恭一郎は声をかけた。


「霜月」

「恭一郎殿⋯⋯」

「聞いたよ、下剋上ルール使ったんだって?長月は結構強いでしょ。おかげで彼は今18位だよ」


 それを聞いて白狼はあからさまに不満そうな顔をした。


「ふふ、私も霜月と手合せしてあげたかったんだけど、もう少しすると戦に行くんだよね」

「えっ?⋯⋯それって⋯⋯」


 白狼は目を丸くした。

 恭一郎は白狼を見て口角を上げた。


「勝てば天下だ。ちょっと長丁場になるかもね。でも八角と一心もいるから勝つと思うよ」

「私が八傑になってある人を迎えたら、表で会ってくれますか?」


 白狼は真剣な顔で恭一郎に聞くと、恭一郎も真剣な顔で返す。


「もちろんだよ」


 白狼は深くお辞儀した。





 そしてしばらく年月が過ぎ、白狼は17歳になった。背も大きく伸び180センチほどに伸び筋肉もしっかりとつけた。

 影屋敷の左殿に入ると受付が騒がしい。


「号外だ!!厳橿いつかし殿を敗って阿道殿が天下を取ったぞ!」


 その報せを聞いて、白狼はその場に立ち尽くしていた。

 受付の者が白狼とある者を見た。


「これは霜月殿と橙次殿⋯⋯」


 白狼は振り向くと橙次が立っていた。


「ついに来たな」


 厳橿いつかし殿の影武者だった者は八傑の一人だった。9位と10位の者は繰り上がりを待つしかない。


 9位者は八傑へ、10位の者は9位へ。11位の者を決めなくてはならない。10位より下位の者は15位~11位の者がトーナメントで11位を決めることになっている。


 この時橙次は11位、白狼は15位だった。


 トーナメントは二人とも勝ち上がり決勝は白狼と橙次が戦うことになった。

 闘技場に入ると審査員の加藤が白狼と橙次を交互に見た。


「まさかお前たち二人が戦うことになるとはな。⋯⋯どちらもやばくなったら止めるからな」


 白狼と橙次は闘技場の真ん中に立って対峙した。


 橙次と霜月はお互いを見ると口角を上げて笑った。


「霜月、やろうぜ」

「あぁ橙次、全力でやろう」


 加藤は二人を見ると加藤を見てしっかりと頷いた。


 それと見た加藤は肺一杯に空気を吸った。


「はじめ!!」


 白狼は濃霧を作り出すと目の前が真っ白になって何も見えない。すると橙次は石に粘着を括り付けたものをいくつも飛ばした。白狼の分身⋯⋯幻が濃霧から出てくる。石はどれもすり抜けていく。


 ピクッ、橙次は顔をガードした。姿を見えにくくした白狼がハイキックを繰り出したのだ。


 橙次は足に重心を起き倒れないように耐えた。すぐに橙次は粘着を白狼へ飛ばした。左手に粘着がつく。すると白狼は橙次の方へ引き寄せられた。そこで橙次が攻撃を決める少し前に幻痛を使う。


 ピクッ、橙次が反応する。顎を狙ってパンチを繰り出す。橙次は素早く自分の手と白狼の左手を繋いでいた粘着を白狼の右手へ飛ばした。


「ぐっ」


 白狼は両手が粘着で動かない。橙次に金縛りをかけると両手を地面につけて橙次に足払いをした。


 ドシ、橙次が倒れる。


 白狼は片膝ついて縛られた手を前に出すと口を開こうとした。


 橙次は粘着を近くの木につけて飛んでいった。


「夢回廊」


 白狼の攻撃は外れたが橙次の粘着が解かれたので両手が自由になる。白狼も木の上に登ると景色を歪める。それを見た審判員の加藤は言葉をこぼした。


「こりゃあ手の内を知っている相手だとやりづらいなぁ」


 白狼は幻を作ると幻は木を降りていった。自分は審査員のフリをする。気配が幻に近づく。


 目で追えない速さで目の前に橙次が現れて白狼のみぞおちにボディブローが直撃した。


「ちっ粘着でこっちに飛んできたか」

「審査員のフリなんて二番煎じじゃねーか、霜月さんよお」


 橙次は挑発している。


 白狼は橙次に突っ込んで来た。ミドルキックをお見舞いする。


「いってー、最近霜月の攻撃重たいんだよなあ」

「橙次の粘着の攻撃バリエーションが増えてて困るんだよね」


 そう言いながらも二人は嬉しそうだった。


 白狼は深く踏み込むストレートパンチが来る。すると橙次は両腕でガードする。


 ドゴン!、橙次は10メートルほど後ろに滑っていった。


「幻はもう使わないのかい?」

「なんか疲れちゃって。体術でも結構いけると思うんだけど」


 橙次は白狼に一気に間合いを詰めると回し蹴りをした。それを見てガードが間に合わないと分かると白狼は腹で直接受ける。


 白狼はそのまま身体を斜め下にねじり落として手を折りたたんで肘を橙次の頬に当てる。

 そして身体を捻じるとその勢いを使って左手でアッパーを続けて繰り出す。


「くっ」


 橙次はぎりぎり顎を上に向けて避けた。

 その後、橙次は両手を広げた。


「悪いな」


 白狼の背後に巨大な網が出来上がっていた。

 そのまま白狼は網にかかる。

 網の中から手を伸ばしてこう叫ぶ。


「夢回廊」


 橙次に当たると夢回廊の中に入り込んでしまった。混乱の世界、橙次は抜け出せない。

 白狼は身動きして短剣で斬りつけたが粘着の網は短剣で切れない。網から抜ける方法はなかった。


 少し躊躇して白狼は手を前に出した。

 白狼は加藤をちらりと見た。加藤は白狼と目が合うと構えた。


 白狼は心の中で数えた。


 10


 9


 8


 7


 橙次が夢回廊から出てくる。



「何だ今の攻撃は⋯⋯」



 橙次は頭を押さえている。


 6


 5


 橙次は白狼が何か構えているので手を前に出して技を使おうとする。


「橙次、ありがとう。橙次は影屋敷で初めて会った仲間だ」


 4


 それを聞いた橙次はこちらを見て目を見開いている。



「霜月?」



 3


 ポタッ、白狼の目から涙がこぼれる。


 2


「ごめん、橙次」


 1


 白狼は口を開けた。


「地獄牢」

次回:【過去編 白狼の記憶(最終話)】第25話目 白狼、八傑になる(後編)は1/30(木)の掲載予定です。

とうとう過去編最後になります。お話の始まりに瞬たちに会うちょっと前までのお話になります。

次回の作者にすみイチオシの台詞↓

「これは独り言なんだけど、秋実先生は僕の育ての親で僕の世界そのものだった。そこに置いてきた先生の孫を迎えに行くんだよ。

⋯⋯でも俺は秋実先生を刺した。⋯⋯矛盾しているだろう。それでも彼を守りたいんだ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ