表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/137

【過去編 白狼の記憶】第23話目 下剋上の決闘(後編)

【過去編】は一話目に繋がる白狼の過去についてのお話です。

 48位の白狼の対戦相手が23位の長月に決まると、橙次はこめかみから汗を流して白狼を見ていた。


 ここ最近このルールを使ったものがいなかったせいか皆、自分の決闘を行っていたがどこか浮足立っている。下剋上ルールの決闘は最後なのだ。それまで白狼と長月は他の決闘をしない。橙次は白狼の横に座った。


「長月殿は23位だ」


 白狼は他の決闘を見ながら答えた。


「それでもやらなければならない」

「はぁ、お前ってやつは⋯⋯相手は雷を使うぞ。気をつけろ」


 白狼は前を見続けた。


 他の決闘は終わった。闘技場の周りに集まった他の者はこれから始まる決闘を楽しみにしていた。ある者は長月の技を見ることを楽しみにした。ある者は白狼がボコボコにされることを楽しみにしていた。


「霜月は武闘会が始まる前に審査員の加藤と楽しそうに話していたぞ」


「48位で23位に挑むとか惨敗するよ。見ものだな」


「影屋敷当日に199位になったそうだ」


「死にそうになったら審査員止めに入んのかな」


 いろんな意見が飛び交う。


 加藤が白狼を見た。


「やばそうだったら止めるからな。雷と泥は相性が良い」

「お気遣いありがとうございます。しかし僕は全力でやるだけです」


 白狼と長月が闘技場の真ん中に歩いてくる。


 自然と周りにいた者は口を閉じて二人を見ると静かになる。


 長月は白狼を見てニヤリとした。


「綺麗な顔した少年だな。だか俺は誰にだって手加減しない。全力で行くぞ」

「そうこなくっちゃ」


 長月を見ると白狼も笑顔を貼り付けた。

 加藤は二人の間に立った。


「下剋上ルールの決闘を始めます。長月殿が勝った場合、霜月殿がこの1年で得たポイントを長月殿へ移譲します。霜月殿が勝った場合、霜月殿は23位へ、長月殿は48位へ移動になります。お二人とも準備はよろしいでしょうか」


 二人は加藤を見て頷いた。


 加藤は一呼吸おく。

 肺一杯に空気をすった。


「はじめ!」


 長月は雷を白狼へ向けて飛ばした。

 白狼へ直撃した。


(雷は想像以上だ。)


 白狼は幻術で右へ走っていく幻を作った。白狼は雷に直撃して動けなくなっていた。そして姿を見えにくくして、景色を歪めた。


「ほう、雷はよけたのか?幻術も使ってるのか、やるじゃねーか」


 長月は白狼の幻に向かってミドルキックを繰り出す。幻はパンチを繰り出す。当たっていないが白狼は幻痛を長月に繰り出した。


 長月は顔を歪めたがそのままミドルキックを繰り出す。


(手応えがないから幻なのがバレてしまう。左側にも幻を作り出そう。そろそろ動けるか。)


 そして白狼は立ち上がる。長月はミドルキックを出したが手応えがなかった。すると長月は周りを見た。


 ドクン、白狼は心の臓が跳ね上がった。長月と目が合った気がした。


 左側に作った幻の方へ動いた。白狼は音を立てないように長月へ近づいた。そして長月の後頭部へキックをした。


 白狼は直撃した感触が足にあった。長月は片膝つくと間を置かずに周りへ雷を落とした。白狼は思わず後ろに飛び退いた。長月は頭を押さえる。


「いってー!幻術使いは姿も消せるのか」


(何でた。致命傷のはずなのに頑丈すぎる。)


 長月は周りを見ると少し景色が人型に歪んでいるところを見つけた。


 長月は両手に雷の玉を作ると両手を合わせて人型に歪んでいるところに向けた。白狼は長月に金縛りをかけて横へ走る。


「うっ」


 長月はピクッと反応する。雷の玉は手から離れた。


 空振りだ。


 長月は白狼を見た。反対方向から顎に衝撃が来た。


「幻か」


 顎にハイキックをもろに食らって長月は倒れる。


 白狼は長月に飛びついてパンチを繰り出したが長月は倒れながらみぞおちにキックを出した。


 すると白狼は蹴られたまま後ろにふっ飛ばされた。そして地面へたたきつけられた。そのままその姿勢で長月の右手に幻痛を食らわす。


「ぐあっ」


 長月は顔を歪めながら左手を白狼へ向けた。


「雷柱」


 白狼の周りを囲むように雷の柱が立つ。白狼は周りを見て焦った。


 長月は痛めた右手を上に向けた。白狼の頭上に雷の玉が出来る。


いかづち


 白狼は上を見つめていた。


(逃げ場がない。完全に負けた。死ぬな。)


 ドゴン!土煙が辺りに広がる。その煙が徐々に薄くなっていくと白狼がいたところに土の山が出来ていた。長月がそれを見て眉をひそめた。


「土? どういうことだ?」


 中が空洞のようで頂上が崩れる。ボロボロと土の山が崩れてなくなった。


 すると加藤が近づいてくる。


「勝者、長月殿!」


 加藤を見た長月は笑った。


「加藤殿の泥でしたか。いや、驚いた」


 白狼は地面に倒れている。すぐに起き上がり膝をついた。

 すると向こうから長月はが歩いてくる。


「全力でぶつかってくる相手は嫌いじゃない」


 そして長月は手を差し出した。それを見て白狼はこう言った。


「僕の完全なる負けです。手も足も出なかった。ですが手を握るのは僕が勝った時でもいいですか?」


 長月は目を丸くした。


「はっはっはっ、分かった。じゃあな」


 白狼は地面についた手を強く強く握った。


 それからしばらく白狼は有名人になった。


 ”下剋上ルールで無謀な勝負をした敗者”として。


 白狼は長月との戦いの直後、いくつもあるかすり傷の消毒のために治療・治癒室へ来た。


 部屋には鈴音がいた。そこで霜月は声をかけた。


「鈴音⋯⋯消毒液あるか?」

「どうしたの? 傷だらけじゃない!」


 鈴音は目を丸くしている。

 白狼は下を向いてぶっきらぼうに言った。


「そこの闘技場で派手に負けた」

「⋯⋯身体は大事にしてよね」


 白狼は鈴音が珍しく怒っていることに驚いた。


「そんないつかは朽ちていく身体だ。仕方がない」


 鈴音はキッと白狼を見た。その眼差しは怒ったていたがどこか悲しそうだった。

 白狼は目を伏せ頭を下げた。


「悪い、気を悪くさせた。気をつける」

「じゃあおいしい茶葉持って来たら許してあげるわ」


 白狼の頭に鈴音の言葉が降り注いだ。そして白狼はガバっと顔を上げた。


 鈴音は笑っていた。白狼も微笑んだ。


「分かった」


 白狼は影屋敷の左殿から出ると橙次が待っていた。


「無事でよかったな」


 白狼は橙次がホッとしているけど口を尖らせていたのを見て笑った。


(ちくはぐだけど心配してくれたんだ。)


「ふふ、どこかで飯食べて帰ろう。僕が代金は持つよ」

「じゃあたらふく食うか!」


 二人は笑いあった。

表舞台も大きく動いていきます。さて白狼はどうやって八傑を掴み取るのでしょうか?

次回の作者にすみイチオシの台詞↓

「号外だ!!厳橿いつかし殿を敗って阿道殿が天下を取ったぞ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ