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【過去編 白狼の記憶】第22話目 下剋上の決闘(前編)

【過去編】は一話目に繋がる白狼の過去についてのお話です。

 白狼は影屋敷に入った初日に199位を得た話は瞬く間に影屋敷に広がった。

 白狼は武闘会に積極的に参加した。相手の強さを見て出来る限り体術で戦った。


 はじめの1ヶ月が経った。


「白狼、順位の更新は今日だ。見に行こうぜ」


 白狼と橙次は左殿の受付に確認しに行った。順位は掲示されていた。

 それを見ると白狼は不満そうな顔をした。


「167位か」


 橙次はちらりと白狼を見たがまずは橙次も自分の順位を探した。自分の順位を見つけると白狼と同じ顔をした。


「白狼は月の半分もいなかったじゃねーか。俺は123位か。微妙だなぁ」


 それから白狼と橙次はよく一緒に訓練していると月日はあっという間に経っていった。白狼は順位のこと以外に考えなくていい今の状況を少し気に入っていた。


 そして半年も立つと白狼の順位はようやく2桁になった。白狼は自分の順位を確認するとにっこりして橙次に伝えた。


「橙次、僕もようやく2桁になったよ。96位」

「うへっ早すぎだろ!俺は84位だ。まだ霜月とは当たんねーな」


 橙次は不味いものを食べたような変な顔をしてそう言った後、白狼を見るときょとんとしていた。順位は100位以上と99位以下でトーナメントの内訳が変わる。


 今回、白狼は初めて2桁になったので橙次と当たらない理由を知らないのかもしれない。橙次はその様子を目で探った後、白狼を見てこう説明した。


「2桁になると99位〜90位、89位〜80位と10ずつ分かれて競うから俺と霜月は組み合わせ的に組まれない。そういえば最近忙しそうだけど何してるの?」

「特訓も増やしたんだけど、情報室に行って影屋敷の登録している人の情報を調べたり他の順位の武闘会の見学をしているよ」


 白狼はニコリとするとこう説明した。それを聞いて橙次は目を見開いてこう尋ねた。


「他の順位の武闘会の見学??出来るのか?」

「僕は交渉して許可をもらったよ」

「そうなのか?俺も見学させてもらおう!」


 橙次は受付に突っ込んでいった。白狼はそれを見て笑っていた。



 ■



 しばらくして白狼は13歳になり、年に一度の特別な武闘会となった。白狼が影屋敷に来てから初めてのことだった。今日だてまきは白狼の肩に乗っている。白狼はあることを橙次に告げた。


 そうすると橙次は雲行きの怪しい顔から怒ったような顔を変わって白狼を全力で止めている。


「霜月、それは無謀だ。お前はまだ48位だぞ。下剋上を使うのは早い。俺だって使わないぞ」


 年に一度の特別な武闘会と言うだけに、この時のみ有効なルールが存在する。


 ”下剋上ルール”


 この1年のポイントをすべてをかけて自分より上位のものと戦うことが出来る。


 白狼は48位なので普段は40位までの者と対戦するがこのルールでは40位より強い39位以下の者と戦うことができる。その先は抽選となり当たった順位の者が承諾すると決闘が決まる。


 例えば30位の者と決闘をする。白狼が勝った場合は30位となり、30位の者が勝てば白狼が持っているポイントをもらえるのだ。


「お前負けたら99位からやり直しだぞ」


 橙次は語気を強めて白狼に言う。


 挑戦者は負けた場合99位落とされるのだ。だからといって99位の者が下剋上ルールを使うものはいない。


 力差がありすぎると致命傷が身体の破損、後遺症などが残ったりと大怪我をする可能性が高いからだ。


 また、組み合わせが決まってからの辞退は一度きり有効だがもう二度と使えなくなる。つまり行使するなら戦うしかないのだ。

 白狼は橙次を真っ直ぐ見たてこう言った。


「僕は早く強くなりたいんだ」

「勝手にしろ」


 橙次はその真っ直ぐな瞳を見るとそう言い捨てた。武闘会の周りには参加権利のある99〜11位の者が集まっていた。白狼はその中で誰よりも小さかった。


 白狼は人混みをかけ分けて受付に向かった。橙次はその後ろをついていく。受付につくと白狼は紙を受付の男に渡した。


「申し込みお願いします。それから僕は下剋上ルールを使います」


 それを聞いた受付の男は申し込み用紙を受け取ろうとした手をピクッとさせた。


「⋯⋯48位の霜月殿ですね。下剋上ルールを受理いたします。武闘会が始まる直前に抽選を行います」


 白狼と受付の男のやりとりを聞いた近くの者たちはざわざわしながら白狼に視線を向けてくる。白狼はその視線を全く気にしないような素振りで歩いている。


 そして始まるまで白狼と橙次は武闘会の近くをぶらぶらしていた。そして橙次はキョロキョロと周りを伺っている。


「さすがに参加必須じゃないが、参加者は多いな。もらえるポイントはいつもの倍だから皆来るよな」


 白狼の背後に誰かがやってくる。白狼は立ち止まると振り返らないで声をかけた。


「お久しぶりですね、加藤殿」

「はは、これは恐ろしい。足音で分かったかな?」


 加藤は白狼の言葉に呆れたような声を出した。すると白狼は振り返ってにこりとした。


「匂いです。奥方様がその匂い好きなんですか?」

「ふふっ、俺の家にでも来たのかい?そうだよ」


 それを聞いた加藤は下を向いて笑う。橙次は加藤を見ると言葉をこぼした。


「審査員の加藤殿⋯⋯」

「橙次殿、貴方は霜月殿と私の手合いを見ていたね。そして貴方もなかなか強い。これからが楽しみだ」


 加藤は顔を上げて橙次を見ると穏やかな目で橙次を見ながらそう伝えた。すると橙次は褒められて照れた。その後、加藤は白狼に向かってジトッとした目で見て釘を刺す。


「何を焦っているのか分からないけど、1年10ヶ月で48位まで上がっただけでもすごいことだ。それなのに下剋上ルールを使うなんて君は馬鹿なのか?」

「加藤殿に馬鹿と言われたのは僕だけでしょうね。私は止まることは出来ないのです」


 白狼はニコリと笑顔を向けた。

 加藤は手をひらひらさせた。


「組み合わせは抽選だ。誰に当たるか分からない。俺は楽しみにしてるよ」


 加藤はそう言うと行ってしまった。


 時間になると加藤の声がした。


「時間になりましたので、武闘会を始めます。審査員の加藤です。本日はよろしくお願いいたします」


 加藤は一礼した。


「本日は下剋上ルールを行使する者がございます。霜月殿、私の横にいらしてください」


 加藤は周りを見ている。白狼は歩いてくる。闘技場に集まった者たちは白狼を見てざわついている。


 白狼が加藤の横に来ると加藤は説明を続けた。


「霜月白狼48位。下剋上ルールに基づいて抽選を始めます」


 他の審査員の男は紙束を持ってくると加藤の目の前で放り投げた。紙は宙を舞う。

 加藤の泥が空中で一枚掴んだ。加藤はそれを見ると皆の方へ向いた。


「23位、長月豪殿」


 周りの者が長月を見た。

 それを聞くと長月は空気がピリピリと震えるほどの大きな声を出した。


「受けよう!」


 闘技場はわっと湧いた。

次回は長月との下剋上の決闘ですね。イチオシの台詞は白狼のものですが、まだ13歳なんですよね⋯。

次回の作者にすみイチオシの台詞↓

「そんないつかは朽ちていく身体だ。仕方がない。」

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