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【過去編 白狼の記憶】第9話目 幻術の特訓(前編)

【過去編】は一話目に繋がる白狼の過去についてのお話です。

秋実、白狼、春樹は支度が出来ると里の出入口まで移動した。そこへ白龍とたつみが見送りに来ている。



「今度来る時は事前に知らせてくれ。」

「おう!」

「秋実、明臣あきおみには連絡したか?」

「これからだ。」

「早くカラスを飛ばしてやれ。」



そう言って白龍はため息をついた。

カラスが飛んでいくのを見送ると白龍たちと別れた。春樹は深々と白龍たちにお辞儀した。



黄龍の里へは平坦な山道が多かった。正確には白狼がいつも移動しているような険しい山道ではなかった。そして白狼は身軽に動いていく。ある山に入ってから雰囲気が変わった。白狼はキョロキョロしている。



「秋実先生、幻術をかけますか?」

「白狼はやはり気配に気がついたか。里の者が追ってきてるだけだからそのままでいい。」



白狼はコクリと頷いた。

秋実がどんどん早く進むので白狼と春樹も足を早めた。道順は分岐も多く右左と次々に曲がって複雑だったが道自体は容易かった。

里の入口が近づくと秋実はちらりと白狼を見て聞いてみた。



「白狼、覚えられそうか?」

「えっ?大丈夫です、全部覚えました。」

「⋯⋯まったく白狼は優秀だな!」

「ありがとうございます。」



三人は里の入り口で待っていた。秋実は白狼と春樹を見た。



「飛ばしすぎたな。黄龍の里の者がまだ来ない。」



しばらく待っていると息を上げて森の中から男がやって来た。



「陽炎殿、春樹殿⋯⋯それから白狼殿か?あまりの速さについて行けず申し訳ございません。黄龍の里の澤樹さわきです。」

「白狼と申します。よろしくお願いします。」



澤樹は黄龍の家へと案内した。三人を部屋に通すと戸を閉めた。

秋実は戸が閉まると白狼に近寄った。



「この部屋は仕掛けがすごいんだ。掛け軸の裏とかタンスの中に隠し扉があって中は二重の壁の間になっている。そして一度入ると出れない仕組みなんだ。」

「秋実殿は隠し扉入ってましたよね。仕掛けの中の壁壊しかけて、そしたら黄龍殿が慌てて秋実殿を仕掛けの空間から出して怒っていましたね。“前代未聞だ!”って。」



秋実は口を尖らせた。



「絶対やるだろ。こんな仕掛けがあるんだから。」

「入った相手が出れない仕掛けを壊して出ようとするなんて秋実殿以外いませんよ。」

「俺は物理攻撃が最強なんだよ。出れないもんは壊して出てくるしかないだろ。」



秋実は鼻をふんと鳴らした。

そう話しているとちょうど戸が開いた。すると大柄な男が入ってきた。



「今日は大人しく座ってるじゃないか。次に仕掛けを壊したら地獄牢に送り込んでやろうと思ったのに。」

「うわぁ、黄龍殿、秋実殿を殺す気満々じゃないですか!」



それを聞いた秋実はにやりとして春樹を見た。



「春樹、殺気を飛ばしてやれ。俺が地獄牢なんて無効化してやる。」

「わっはっはっ、秋実元気そうだな。」



黄龍は大きな口を開ける。

白狼は三人のやり取りから軽口を叩いていると判断した。そして黄龍を見ると白狼は口を開いた。



「⋯⋯黄龍殿」

「おお、其方が噂の白狼か。」



白狼は深く頭を下げた。



「影なしの里の白狼です。先日、成人の儀式を終えて一人前と成りました。これから機会がありましたらご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。」

「俺は黄龍だ。ちゃんと挨拶できるんだな。まあ、楽にしろ。それで秋実、何の用だ?」



黄龍は口角を上げて口を開いた。

すると秋実は黄龍を見ると白狼の方へ顎を向けた。



「白狼は幻術を使える。明臣あきおみが地獄牢まで教えてくれるなら俺の存命中は明臣の依頼を優遇しよう。どうだ?」



黄龍は閉口した。少しため息をつく。



「いきなりやって来たと思ったら判断しかねる用件をぶっ込んでくるな。」

「白狼は成人の儀式を終えて任務ではすでに六人をあやめている。体術は俺が教えている。今まで会った中で一番筋がいい。」



秋実の言葉を聞くと白狼は下を向いて口を緩めた。春樹は嬉しそうにしている白狼を見ていた。そして注目を集めるように黄龍は手を上げた。



「まぁ地獄牢は無理だと思うが期間はどれくらい仕込むんだ?」



それを聞いた秋実は春樹を見た。



「春樹、白狼はこっちを優先していいか?」

「何でこっちに聞くんですか?」

「だって春樹が一番任務を裁いているじゃねーか。」

「秋実殿が任務を振ってるんですよ。もう丸投げも慣れましたし、別にいいんじゃないですか?白狼は成人になったばかりだしちょうどいいと思いますよ。」



春樹はぶっきらぼうに言った。

秋実は嬉しそうに春樹を見て頷いた後、明臣を見て口を開いた。



「じゃあ取り敢えず1年!初めの2週間缶詰めでその後は通い。」



それを聞いた黄龍はムスッとした。



「おい、俺の任務はどうする?」



秋実は残念そうな顔をした。



「じゃあ1週間。」

「そう言う問題じゃない。」

「それ以上は譲歩出来ない。」

「しかも譲歩出来ないのかよ。」



黄龍は不満そうな顔をする。そこへ秋実は食い下がる。



「じゃあ任務を請け負うよ。暗殺か護衛はないか?」

「ここは黄龍の里だぞ。そんな任務はない。主な任務は情報収集だ。収集する相手を殺してどうすんだ。」



そう言って黄龍は下を向いて大きなため息をついた。そこへ白狼は口を挟んだ。



「横からお話を遮ってしまいすみません。炊事、洗濯、片付け、薪割り、清掃、基本的なことは出来ます。幻術を教えてくださる時間以外代わりに働くことは出来ませんか?」



黄龍は白狼を見た。



「武器の手入れ、裁縫、傘や簑の修理と作成なんかも出来ます。」



黄龍は秋実を見た。



「おいおい、こんな小さいのにどんだけ仕込んでんだ?」

「違う、白狼が勝手に覚えた。」



秋実は平然と返す。そこへ白狼は黄龍に追い討ちをかける。



「一度やり方を見たものは半分以上出来ます。何か仕込んで頂いても構いません。」

「判断しかねる。取り敢えず1週間詰め込んでやるから条件は後付けにする。それでどうだ?任務は澤樹たちに回す。」



黄龍はため息をついた。秋実はそれを聞いてニカッと笑った。黄龍は同情の目で春樹を見た。



「お前も大変だな。」

「共感をして頂いて大変嬉しいです。」



秋実と春樹は澤樹について里から出でいった。白狼は手を大きくふって嬉しそうに見送った。それを見た黄龍は聞いた。



「なあ、聞いていいか?白狼にとって秋実はどんな存在なんだ?」



それを聞いて白狼は黄龍を真っ直ぐ見ると微笑んだ。



「僕のすべてです。」

「⋯⋯よく分かった。」

次回は特訓の詳細に入ります。しかし白狼は尖っていますね。黄龍殿はどうするんでしょう?

次回の作者にすみイチオシの台詞↓

「任務に幻術は使いません。」

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