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【過去編 白狼の記憶】第6話目 成人の儀式(前編)

【過去編】は一話目に繋がる白狼の過去についてのお話です。

約束の日、瞬が寝てから任務を行う事になっている。まだ夕餉の最中だというのに、秋実はちらちらと白狼を見ながら落ち着きがない。秋実の箸からは食べ物たちがころころと逃げていく。瞬もさすがに秋実の様子に気がついたようだ。



「じいちゃん、どうしたの?今日なんか変だよ?」



瞬は真っ直ぐ秋実を見る。白狼は秋実を見ると、秋実の目は明らかに泳いでいた。

そこで白狼はお箸を置くと語気を強めて瞬に言った。



「秋実先生は僕たちに隠れて何かを食べてお腹を壊したらしい。」

「そうだ。そうなんだ⋯⋯あっいたた。」

「まさか食べたのって、変なキノコなんじゃないの?」



秋実は慌てて痛がるふりをした。。それを見た白狼は秋実が下手すぎる演技をするので思わず笑った。秋実は笑う白狼を見て微笑んだ。瞬は眉をひそめて聞いたがそれ以上は聞いてこなかった。

その後いつもの寝る時間になると、瞬はすやすやと寝始めた。二人は瞬の寝顔を見ると音もなく部屋を出た。支度が済むと家から出た。



「白狼⋯⋯さっきは助かった。」

「秋実先生、緊張しすぎです。」



白狼は笑っている。そして白狼はちらりと秋実を見た。その奥には竹信、源、春樹が待っていた。春樹は二人を見ると口を開いた。



「それでは臨時の成人の儀式をはじめます。今回は儀式が優先なので標的の場所はあらかじめおおよその特定をしています。」



春樹が先頭となって動き始めた。2時間ほど移動すると春樹は皆を止めた。



「一度確認して参ります。ここで待機願います。」



春樹は音もなく消えた。白狼は服の上から武器を確認した。白狼はピリッとした空気を感じ取った。そして顔を上げて竹信を見た。それを見た秋実は竹信を睨む。



「悪い、殺気も感じ取れるんだな。」



それを見た源は笑って言った。



「秋実殿は気がついていないかもしれないが、我々だって白狼に注目しているのですよ。齢一桁で成人するなんて秋実殿以来じゃないですか。」

「ふん。あまり白狼を試すんじゃない。」



しばらくすると春樹が戻ってきた。



「標的はもう少し先なので移動しましょう。」



皆は春樹の後ろからついていった。そこで春樹は皆を止めると白狼を呼び寄せた。耳元で話す。



「ここから真っ直ぐいくと標的だ。一人だからちょうどいいだろう。」



白狼は春樹を見て頷いた。そして秋実の方を振り返ると口角を少し上げた。



(不思議と心が落ち着いている。)



白狼は音を立てないように標的に近づいた。今夜は月夜で辺りが少し明るい。先の方で何か動く。慎重に近づいて行くと、それは人影だった。



(あれが標的か。)



白狼は木の上から標的に近づいていく。一番標的に近い木の上に移動した。相手をじっと見ると警戒していないようだった。



(首の頸動脈を狙う。一発で仕留めるぞ。)



白狼の目が光る。木から降りると確実に相手に気が付かれる。降りた直後にそのまま出来るだけ早く首の頸動脈を短剣で掻っ切らなければならない。そして白狼は手の感覚を確かめる。



(今日は震えていない。落ち着いてる。よし行くぞ。)



白狼はそっと木から降りる。着地の感覚がするとすぐに短剣を構えた。そして相手が少し遅れて反応する。すると振り返られる前に短剣を相手の首に付ける。肉に少し食い込ませてから勢いよく後ろに引く。相手の首から鮮血が宙に噴き出した。白狼はすぐに距離を取ってから相手を確認する。



(追加の攻撃は必要か距離を取って確認。)



相手は声にならない声を上げている。首元を反対の手で押さえるが指先の隙間から血が溢れ出てくる。しばらくすると相手が倒れた。白狼はまだ見ている。



(焦り、油断は禁物だ。少し時間が経ってからコト切れたかを確認する。)



5分ほど経っただろうか白狼は近づいた。相手の首に近づく。そこで白狼が切った反対側の首で脈を確認する。その後胸に手を当てた。鼓動は聞こえなかった。それを確認すると、ようやく白狼は息を大きく吸って深くゆっくりと吐いた。白狼は振り返って皆の元へ戻ることにした。



ピクッ、白狼は何かを感じる。



(まずい、誰かいるのか?)



白狼は木の後ろに隠れる。その直後に手裏剣が白狼の隠れた木に刺さる。



(標的の仲間か?)



白狼は予備の短剣を握ると急いで木の上に登った。そして手裏剣の来た方向に移動する。まだ誰も見えない。すると突然背中に衝撃が来る。誰かが白狼の背中に体当たりしてきた。相手は白狼に覆いかぶさるように体当りしてきたので、木から落ちる間も相手と間合いが取れないまま地面に転がり落ちた。そして白狼の背は地面についてしまった。



(まずい、相手に乗られた。)



白狼は無我夢中だった。白狼は手を前に出す。しかし相手は手を伸ばして白狼の首を掴んだ。白狼は伸ばした手を空中でギュッと握る。すると相手は急に動きを止めた。白狼の首を絞めていた手が緩むと、苦痛に耐えきれないような声を出す。白狼はその隙に相手の脇腹に横から短剣を突き立てた。



(なんだ⋯?とにかく隙ができて良かった。まだ相手を動かせないから、まずは足を引き抜こう。)



相手の下から足を引き抜くのは容易だった。相手を横に倒してみる。地面にのめり込むように相手は脱力している。白狼は相手の様子に眉をひそめる。



(まだ脇腹しか刺してないのに変だな。だけどこのまま確実に殺めたほうがいい。)



白狼は慌てて相手から離れると相手の脇腹から短剣を抜き取り相手の背中を触る。



(背骨と肋骨はここ。)



骨の隙間の位置を確認すると短剣に体重を乗せ勢いよく刺した。



(肉の先に別の感覚があったから心臓を付けたと思う。)



白狼は短剣を引き抜くと血を拭った。そしてふっと安心して脱力をした。



ピクッ、白狼は森の奥を見る。



(また別の気配。しかも今度のは今までで一番強い殺気だ。まずい、気配が近づいてくるな。これは倒せない、隙をついて逃げるしかないぞ。⋯さっきの感覚を思い出すんだ。相手を殺して秋実先生のところへ帰るんだ!)



白狼は強い殺気に身体を少し震わせながら、殺気のする方へ手を伸ばした。今度は周りの景色が歪む。しかしその気配は近づいてくる。白狼の心臓の音は次第に大きくなっていく。すると歪んだ景色が消えた。白狼は目を見開いて動けなくなった。白狼は身体が震えて上手く動けなかったが、まだ相手が見えないので形だけでもと思い覚悟して構えた。

次回は任務をこなせた白狼にかけられる言葉は物騒ですね。今回は本編に出てきたあの人が出てきます!

次回の作者にすみイチオシの台詞↓

「白狼、ちゃんと仕留められて偉いぞ。」


【作者のお礼】

ブクマしてくれた方、ありがとうございます!!心の中で両手を上げてやったー!と喜んでいます。読んでくれる人がいた⋯書いている甲斐があった⋯。過去編はまたまだ続きますのでお付き合いいただけると嬉しいです!

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