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第33-5話(番外編) 鈴音の傷(2)

3日後に桐生きりゅう家に行くことが決まったたが瞬はどこかに行ってしまった。諒は瑛真を連れて影屋敷の左殿に来ていた。

瑛真は諒の方をへ向いて口を開いた。



「ここって⋯⋯」

「そう、治療・治癒室。鈴音さんと楓が働いているよ。」



諒がそう説明する部屋の外から顔を覗かせる。すると鈴音を見つけた。諒は声をかける。



「鈴音さん!」



鈴音は声のした方へ顔を向ける。そして諒の姿を捉えると鈴音は口を開いた。



「あら、諒くんじゃない。それから霜月のところの⋯⋯」

「瑛真っす。」

「そうだった、瑛真くんね。」



諒が部屋の奥を覗いているのに鈴音は気がついた。そして鈴音は思わずこう言った。



「残念、諒くんの探してる楓は用事があっていないの。それでもよかったらお茶でも飲んでいくかしら?」



諒と瑛真はお茶をごちそうになることにした。諒は鈴音と薬草の情報交換をしている。種類、栽培方法、効能、使い方などお互いに知っていることを確認している。諒は鈴音に教えた情報料の代わりにいくつかの薬草をもらっていた。そして諒は立ち上がり空になった湯飲みを片付けようとする。



「鈴音さん、ありがとう。薬草も欲しかったやつがあって良かった。湯呑片付けるね。」

「大丈夫よ。私がやるわ。」



鈴音も立ち上がり器に手をのばすと、顔を歪め手がピクッと震えた。



「つっ!」

「鈴音さん、大丈夫?どこか痛いの?」



諒は駆け寄る鈴音に聞いた。すると鈴音は身体の感覚を確かめるように身体を少し動かすと諒の方を向き力なく笑った。



「諒くん心配してくれてありがとう。」

「あの、鈴音さん座って下さい。俺が片付けるんで。」



瑛真は着席を促す。鈴音は瑛真の方を向いた。



「瑛真くんもありがとう。大丈夫だけど、座らないと二人とも気が済まないわよね。」



そう言うと鈴音はゆっくり座ろうとする。そこへ諒は鈴音に肩を貸した。諒は鈴音が座るのを確認すると、鈴音の目を覗き込んで聞いた。



「鈴音さんが落ち着くまで瑛真とここにいて良い?」

「ありがとう。気の利く弟が二人出来たみたい。少し居てくれると助かるわ。」



鈴音は明るく振る舞おうとしているが、その笑顔は弱々しい。瑛真は立ち上がって湯飲みを片付けに行った。諒は鈴音と二人になったが諒は口を開かず静かにしていた。しばらくすると新しいお茶を持って戻ってきた。



「よかったらお茶入れたんでおかわりしますか?」

「ありがとう、二人とも傷のこと聞かないんだ?」



諒も瑛真も頷いた。



「あはは、君たち優しいね。これはね⋯⋯」



そう言って説明を始めようとしたが鈴音は急に胸に右手を押し当てた。諒は鈴音が一瞬辛そうな顔を見せたのに気がついた。諒は前に霜月が話していたことを思い出していた。霜月の話では鄧骨とうこつは鈴音の背中の上から下まで刀で切ったのだ。塞がった傷跡が痛むだけであんなに辛そうにしているのだ。鄧骨とうこつのことを思い出すだけでも嫌だろう、そう思うと鈴音の左手を両手で握ると真剣な顔で言った。



「本当に無理して言わなくていいよ。鈴音さんの辛い顔は僕も瑛真も見たくない。」

「⋯じゃあ話せる部分だけ。あなたの仲間の霜月の部分だけよ。」



鈴音は一呼吸ついて落ち着いたような目になって鈴音は説明を始めた。



「私と霜月は影屋敷に似たような時期に入ってきたの。8年くらい前かしら。まだその頃は二人とも右も左も分からない新米だったの。初めて霜月に会った時に、ふふ、彼は泥だらけでね、私が持っていた綺麗な布を渡したの。それで後日洗って返すっていうから代わりにお互いの情報を共有するってことになったの。それがきっかけで話すようになったのよ。」



鈴音は思い出すように遠くを見る。



「あっ傷のことなんだけど、実はね、後で聞いたんだけど、霜月が近くに居合わせたみたいで近くに適任者がいなかったから、縫ってくれたんだって!やったことなかったみたいだけどうまく縫えてたみたいよ?今は抜糸もして傷自体は塞がったんだけど、さっきみたいに不意に痛みが来ると⋯怖くなって身体が震えちゃうの。半年以上経つのにね。あっ霜月には内緒よ?」



瑛真は口を固く閉じて鈴音の話を聞いていた。そして諒は眉間に少し皺を寄せて真剣にその話を聞いていた。そして霜月が鈴音の傷を縫っていたことは意外に思った。お互いが想い合っているのになぜそれをお互いが知らないのだろうか。余計なお世話はしたくないのだが、鈴音にこれだけは伝えたい。



「あのね、お節介だと思うんだけど、霜月さんは鈴音さんのことを大事に思ってるよ。それだけは忘れないでほしい。」

「ありがとう。⋯⋯私は大丈夫よ。」



諒は鈴音が傷のことについて自分の胸に仕舞おうとしているのが分かった。霜月の心を本当に知らないんだと思うと諒はヤキモキした。諒と瑛真は鈴音の手がまだ震えていることに気がついた。鈴音の手を諒と瑛真はそれぞれ握る。



「ありがとう。大丈夫、大丈夫。」



鈴音はびっくりしたように顔を上げて二人を見ると鈴音は自分に向かって大丈夫と言い聞かせているようだった。


トントントン


そこに部屋の入口で音がする。霜月が開いている戸を叩いたようだ。諒が見ると霜月がにっこりしている。諒はヤキモチで霜月が怒っているのは分かっていた。鈴音は霜月を見て思わず頰を赤らめる。諒と瑛真はスッと鈴音手から自分の手を外した。

そして諒は霜月の反応に呆れていた。



(また間の悪い時にきたもんだ。霜月さんは大切な人に対して本心の言葉が少なすぎるんだよ。)



「霜月さんの思っているようなことは起きていないから。」



心の中で霜月に文句を言うと、諒は大きな口を開けてぶっきらぼうに言った。すると霜月は大股で入ってくると諒の目の前にやってきて顔を近づけてと笑顔を貼り付けて聞いた。



「僕の思っていることが分かるんだ?諒はすごいね。どんなことか教えてくれるかな?」

「言ったら霜月さん後悔すると思うけど、一言一句説明しようか?」



諒は好戦的な目でこう返す。すると鈴音は心配そうな顔をするので瑛真は鈴音にこっそりこう伝える。



「これいつものことなんで安心してください。」



それを聞いた鈴音はくすくす笑った。すると霜月は瑛真の方を見て聞いた。



「鈴音となんだか楽しそうな話をしているのかな?」



諒は霜月に向かってあっかんべーをする。そして瑛真も真似してあっかんべーをする。



「気になるなら鈴音さんに直接聞いてみたらいいじゃん。鈴音さんじゃあね!」



諒は瑛真の腕を引っ張って走って部屋を出た。そして諒と瑛真が行ってしまうと霜月と鈴音は二人っきりなった。鈴音は思わず自分の髪の毛を触る。

霜月は鈴音に近づいてこう尋ねる。



「座ってもいいか?」

「うん。」




沈黙が流れる。



霜月は視線を下に向けると鈴音が手を強く握りしめていることに気がついた。霜月はその鈴音の拳の上から手を握る。鈴音の手は少し震えていた。その時ようやく霜月は諒と瑛真がなぜ手を握っていたのか分かった。そして霜月は鈴音を見た。鈴音は霜月の視線に気がつくと視線を合わせる。すると鈴音は目を伏せがちに小さな声を出した。



「⋯⋯大丈夫。古傷が疼いただけよ。⋯⋯本当にそれだけ。」



それを聞いた霜月は一呼吸置くと霜月は鈴音にまっすぐ顔を向けてこう言った。



鄧骨とうこつは俺が地の果てまで逃げようとも必ず息の根を止めるから安心して。」

「⋯⋯うん、ありがとう。」



鈴音の震えは止まった。

お読み頂きありがとうございます。

次回は黒獅子の里の反乱で瞬が戦います。どんな闘いを繰り広げるんでしょうか?

次回の作者にすみイチオシの台詞↓

「可哀想な瞬。大切な人に裏切られちゃったの?」


ここまで読んでいただきありがとうございます!

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