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第21話 瑛真の兄弟子との決闘

時間になるとまた先ほどの広場に皆集まっていた。赤龍の近くには霜月、瞬、諒、瑛真と力也がいる。だてまきは瞬の足の上に乗っている。

赤龍は揃ったのを確認すると里の者へ顔を向けて赤龍が口を開いた。



「これから瑛真の決闘を行う。瑛真の対戦者は?」

一樹いつき!来てくれ。瑛真の指名だ!」



力也が口を開くと里の者はざわついた。

霜月、瞬と諒は力也を見ている。



「一樹は瑛真の親父・蘇芳すおうの一番弟子だ。瑛真にとっては兄弟子になる。はっきりいって力量は瑛真より格上だ。」



力也が付け加えた。一樹が素早く出てくる。



「瑛真、本当に俺でいいのか?勝てるやつにした方が良いんじゃないか?」



瞬は一樹を見た。嫌味と言うよりは助け舟を出しているように見える。

瑛真は真っすぐした目で一樹を見るときっぱり言った。



「一樹さんを指名しないで里は離れられない。」



そのやり取りを見ていた赤龍は笑い始めた。



「わっはっはっ!蘇芳の一番弟子であり瑛真の兄弟子の一樹を指名するその心意気、気に入った。お互い存分にやれ。」



赤龍は口角を上げて言った。

一樹と瑛真は向かい合った。

一樹は口を開いた。



「瑛真、差し支えなければ脱里の理由を話してくれないか?」



瑛真は真っすぐ一樹を見ると首から赤龍の首飾りを取り出した。



「親父を殺したやつに親父の赤龍の首飾りを取り返しに行くためだ。」



そう言いながら一樹に首飾りを持った拳に向ける。それを見た一樹は真面目な顔で頷いた。



「そういうことか。お前は相手を知ってるんだな?そう言うことなら全力でやらないとな。

瑛真!俺を超えていけ!」



一樹と瑛真は赤龍を見た。

二人を見た赤龍は怒鳴った。



「両者、はじめぃ!!」



一樹は飛び出す。

勢いよく瑛真に近づき飛びながらミドルキックを出す。

瑛真はそれをガードするとジャブを出す。一樹は軽く避ける。一樹はぴょんぴょんと軽いステップを踏みながらジャブ、ジャブ、フック



バシン、フックが瑛真の左脇腹を直撃する。瑛真は腹筋に力を入れて耐える。

すぐさま一樹を追って瑛真はジャブ、ワンツーと繰り出す。少しかすめた。

一樹は両手で瑛真の肩を抱いて引き寄せると足を瑛真のみぞおちにつけ前にグッと突き出した。

瑛真は後ろに吹っ飛ばされる。一樹は瑛真をそのまま追う。瑛真はすぐに体勢を立て直して近づいた一樹に回し蹴りを繰り出す。



ドコッ、一樹は少し後ろに下がった。瑛真が足を地面に着き体勢を整えた瞬間、一樹が間合いを縮めながらしゃがむ。

瑛真は直感した。



アッパーが来る!



すぐに判断した瑛真はできる限り上体をそらす。少し顎をかすめ瑛真はふらつきながら顔を両腕でガードして体勢を立て直す。



「瑛真、動きがすごく良くなってるな!」



一樹は嬉しそうに言った。そうは言っても一樹との力の差は明らかだ。

瑛真と一樹の動きを見て霜月は口を開く。



「一樹は瑛真よりもさらに早いフットワークだな。その割に攻撃にしっかり体重が乗ってる。瑛真も上達したが⋯⋯あれは間に合ったのか?」

「その特訓はしたが、まだ自由には出せない。決闘中にちゃんと出るかは分からない。」



力也はそう答えた。



会場が沸いた。一樹のハイキックが瑛真にキマったのだ。瑛真は片膝ついた。





瑛真は特訓を思い出していた。



「力也さん、俺はこの前暗器の力が出たんだ。一度だけだけど。」

「えっ?暗器だと?」

「炎と風みたいなんだけど、どうやって出すのか分からない。力也さんはどう思う?」



瑛真からそう聞くと、力也は暗器の発動時の状況を詳しく聞いた。霜月に聞かれたことも覚えてる限り含めて伝えた。力也は顎を手で触り考えている。



「うーん、同じ状況を特訓で作るしかねえかぁ。瑛真、同じくらい悔しい思いは出来るか?」

「⋯⋯同じくらいの強さのやつと戦って挑発されれば⋯⋯出来るかも。」



そこで一樹以外の兄弟子に相談しながら似たような状況を作り出したが、出なかった。2週間ほど思いつく方法で瑛真を追い詰めてみたが出たのは一度だけだった。その日の終わりがけに疲れ果てて拳を纏うくらいのものが出た。




別の日にはら、力也は申し訳なさそうな顔でこう注文した。



「瑛真、お前も胸糞悪いだろうが親父さんの仇を思い出して戦ってくれねえか?」と言われた。少し炎と風が出た。

結局、1ヶ月の間には3回しか出なかった。




このまま終わったら俺は役立たずだ。

瑛真はじっと一樹を見ている。決闘はまだ始まったばかりだ。

一樹は瑛真が立ち上がるのを待った。

それを見た力也は口を開いた。



「本気でやると言っても、一樹は瑛真を弟のように思ってる。

勝てなくとも見せ場くらいは作ってやりてーと思ってるんだろうなぁ。」



瑛真はその後もサンドバッグのように叩かれる。それでも倒れない。瑛真は前に出る。一樹のジャブを避けてフックを出す。それも避けられた。

瑛真はすでに肩で息をしている。一樹から距離をとって考える。

俺に出来ることはなんだ?こんなところで止まっている場合じゃない。

親父を殺したあいつはもっともっと強い。どうやったら辿り着く⋯⋯。



瑛真は親父のことを思い出していた。



「瑛真、お前がなぜ瑛真って呼ばれるか知ってるか?」

「知ってるよ!とーちゃんが名付けたんだろ?」



得意げに小さい俺は答えた。



「そうだ!お前は父さんの八人目の弟子だ。それがどういうことか分かるか?」

「⋯⋯分かんない。」

「お前には七人のそれぞれ違う強さを持った兄弟子がいるんだ。その兄弟子の強いところを身につければ誰よりも強くなる!

そして思いやりを持った真の男になれ!

お前の名はそういう意味が詰まってるんだ。」



俺は顔を上げて親父を見た。そして親父は瑛真と目が合うとニカッと口を横に広げて笑った。



⋯⋯そうだ、あいつは親父の笑顔を奪った。



俺はあいつを倒さないといけない!




瑛真の身体の奥からあふれるものを感じた。

そして一樹の方を向いた。

まずは兄弟子を超えないとだな。



一樹は瑛真と目が合う。

瑛真はやる気に満ちた良い目に変わっていた。

心に何か決めたなと思い、一樹は構える。



瑛真は一樹に向かっていった。さっきまでのスピードよりもはるかに早い動きだった。一樹にジャブ、フックを繰り出す。一樹は避けられずガードする。少し下がりピョンと飛び上がると二弾蹴りを入れる。これも当たる。一樹はミドルキックを入れる。瑛真に避けられる。瑛真は勢いを付けるとボディーブローを一樹のみぞおちにねじ込む。



んぐっ!!瑛真のボディーブローが一樹のみぞおちに直撃する。



一樹は思わず身体をくの字に折る。

それを見た瞬は口を開く。



「瑛真、いきなり動きが良くなった。なんか動く時に風みたいなのが出てる?」



霜月が口を開く。



「推測だが風をブースターにして動きを早めてるんじゃないかな。そんな使い方もあるのか。だが⋯⋯」



力也が言葉を継ぐ。



「瑛真の体力はそろそろ限界だ。」



瑛真の足元はふらふらしていた。ぶるぶる震える足をなんとか抑えて右足を下げ踏み込む。

瑛真は右肘を思い切り後ろに引く。それと同時に左肩が正面に出る。瞬はストレートが来ると思った。

と、その時瑛真の右拳には炎と風が纏い始めた。勢いは大きくなる。瑛真は後ろに引いた右手を一樹の顔めがけて前へ出す。



そうすると炎と風が獅子に変化してその獅子は大きく口を開ける。



一樹の顔を飲み込みそうになる。そのまま獅子は一樹の顔を通過していった。瑛真の拳は一樹の顔の目の前で止まった。一瞬時が止まったかのような静けさにまみれた。

一樹が大きく口を開けた。



「瑛真!!俺の負けだ!!!」



一樹は大きく宣言する。

負けを宣言している割に一樹は嬉しそうだった。

瑛真は右手を下ろすと、一樹に向かって倒れ込んだ。



赤龍は身を乗り出して見ていた。



「先代赤龍の炎風獅子がこんなところで見れるとは⋯⋯」



赤龍は思わず言葉をこぼす。



赤龍は我に返り怒鳴った。



「勝者、瑛真!!!」



どこからともなく拍手が沸いた。

そうするとポツポツと拍手が増えていく。最後には皆で拍手をしていた。

赤龍は霜月の方を見ると悔しそうにこぼした。



「霜月、瑛真の力を知っていたな?」

「ここまでのものは知りませんでした。」



霜月はにっこりして答えた。



「ふん、追加条件も出せん。これじゃあ引き止められんな!」



赤龍は霜月にそう言うと立ち上がりこう怒鳴る。



「瑛真をゆっくり寝かせてやれ!!起きたら俺のところへ連れてこい!」

「そんな怒鳴ったら起きちゃいますよ。」



力也は困ったように言うと、赤龍はふんと鼻を鳴らした。赤龍は背を向けて歩き出した。その口元が大きく緩んでいたことを誰も知らない。

お読み頂きありがとうございます!

次回は個人的に瑛真と兄弟子との胸熱なシーンがおすすめです!

次回の作者にすみイチオシの台詞↓

蘇芳すおう先生の赤龍の首飾りを必ず取ってきてくれ!」

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