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第58話-3 長月と瑛真(後編)

「豪殿、経緯を話さないと分かんないっすよ」


 皆は円になるように座ると瑛真と長月の訓練について話を聞いた。瑛真と長月の約束も含めてだ。


「俺が豪殿と目指すのは広域攻撃だ。炎、風、雷の組み合わせで多くの敵を倒すのが目的だ」


 瑛真は瞬の方を見た。


洒落頭しゃれこうべは死者の大軍と言うのを使うんだろう? こっちは人数も少ないから組み合わせで効果を上げたい」


 諒は瑛真の方を見た。


「それなら僕の刀もどうかな? 長月殿の雷は直接戦うなら相性が悪いけど、雷は水みたいに刀にも反応する。細かい刃を空気中に撒けば雷で広い範囲に攻撃出来るでしょ?」


 皆は諒を見て目をキラキラさせた。瞬が口を開いた。


「それなら水を使うやつはいないのか? 組み合わせるなら水が使えるやつもいたほうがいいだろう?」


 それを聞いた瑛真も口を開いた。


「そういう風に考えるなら俺も炎だから葉っぱ、木みたいに燃えやすいものを使うやつと組んだほうが広域の攻撃が出来る」

「あ!」


 諒は声を上げた。そして諒は瑛真の方を向いた。


「それなら居るよ! 清隆! 彼は木を使う」


 瞬は皆に声をかけた。


「話をまとめて一心殿に共有しようぜ。俺たちからも話すことがある」



 攻撃関連についての話が終わると、瑛真は怖い目で瞬と諒を見た。


「瞬と諒、俺のいないところで霜月さんのこと名前呼びに変えたのかよ」


 瞬と諒も口を尖らせる。


「瑛真こそ長月殿のことを豪殿って呼んでどういう事だ?」

「そうだよ! 瑛真は長月殿と仲良くなりすぎなんじゃないの?」


 霜月は三人の間に入る。そして瑛真にニッコリとする。


「ねぇ、長月殿のことはいいから、瑛真、僕の事白狼って呼んで」


 瑛真は目を大きくした。そして照れているのか視線を外す。


「う⋯⋯白狼⋯⋯さん」 


 瑛真は腕で顔を隠した。瑛真の様子を見て瞬と諒は隠れて笑い出した。


「”白狼”、お前も負けず嫌いだな」


 長月が割って入る。長月はさりげなく霜月を名前呼びしてニヤリとした。それを聞いた霜月もニコリと笑みと名前呼びを長月に返した。


「”豪”の方こそ負けず嫌いだね」


 諒は懐から紙の束を出すと瑛真の目の前に差し出した。


「これ僕から。昼開先生から炎風についての資料を写してきたの。違う暗器の力の資料ももらってくればよかった。

 ほら、瑛真はこういう情報とか使うの得意でしょ?役に立つ変わらんないけど読んでみて」

「諒、ありがとな! 役に立つに決まってるだろう!!」 


 瑛真はそっと受け取ると諒の頭をくしゃくしゃに撫でた。

 霜月もそっと長月に紙束を渡した。


「まさか、瑛真とあんなに仲良くなってるなんて思わなかった。戦いの際には瑛真を頼む。これは雷についての情報だよ」

「瑛真のことは俺に任せろ! 情報も感謝する」



 程なくして一心が側近とともにやってきた。霜月は皆が部屋に入るのを確認すると幻術をかけた。


 一心は瑛真の方を向いた。


「瑛真、左腕に反応があると聞いた。もっと動くようになるといいな」

「ありがとうございます」


 それを聞いた瑛真は頭を下げた。

 一心は頷き、瞬と諒を見た。


「昼開殿のところから何か収穫はあったか?」

「はい、お話しは二つあります。

 一つ目は洒落頭しゃれこうべについて。

 二つ目は上岡永生の仕える御方について。昼開先生がこう話して下さいました⋯⋯」





 影屋敷の古今鏡の間


 昼開は古い資料を瞬と諒に見せながら説明し始めた。


「これはね、古い言い伝え。この世界には自然から力を借りた人たちがもっとたくさんいたんだ。大きな力を持った人もいた。その中に朝を司る人、すべてを明るく照らし人の目に触れる。夜を司る人、暗い夜を統べる人、その見たものをすべて記憶する。これは昼開家と夜斬家に似ていると思わないかい?」


 瞬と諒は頷いた。


「そしてここの部分。

 生を司る人、すべての芽吹く命を迎える。それから死を司る人、すべての終わりを見届ける。⋯⋯洒落頭しゃれこうべに似ていると思わないかい?」


 昼開はペラペラと資料をめくる。


「暗器の力として明記されているものはない。しかし瞬の記憶にあった洒落頭の力の内容と歴史に関する資料を見ると度々死者の反乱⋯⋯と言うか山から攻めてくる何かと言った形である時は黒い闇、妖怪、鬼、名前は違えど死んだはずの人、人ならざる形をしている、むくろ、様々な書かれ方をしているのはもしかして同じものなんじゃないかなって思う」


 昼開は始めに話した資料に手を添えた。


「言い伝えでは夜を覆い尽くす闇を光が強く照らし光と闇が共存する世界となった、と書かれている」


 諒は口を開いた。


「⋯⋯あの、生を司る人はいないんですか?」





「⋯⋯影屋敷、その他の資料からはそう言った力を持つものは書かれていない、そう昼開先生はおっしゃいました」



 一気に沈黙が広がる。



 瞬は一心を見ながら説明を続けた。


「洒落頭の特徴は前にも話しましたが、幻ではないものも使う幻術使いです。おそらく死者も使う。俺もじいちゃんの幻に一方的に攻撃されたが痛みだけではなく全身に痣が出来た」


 霜月は瞬を見て付け加えた。


「我々は情報屋のシシという者を使っていた。しかし瞬の見た黄龍殿の記憶では、シシは滅獅子の大戦の時に黄龍殿に看取られていたんだ。後日行ってみると部屋の奥に座っていたのは⋯⋯骸骨だった」


 水をうったような静けさだった。


「またさらに時間をあけて見に行くと建物ごと無くなっていた。そこには始めから何もなかったのように丘の上には草が生えていた。

 奴は自分の手を骸骨のような大きな手に変化させると俺の腹を貫いた。幻術だけの力とは思えない」


 諒も口を開く。


「瞬を死者の大軍へ加えたがっていました。そこから推測するに奴は死者を何らか形で自分の軍に加えている。記録が本当なら洒落頭は50年ほど影屋敷に在籍しているから軍の規模は⋯⋯計り知れない」


 瑛真は諒を一瞥すると一心を見た。


「現在、長月殿と広域攻撃の準備を進めております」


 一心は頷いた。

 それを見た瞬はまた口を開いた。


「二つ目は上岡永生の仕える御方について、昼開先生に俺の記憶を見てもらいました。阿道城の大火災の時、俺は阿道城にいました。その時は色々あって忘れてたんですが、阿道に対面した時、本丸の3階で初老の男に会いました。阿道派の者か客人であるかは分かりません。しかし側近や従者は連れていませんでした」


 瞬がそう言うと、部屋の中がざわつく。


「ただの可能性ですがその男を調べる必要があります。左手の平にほくろを持っています。そしてどこかへ向かっていた。阿道城の本丸の3階地図はどこかで手に入れられるでしょうか?」


 一心は思わず腰を浮かせていた。


「至急、取り寄せよう。鴨、阿道城だ!」

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