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宮廷の鶴

 キィキィと甲高い声を上げる廊下を、とある女官が重い着物を着て進んでいた。襖の間から覗く女官たちは、憎らしそうに女官を見ていた。冬のためか肌寒そうだが、性悪な瞳は鋭さを失っていない。

 かくいう女官も、現代であろうと目を引く容姿をしていたのは事実。

 彼女は、真っ白な髪をしていた。ちっとも暖かくしない日に当たり、髪は淡い七色を纏っていた。

 彼女の祖母は、現代でいうアルビノだった。幸い、髪のみに遺伝したため、他は至って健康体なのだが、なにしろ面積が広い。女官にしては整った顔立ちもあり、浮世離れした風貌だった。

 しかし、この時代にアルビノなど知られていない。彼女の母親を産んですぐ亡くなったため、母親は呪いの子、彼女は呪われた子として扱われた。祖母のように、早死にするだろうと。

 そんなレッテルを気にせず、彼女はとある襖を開けた。他の女官がいた部屋とは比べ物にならないほど、美しく、かつ洗練された部屋は、中にいた美女の雰囲気を体現していた。


「まぁ、夕鶴(ゆうづる)。おかえりなさい」


「……相変わらず、気付くのがお早いですね」


 女官───夕鶴は、少し呆れたように目を細めた。目を閉じ、にこにこと微笑んでいる美女は、呆れ気味な夕鶴を気にせず、話しかけ続けた。


「ふふっ、夕鶴の襖を開ける音を覚えているのよ」


「さすが、鈴陽(りんよう)さま」


「ふふふ……」


 嬉しそうに、美女───鈴陽は、口元を抑えて、上品に笑った。

 ……が。


「目上の人に、“さすが”は失礼よ」


「あだっ」


 口元を抑えていた右手をピンッと伸ばし、そのまま見事に夕鶴の頭上にチョップが入った。

 夕鶴は痛そうに頭をさすり、鈴陽の方を向いたが、相変わらず天女のような笑みを浮かべていた。


(怖い方だ……)


夕鶴はそう思いながら、膝をつき、頭を垂れた。


「申し訳ございません、鈴陽さま」

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