番外編② 飛べなくなった小鳥
その日、私は教会から魔術師団の訓練所へ向かう途中だった。
向かう途中、騎士団長のライナス様を見かけて‥‥‥。声を掛けようとして、彼が小鳥を大事そうに抱えているのに、気がついてしまった。
「ライナス様‥‥‥」
「エレナ様でしたか。これはどうも」
彼は軽く会釈をすると、私に背を向けていた。様子から察するに、木の上にある鳥の巣から小鳥が落ちてしまったのだろう。
「どうかなさいましたか?」
「いえ、お気になさらず‥‥‥」
鳥の巣へ小鳥を返すのかと思ったら、どうやら違うようだ。
「鳥は人間の匂いを嫌います。今から私が鳥の巣へ戻しても、親鳥はこの子を見捨てるでしょう」
「そんな‥‥‥」
「それなら、私が最後までコイツの世話をしてやろうかと思います」
「小鳥は、ケガをしているのですか?」
「え‥‥‥。ええ、まあ」
ライナス様は、どうやら私とは関わりたくない様だ。ここは彼の手を煩わせずに、さっさとやってしまおう。
「あの‥‥‥。小鳥のケガを直しますので、巣へ戻していただけますか? 私には手が届きそうにもありませんので‥‥‥」
「でも、それでは小鳥が‥‥‥」
「浄化の光魔術を使います。心配いりません‥‥‥。元に戻りますよ」
「そうですか‥‥‥。おい、良かったな。また、飛べるってよ」
ライナス様は、小鳥に話し掛けているみたいだった。私は手早く小鳥のケガを治すと、ライナス様に小鳥を巣に戻してもらった。
「ランブレ、ライミスト」
私が光魔術を使用すると、鳥の巣が光った‥‥‥。浄化の魔術を使い、元通りになったのを確認すると、間を置かずに親鳥が帰ってきていた。
「良かった‥‥‥。親鳥がエサをあげているみたいです」
「良かったです」
「あの、エレナ様‥‥‥。勘違いだったら、すみません。私に惚れ薬は、効かないんですよ」
「‥‥‥‥‥‥え?」