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木から飛び立つ

「エリオット様──」


 遠くで侍従の呼ぶ声が聞こえた。どうやら、僕のことを探しているようだ。しかし、彼女の父親を最後まで一緒に探してあげたかった。


「エリオット、どうしたの? また顔が青いみたいだけれど……」


「仕事を途中で放り出して来てしまったので、私の事を探している者がいるみたいなんです」


「いけない上司ね? 分かったわ。こっちに来なさい!!」


「えっ?! ちょっと、待ってくれ。アイリス!!」


「えらい。ちゃんと呼べましたね」


 アイリスは一度立ち止まって、僕の頭を撫でると、再び走り出した。


「はい。って、違うから!!」


 僕の方は振り返らずに、彼女は一目散に庭にある1本の木の根元へ駆けて行った。


「エリオット、さっきここへ来た時、この木なら登れると思ったの。ほら、足場があるでしょう?」


「えっと。いや、そうかもしれませんが……」


 僕がどう止めようか悩んでいると、彼女は既に木登りを始めていた。


「アイリス!! 木に登って隠れても、問題は解決しません」


「そんなの、登ってみないと分からないでしょう?」


 彼女は木の幹にしがみつき、既に半分くらい登っていた。パンツが丸見えである。


「アイリス!! ちょと──戻って!!」


 僕は『何をしているんだろう』と思いながら、上を見ないようにして木を登っていった。何とか上を見ずに1番上まで登ると、彼女の隣に座った。


「やっぱり、見晴らしがいいわね!!」


「うん」


 彼女との距離が近すぎてドギマギしていた──何だろう、この目が離せない感じは。


 木の上で身体を揺らしながら、はしゃいでいたので、僕は木の枝に掴まりながら彼女が落ちないように身体を支えていた。


「あっ、小鳥……」


 どうやら、この木には鳥の巣箱が置いてあるようだ。足場が置いてあったのも、そのせいなのかもしれないと思った。


「アイリス、かわいいね」


「ほんと、綺麗な小鳥」


「ねぇ、アイリス。君さえ、良ければ僕は……」


 その時、アイリスを呼ぶ声が聞こえた。


「アイリス──どこだ? どこにいるんだ? 怒らないから、出ておいで」


「あっ、お父様!!」


 反射的に、アイリスは木の上で立ち上がった。ふらつくアイリスに手を伸ばしたが、間に合わなかった。


「アイリス!!」


 僕は空中で彼女の手を掴むと、アイリスの頭を抱え込んだ。いざという時のために、僕は『護身』の魔術具をつけている──少しくらい、身体を打ちつけても大丈夫だろう。


 僕が庭にアイリスと共に墜落すると、悲鳴が上がった。けれど──その瞬間、意識を失った僕は、どうすることも出来なかったのである。




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