リン王女
アーリヤ国との国際会議は、カルム国で行われることが正式に決定し、すぐに行われる運びとなった。大急ぎで段取りを決め、準備の体制が整うと次の日には伝書鳩を飛ばした。
すると『本日、伺います』という内容を携えた伝書鳩が、アーリヤ国から返ってきた‥‥‥。伝書鳩が届いた1時間後には、イル王とイル王の側近、それからアーリヤ国の宰相一行が、城門前へ到着した。
いくら何でも、早すぎじゃないか──知らせを受けた私は、そう思いながらも部屋を出た。途中でエリオット様と合流し、一緒に会議室へ向かったのだった。
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会議室に到着すると、イル王はすでに着席しており、その隣には小学生くらいの小さな女の子が座っていた。
(何で、こんなに早く来たのかしら? 私達を慌てさせるつもり?)
そう思いながらも、アーリヤ国代表の方達へ向けて、自己紹介の挨拶をした。
「お待たせ致しまして、申し訳ありません」
「いえ。私どもが、早く来すぎてしまった様です。ご無礼をお許しください」
イル王の隣にいる、白髪オールバックの男性がそう言った。常にイル王の側に控えている様子から、イル王の側近なのだろうと思われた‥‥‥。カルム国王がまだ来ていなかったが、イル王は立ち上がり挨拶をした。
「本日は、このような話し合いの場を設けていただき、ありがとうございます。隣におりますのは、我が国の第3王女リンでございます。他国の文化に興味があるということで、私について参りました」
小学生くらいの少女は、席を立つのにピョンと椅子から飛び降りると、淑女の礼をした。
「ご紹介にあずかりました、リン・アーリヤでございます。よろしくお願い致します」
スカイブルーの瞳を前髪から覗かせ、パーマのかかった茶色の髪を揺らしながら挨拶をした女の子は、さながら生きたお人形の様であった。
「すまないが会議の間、城内を誰かに案内していただけると助かるのだが‥‥‥」
イル王は、すまなそうな顔をしながらエリオット様へ話し掛けていた。
「アイリス、頼めるかい?」
「はい、承知致しました」
意気込んで会議に参加した私だったが‥‥‥。正直なところ、会議に参加しても発言する事はなかった。それならば、他国の王女と行動を共にし、友好関係を築くのも1つの外交活動になるだろう。
「リン様。私がご案内させていただきます」
「よろしくお願い致します」
ピンクのドレスを着た少女は、私を見て目を丸くすると、髪を揺らしながら微笑んでいた。