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努力

 人間、諦めてはいけないと思う──そう、死んだらなにもかも終わりなのだ。何とかして生きたい。諦めたくない。


 自分が、何でこんなに生きることに執着するのだろうと思ったが、前世ではやりたい事を出来なかったせいかもしれないと思った。


 ゲームでは、悪役令嬢は主人公に嫌がらせをして断罪されていた。国外追放は、『死ぬよりマシ』と思ったが、他国は自国より貧しくて荒れている国が多い。地続きで繋がっているアーリヤ国は治安が悪く、テロリストも多いと聞いている。奴隷制度もまだ色濃く残っているそうだ。


 修道院送りが、一番現実的だ。平穏に暮らしていける。子供の世話も嫌いじゃないし、孤児達の面倒も見れるだろう。うん、それがいい。


 公爵家に戻った私は、魂が半分抜けたように呆けていたが、机の椅子に座り直すとペンを取って目標を紙に簡潔に書き綴った。



 第1希望 婚約破棄してもらって、自宅で引きこもる。


 第2希望 修道院送り


 第3希望 国外追放



 書いた紙を、掲げて確認すると「よし、生きてやる」と言って、そのまま引き出しにしまった。


 本当は額縁にでも入れて、部屋の中に飾っておきたかったが、メイドや他の人に見つかると色々と大変なことになってしまう。


 机の上に両肘をつくと、両手の手のひらを合わせ下を向き、目を閉じて、神経を集中させた──ゲームの内容を必死に思い出そうとしていたが、なかなか思い出せないでいる。


「──、────、────、お前が母を殺したんだろう?」


 王子の切ない声が、スチルと共に脳裏に蘇った。途端に思いきり肩を揺すられて、我に返る。


「アイリス様!! 先ほどから何回もお呼びしてますのに……。どうかなさいましたか?」


 横を振り向けば、メイドのサラが心配そうな顔で覗き込んでいた。


「ごめんなさい。なんだったかしら?」


 血の気が引いているのに、自分でも気がついていた。


「お顔の色が、すぐれない様ですが大丈夫ですか?」


「え、ええ。大丈夫よ。最近、寝不足のせいかもしれないわ。それで、どうかしたの?」


「エリオット様から、お手紙です」


 サラの持っている銀のトレーには、白い封筒が一枚載っていた。何気なく手に取り、首を傾げる。


「何か急ぎの用かしら?」


 エリオット様との手紙のやりとりは、幼い頃にしたきりだ。基本的に忙しい人だし、城で毎日会っているせいもあってか、手紙をくれる事はあまりなかった。この間の事を、気にしているのだろうか?


 そう思いながらも、ペーパーナイフで封を切って中身を確認する。手紙には予想外の事が書いてあった。


「お茶会の招待状だわ。王妃様からの」


 王妃様は、エリオット様経由で手紙を送ってきた。ということは、この間の事を気にかけての招待状なのだろう。


「まあ!! 素敵ですわね。何を着ていきましょうか?」


 サラは機嫌が良く、ドレスやアクセサリー、持っていく手土産などの話をしていたが、私が空返事だったのに気がついたのか、「お疲れでしょうから、お話はまた後にしますね」と言って、下がっていった。


 スチルを思い出すごとに心拍数が上がり、心臓がバクバクしている気がする──そう、ゲーム内で私が犯した罪の内容は、ヒロインへの嫌がらせもあったが、『王妃殺害』もあったのだ。




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