等価価値
オーベル様の部屋へ着くと、部屋には侍従しかいなかった。何処にいるのかと尋ねると「この時間は研究室におります」と言われて、私達は研究室へ向かった。
「研究室にはオーベル以外にも、人はいるんだろう? 急に訪ねたら、不味いだろうか?」
私は以前に会ったことのある、よれよれの白衣を着た魔術師達を思い浮かべた。
「どうでしょうか。だぶん、大丈夫だとは思いますが……」
エリオット様が、そう言いながらもやってきたのは、前にも来たことのある東棟の3階だ。
部屋の扉をノックをして中へ入ると、就業時間が過ぎていたのか中に人はいなかった。部屋の奥には更にドアがあり、奥の部屋へ続いている。
「オーベル様は、きっと奥の部屋にいらっしゃいます」
そう言いながら、部屋の奥にあるドアをノックした。
「どうぞ」
中へ入ると、こちらの様子に気がついていたのか、ドアの近くにオーベル様が立っていた。
「急に押しかけてごめんなさい。エリオット様がお聞きしたいことがあるそうなんです──少しだけ、お時間いただけますか?」
「ええ、問題ありませんよ」
オーベル様は笑ってはいるものの、目は全く笑っていなかった。よろしくなかったのかもしれない。ごめんなさい、すぐに帰りますから──そう思いながら見つめ返すと、目を逸らされてしまった。
「殿下、どうされましたか?」
「ん? ああ、オーベルに見てもらいたいものがあってな──これなんだが」
オーベル様は紙を受け取ると、真剣な表情で紙を見ていた。
「……」
「禁書庫の本に挟まれていたものなんだが……」
「……」
「オーベル様、これは石が関係しているのでしょうか?」
「石? 何故、石が出てくるのです?」
「禁書庫にあったから──それには、森が関係していると書いてあるでしょう? 森にあるもので、思いついたのが『石』だったのです」
「ええ、確かに。書いてありますね。石も──確かに森の中にあります」
「やはりオーベルも、その文章が読めるのか……」
エリオット様が、一人悔しそうに呟いた。
「でも、これは石の事では無いと思いますよ。そもそも、半分しかないのでなんとも言えませんが、これは、この紙自体の事を指しているものと思われます」
「紙?!」
「この紙は、何で出来ていると思いますか?」
「それは──木かしら?」
「その通りです。この国の森にある『木』や『植物』から出来ています。この国は、今まで森から魔素がほとんど発生しておりませんでした。従って、この紙は魔素をほとんど含まない紙になります。この紙に書いてある遺産とは──おそらく、この『紙』の事を言っているのでしょう」
「オーベル、もっと分かりやすく言ってくれないか?」




