家宝
「今日は少し時間があるんだ。これから、一緒に探してみない?」
「いいですわね。その古い紙切れ‥‥‥。下半分のようですね」
私はエリオット様から紙を受けとると、ひっくり返して見てみた。裏には何も書かれていない。
「うーん‥‥‥。古代文字ですね。上半分に何が書いてあったかは分かりませんが、一番下に書いてある文章は読めます」
「すごいよ、アイリス。何て書いてあるの?」
「我が国の──遺産は約束が守られし時のみ、森の中にあり‥‥‥。何のことですかね? エリオット様、この紙は何処にあったのですか?」
「その紙は、禁書庫にあったんだ。調べものをしている時に、その紙切れが見つかってね。栞みたいに本に挟んであったのだけど‥‥‥」
「禁書庫に何か手掛かりがあるとは、考えられませんか?」
「そうだね‥‥‥。今から行ってみようか?」
禁書庫への入室許可は既にとってあったらしく、サラに行き先を告げてから、私達は禁書庫へ向かった。
禁書庫は、その名の通り、あまり見てはいけないものが保管されている。
例えば、禁止された魔術が載った魔術書だとか、人を自由自在に操れる魔術具とか‥‥‥。市場では、もう2度とお目にかかれないようなものが置いてある。王族であるエリオット様でさえ、国王の許可なしに入ることは許されていない場所だった。
地下にある禁書庫の扉の前まで来ると、エリオット様は鍵穴に鍵を差し込み、扉に手を翳した‥‥‥。すると、扉の前に『王族の紋様』が現れ、光がクルクル回ると小さく弾けた。
「アイリス、開いたよ。暗いから、足元に気をつけて」
「はい、ありがとうございます」
エリオット様にエスコートされながら禁書庫へ入ると、壁際の明かりが一斉に点いた。どういう仕組みなのかは分からないが、入室すると明かりが勝手に点くようになっているみたいだ。部屋の中は、少しカビくさい臭いがしていた‥‥‥。真ん中から右半分の入り口に近い方が、本棚になっているようだ。
「それにしても、どうして禁書庫なのでしょう? 本は禁書庫全体の半分みたいですけれど‥‥‥」
「何故かは分からないけれど、周りの人達はここを禁書庫と呼んでいるよ」
「何か理由があるのかしら?」
「アイリス‥‥‥。1つ気がついたことがあるんだけど‥‥‥」
「なんですの?」
「この紙に書いてある地図、この書庫の地図なんじゃないかな?」
紙に書いてある地図は、かなり簡略化されていて、何を示しているのか分かりづらかった。けれど、そう言われてみると部屋の見取り図の様にも見える。
「では‥‥‥。この部屋に家宝が眠っているのでしょうか?」
「その可能性は、高いと思う。手分けして手掛かりを探してみよう」
「では、私は紙切れの上半分を探してみます」
私はそう言うと、少し埃の被った本棚の前に立ち、パラパラと本を捲って紙切れが挟まっていないかを確認していた。
「じゃあ、私は他に手掛かりになりそうなものがないか、一通り確認してみるよ」
エリオット様はそう言うと、左奥にある棚を調べていた。