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婚約披露パーティーと断罪イベント

 婚約披露パーティー当日──私は城の中を走っていた。なぜなら警備が厳重すぎて、通してもらえない通路が多かったのである。


 赤い絨毯の上を走っていると、護衛騎士とサラも小走りについて来る。


「アイリス様、この道はパーティー関係者の方が、もうすぐ来られます。別の道からお願い致します」


 他の通路に出ると、また別の警備担当の人に言われて、ものすごく遠回りして会場へ向かった。


 周囲に人がいなかったので、スカートの裾をたくし上げながら走っていると、サラが眉をひそめていた。時間に間に合わせるためだから、勘弁して欲しい。


 今日はグリーンのシフォンドレスを着ていた‥‥‥。届いた時は、可愛いドレスと思っていたが、今となってはスカートのヒラヒラが気になって仕方ない。


 やっとのことで、会場の隣にある控え室まで辿り着くと、エリオット様も来たのが見えて、一緒に部屋の中へ入った。


「アイリス、今日も綺麗だね」


 エリオット様は私の隣に来ると、優しく微笑み、そっと髪を撫でていた。


「ありがとうございます。今日は色んな意味で、勝負の日ですね」


「ああ」


 今、私が着ているドレスの内側には、夜なべして作った内ポケットに、オーベル様に貰った通信機を忍ばせていた。


「予定通りに」


「承知致しました」



*****



 婚約パーティーは、エリオット様の挨拶から始まり、国王の挨拶ならびに王太子をエリオット様に新しく任命することを発表した。それと同時に、私とエリオット様の婚約も発表される。


 国王が席に着くと、会場へ鋭く響く声が聞こえた。


「お待ちください!!」


 その声に振り向くと、公爵令嬢のアンナ様が立っていた。真っ赤なドレスを着て、怒りに満ち溢れているような表情をしていた。


「ヘンリー様が王太子だったはずです‥‥‥。何の知らせもなしに、こんなの許せませんわ」


 婚約を破棄されたアンナ様‥‥‥。許すも許さないも、王命なのだから仕方がないだろう。何を言っているのだろう‥‥‥。そう思っていると、彼女は丸いボールの様な物を頭上に掲げていた。ボールは、壁に向けて光を放っており、壁には『映像』が映し出されていた。


「‥‥‥これは?」


 焦点の合わない、ピンぼけした映像が、やがてハッキリと見えてくる。


「兄上!!」


「ヘンリー様‥‥‥」


 ヘンリー様は、こちらを見ると話始めた。どうやら()()されている様だ。


「私は今、アーリヤ国に亡命している。何故なら、そこにいる弟のエリオットに暗殺されかけたからである‥‥‥。それを今、この場で告発する」


(暗殺? 何それ? エリオット様がそんなことする訳ないじゃない)


「次期国王が殺人者であってよいのか、私は甚だ疑問である。それに、カルム国はアーリヤ国に戦争を仕掛けようとしている。先の戦では、アーリヤ国の魔法師が殲滅してしまった‥‥‥。アーリヤ国は、これをカルム国の意図的な侵略計画と捉え、宣戦布告と受け止めている」


「何を、(たわ)けたことを!!」


 国王は立ち上がり、今にも殴りかかっていきそうな勢いで叫んだ。


「だが、それもこれも全て『アイリスが招いたこと』だと判明した」


(なんですって? そんな『断罪イベント』なかったはず──って、今はヘンリー様を止めないと!!)


「ランブレ!!」


 私は通信機から聞こえた呪文を唱えると、目の前に手をかざした。金色の光が渦を巻きながら私の手に収束し、解き放たれる。




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