知らせ
私がエリオット様の名前を呼んだところで、部屋の扉が勢いよくノックされた。
「エリオット殿下!! 至急ご報告したいことがあります」
エリオット様は私の涙を拭うと、私を他の人から見えにくい位置にある椅子に座らせた。
「‥‥‥入室を許可する」
「はっ!! 失礼致します。ご歓談中、申し訳ありません。ヘンリー殿下が見つかったとの情報が入りまして、ご報告に参りました」
「見つかったのか?! 兄上は、何処にいるんだ?」
「残念ながら、森でお亡くなりになっておりました」
「「?!」」
騎士の言葉に、私はびっくりしすぎて、涙が止まってしまっていた。
「‥‥‥そうか」
エリオット様は、椅子にもたれ掛かかり俯いていた‥‥‥。泣くのを堪えているのかもしれない。
「エリオット様‥‥‥。私、森から帰る途中に、ヘンリー様によく似た亡骸を見ましたの。火の手から逃げる途中で、きちんと確認は出来なかったのですが‥‥‥」
「そういえば、この間そんな話をしていたね」
「え、ええ」
エリオット様は、後ろに控えていた騎士に向かって尋ねた。
「兄上は、どの辺で見つかったんだ?」
「それは、その‥‥‥。私は伝えるように言われただけで、詳しくは存じません」
「アイリスは、兄上によく似た人物が亡くなっているのを見たんだよね?!」
「はい。よく似ておりましたので、影武者だったのかもしれませんが‥‥‥」
「影武者が殺されて、見つかっていないということは──兄上は、まだ生きているということか?」
私が顔を上げると、開け放たれた扉から緑の光が入ってくるのが見えた。中が黒くなっており、『呪いの魔術だ』と思った時には遅かった。
「エリオット様!!」
叫んだが、緑の光は一直線に飛んでくる。間に合わない‥‥‥。そう思った瞬間、報告に来ていた騎士が、代わりに倒れていた。
「きゃっ!!」
「アイリス、まさかこれは‥‥‥」
「呪いの光が見えました」
「衛兵!! ここへ!!」
騎士達がエリオット様を守るために次々と集まり、部屋の中は人でごった返していた。
「エリオット殿下‥‥‥。部屋まで、お送り致します」
「ああ‥‥‥。頼む」
いつの間にか側へ来ていたジルは、エリオット様にそう言っていた。エリオット様は私の肩を抱き寄せ、そっと撫でている。
「アイリス、大丈夫? 一緒に行こう」
「‥‥‥はい」
私とエリオット様は、エリオット様の部屋に避難するべく、その部屋を出たのだった。