王妃様とのお茶会
数日後。私が私室で開いたお茶会に、王妃様が護衛を引き連れてやって来た。挨拶もそこそこに、サラがお茶を運んでくる。
「アイリス、息災でしたか? 私は、あなたが事件に巻き込まれたとエリオットから聞いて、気が気じゃなかったわ。元気そうな姿が見られて何よりです」
「ご心配おかけして、すみません」
「それで、エリオットから相談があると、聞いたのだけれど……」
「はい。来週の婚約披露パーティーについてですが──王命とはいえ、こんな状況下で行うのはあまり気が進まないのです。ヘンリー殿下のこともありますし……」
「そうねぇ。私もヘンリーのことは、心配で仕方がないのだけれど、それとこれとは話が別だわ」
「別ですか?」
王妃様は扇を広げると口元を隠しつつ、話始めた。
「そう。私達は自分自身のことはあるけれど、第一に国民のことを考えなければならないの。エリオットの王太子任命の件もあるし……」
「王太子任命?」
「エリオットから聞いてないかしら?」
「……初耳です」
「あらあら。エリオットは、あなたを驚かせるつもりだったのかしら?」
私も扇を広げると、口元を隠しつつ喋った。そんな噂を聞いた気もするが、正式決定になったとは聞いていなかった。
「そのようですわね」
「婚約パーティーもそうなのだけれど、王太子任命の発表も大事なのよ。国民を不安にさせてはならないわ。そのためにも、発表は早めにした方がいいと思うの。この国は安泰ですっていう……」
王妃様の声は少し震えて聞こえた。きっと精神的に参っているのだろう。
「王妃様。エリオット様がいれば、この国はこの先も、ずっと安泰だと私は思っております。きっと、ヘンリー殿下も見つかりますわ」
「そうだと良いのだけれど──あの子、変にアーリヤ国に肩入れしてたから」
(ヘンリー様が、アーリヤ国に肩入れ?! そんな風には見えなかったけれど……)
「母上。それ以上、アイリスに兄上の話をするのはご勘弁を。まだ話していないこともありますので」
いつの間にか、エリオット様が部屋に入ってきていた。
「あら、エリオット。早かったのね」
エリオット様の急な登場に驚いた私は、思わず聞いていた。
「エリオット様、執務はよろしいんですの?」
「アイリスとお茶をするために、頑張って今日の分を終わらせて来たよ」
「……」
エリオット様の物凄い良い笑顔に、私は何も言えなくなってしまっていた。
「まあまあ──二人で積もる話もあるでしょうから、私はこの辺で失礼するわ」
王妃様は、私に流し目で合図を送ると、護衛を引き連れて帰っていった。
(どういうこと? 二人で話し合いなさいってこと?)




