三者会談
オーベル様がソファーへ座り、昼食が運ばれてくると、昼食を食べながら今回の事件について話していた。
こういう話し合いは、普段は行っていないのだが、エリオット様は緊急性を感じたのだろう──エリオット様とオーベル様は難しい顔をしていた。
「それで、魔術師団はどうだったんだ?」
「一部の者は動揺しておりましたが、空から音が鳴った際に、殿下が『敵襲ではない』と各部署に通達してくれたおかげで、混乱も少なくて済んだそうです。ありがとうございます」
「そうか。たいした混乱もなく、無事に済んで良かった」
「ただ、ヘンリー殿下が見つかっておらず、いまだ予断をゆるさない状況です」
「もし敵国の手に落ちたならば、戦争は避けられないだろうな」
エリオット様は憂え顔で溜め息をつくと、フォークでステーキ突きを刺し、かぶりついていた。そんな動作にも、思わず目を奪われてしまう。
「どうした、アイリス? 私に見とれているのか?」
エリオット様は不思議な顔をしたあと、微笑みながら話しかけてきた。
「申し訳ありません。疲れてしまったのか、少しボーッとしてしまって……」
「そうか。すまないな、付き合わせてしまって」
「いいえ、お気になさらず。私はエリオット様の婚約者ですから」
「「「……」」」
「エ、エレナ様はどうされていますか?」
「地下牢に閉じ込めているよ。ある程度、事情が分かるまで、彼女にはそこにいてもらう」
なんてことだ。私じゃなくて、聖女様が罪人になってしまうとは。
「彼女は、私を助けようとしてくれました。何とか、助けてあげることは出来ないでしょうか?」
「アイリス。君も分かっていると思うが、王族に危害を加えようとした者を無罪にする事は出来ない。議会でも、誰も容認しないだろう──他の者にも示しがつかない」
エリオット様に続いて、オーベル様も諭すように話し掛けてくる。
「実際に、爆裂火炎魔法を受けたのは、アイリス様だったのでしょう? 油断させるために、味方のふりをしたのかもしれません。アイリス様は案外、情に脆いところがありますから」
「なっ、てっ……」
案外って失礼な!! 私が何か言い返そうとして、なにも言えずに百面相をしていると、エリオット様が腹を抱えて笑い出した。
「なんだ、その顔は──アイリス、面白すぎだろ!!」
(変な顔で悪かったわね!! もともと、こういう顔なんです!! 悪役なんです!!)
エリオット様は、ひとしきり笑い終えると、真面目な顔をして言った。
「ただ、ライナスは納得しないだろうな」
「自分が騙されていたとしても、ですか?」
「ああ。むしろ事情を知っていたと言い出しかねない──あいつは、そういう人間だ」
エリオット様は、断罪しなければならない事実に、辟易しているみたいだった。
そんな様子のエリオット様に、オーベル様は少し不思議そうな顔をして言った。
「随分、信用されているんですね」
「最近はあまり無いが、兄上の本気の嫌がらせに、子供の頃からライナスには何度も助けて貰っているんだ。あいつは兄上や婚約者のエレナを助ける為だったら、自分の命すら惜しくないだろう」
ライナス様にも、罪人にはなって欲しくない。だって、私が断罪されるはずだったのだ。本当に罪を犯したのならば、償うべきだとは思うけれど、ライナス様はそうではないのだろう。
「そう言えば、ライナス様が暴れているという件はどうなったのですか?」




