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発動

 部屋を出てしばらく歩くと、オーベル様は立ち止まって振り返り、こちらを見ていた。魔術を吸収してしまったせいか、お腹の辺りがウズウズしている。これが魔力というものなのか‥‥‥。と不思議に思った。


「オーベル様、ありがとうございます。ここまでで結構ですわ」


「アイリス様。お気をつけください。魔術師の中に犯人がいないとは限らないのです。何かあれば、私が殿下に叱られてしまいます」


 さっきオーベル様が「結界を張った」と咄嗟に嘘をついてくれなければ、もっと騒ぎになっていただろう。


「それで、魔力はどんな感じでしょうか?」


 私がさっき、不用意に触れてしまった魔術について言っているのだろう。気がつけば、身体の中にざわめきを感じ、鳥肌が立っていた。


「何だか変な感じがします。他人の魔力だからなのか、気持ちのいいものではありませんね」


 オーベル様は、私の手を取ると金属で出来たブレスレットを着けてくれた。金属部分には金の模様が細かく刻まれており、緑の宝石が嵌め込まれている。


「エリオット殿下から頼まれていたものです。これを着けた状態で、魔術を地面へ放つことは出来ますか?」


「やってみたいと思いますが、ここでは危険ではありませんか?」


 私は、狭い回廊を見回した。ここでは何かあった時に、危ないかもしれないと思ったのだ。


「それもそうですね。少し戻りますが、競技場まで行ってみましょう」


 そして、3人で競技場へと向かったのだった。



*****



 競技場には誰もいなかった。たまに騎士がここで訓練をしているらしいが、今日は使用していないという事だった。


 何もない地面まで辿り着くと、オーベル様は私を促した。


「アイリス様、先ほど受けた魔法を地面へ放って貰えますか? 場所は‥‥‥。端っこの雑草が生えている辺りがいいでしょう」


 競技場の整備された場所とは別に、少し離れたところに雑草が生えている場所があった。


「分かりました。やってみます」


 上手く出来るのか不安だったが、私はオーベル様に言われたとおりに、魔術を付与するイメージで、さっき受けてしまった魔術を草の上に放った。


「きゃ?!」


 すると、一瞬で辺り一面が炎と化してしまった。慌てたオーベル様が、水魔術を使って消火作業をしてくれた。


「ウォータースプラッシュ!!」


 あっという間に火は消し止められたが、地面は黒こげになっていた。


「おいおい、嘘だろ‥‥‥」


 ジルは、いつの間にか私の前に出てきて、水が掛からないように盾になってくれていた。


「これは‥‥‥。さすがに殿下に報告しないといけませんね」


 苦笑したオーベル様が私に向き直って、手を差し出してきた。私は手のひらを、そっとオーベル様の手の上にのせると、オーベル様は私の手を持ち上げ、手の甲に額を押しつけていた。


 なぜ今のタイミングで、オーベル様が敬愛の意思表示をしたのか、私には意味が分からなかった。気持ち悪いという気持ちは無かったものの、逆に何かあったのかという猜疑心の方が大きくなってしまい、身体を強ばらせていた。


 私はオーベル様に手を引かれ、3人でエリオット様の執務室へ、そのまま向かったのだった。




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