天空島の千年華
天空島シナトラス王国……天と地上を繋ぐ役割として天空に存在する国。
地上の人々の願いを聞き届け神に代わり願いを叶え、神からの神託を地上の神父達を通して人々に伝える。その役割を果たしているのがシナトラス王国の天空人である。
私は、そんなシナトラス王国で父である国王に次いで2番目の能力者として人々の願いを叶えてきたが、父にはない私だけの能力もあった。朝から晩まで聞こえてくる声が全ての天空人に聞こえているものと思っていたがどうやら他の人には私の半分くらいも聞こえていないようだった。
私がそのことに気づいたのは10歳の夏に父と共に避暑で訪れていた別荘でのことだった。
「せっかく療養に来ているのにまだ顔色が優れないな」
「……父上。すいません。ここにいてもずっと声が聞こえ続けているので、落ち着かなくて」
「…………何?」
「……え?」
父が言うには願石を通してでないと地上人の声は聞こえないと言うのだが、それが私にはずっと聞こえ続けている。それができるのは神か神の加護を受けたものだけの能力と言うのだ。
「けれど、私はそのように加護を受けた記憶はありませんし、何より幼い頃…物心ついた頃からずっと聞こえていました。」
そう伝えると、父は私に休んでおくように伝え慌ただしくどこかへと行ってしまった。
その時初めて私が他の人とは違うことを知った。
陽が落ち始めた頃に戻ってきた父は特に変わった様子もなくいつも通りだったけど、時々狼狽えたようにした後また考える様な素振りを見せた。
「……父上。何か話されたいことがあるのでは?」
「あ、あぁ……。」
少し躊躇った様子を見せた後に父上が話した内容に驚かされた。
私には産まれた頃から母が居なかった。周りにはメイドや執事がいた上に乳母を母と思い育った為、何も不思議に思わなかった。けれど、父上が言うには私にはちゃんと母が存在して現在も健在というのだ。
「母上は私を捨てたのですか?」
「そうではない。……一緒に暮らすことが許されないだけだ。」
「何故?母子が一緒に暮らす事に誰の許しが必要なのですか。」
「…………神だ。」
苛立ちを覚えるのを落ち着かせながら父上に詳しく問いただすと
、私は父上と天界にいる女神との間に産まれた子だという。
天界と天空島は良好な関係を築いているが、それは表面上であって実際はお互い裏がないか探り合いを続けて体面を保っているだけである。
そんな関係の中での父上と女神の関係に気づいた神王が2人が会うことを禁じ、私が産まれてすぐ、父上の元に私を置いていったと言うのが今まで隠していた事らしい。
「その話と私の能力になんの関係があるのですか。」
「お前のその能力母親譲りなんだ。恐らく、力の調整が出来ていないだけで他にも隠れている能力があるはず」