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最愛なる殺人鬼さまへ  作者: 有氏ゆず
第一話 殺人鬼との出逢い
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1-7





「……そんなことより、飯。もう行けるんだろ」




……そんなことより、か。この人は本当にわたしに興味が無いのだな。まあ、その方が有難いけれど。


そしてわたしは彼と関わったこの数分で、とても愚かな願い事を思いついてしまった。


「うん。だけど、もうひとつだけお願いがある」

「はァ!?テメェ、あんまり調子に……!」

























「お願い。わたしを助けて。わたしに飼われて」












わたしの言葉に男は目を丸くする。


「……は?何言ってンだ……」

「わたしが死ぬまでの一ヶ月間、わたしの側にいて欲しいの。その間、何でも食べさせてあげるから。あなたは保護者として、わたしに飼われて欲しい」


とてもとても愚かな願い事。

当然、彼は断ってくる。


「ざけンな。そこまでガキの面倒見れるかよ」

「あなた、指名手配されてる凶悪殺人犯でしょ。施設を燃やして、職員も子供も皆殺しにした、最低最悪の」





部屋から出られないわたしの唯一の娯楽はテレビだった。

それは世間知らずなわたしでも知っている事件。テレビで見たのと髪型が別人レベルに変わってはいたが、わたしは顔を覚えていた。


「……はッ、こんなお嬢様にも知られてるなんて光栄だなァ」

「あなた、捕まりたくないから逃げてるんだよね?一ヶ月、生活を保証してあげるから、わたしと一緒に居て。何もしてくれなくていい。ただ、一緒に居て。わたしが死ぬのを、看取って欲しいの」


わたしは彼の血のようにどす黒く紅い瞳をじっと見つめる。





「最低最悪の脅しじゃねェか」

「最低最悪の殺人鬼には言われたくない」

「テメェ本当に小学生かァ……?」


「小学生だよ」と言うと、彼は大きくため息をついて、立ち上がった。


「……飯」

「契約成立ってことで、良いの?」

「うるせェいちいち口に出すな」

「ん……ありがと……」

「……テメェの名前は」

「なまえ……」


暫く誰にも呼ばれなかったわたしの名前。

少し緊張しながらも、わたしはその名を彼に告げる。







「……わたしは、(かおる)。これから一ヶ月、よろしくお願いします」


こうしてわたしと殺人鬼の、奇妙な生活が幕を開けた……。




第二話に続く……





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