◾︎
……目覚めると、そこは知らない天井だった。
何だ、ここは。あの最低最悪な施設じゃないことだけは分かるが……。
「……!目が覚めたの!?」
「……ァ、ここは……?」
「ここは病院よ。あなた、あの火事の中でよく生き残れたわね」
「死んでねェのか、俺ァ……」
どうやら俺はここでも死に損なったらしい。
どうして死ねない。俺は本当に人間なのか。
アイツらの言う通り、俺は悪魔なのか。
「あなた以外、全滅だったみたい……」
「……ふーん」
「ねえ。今から警察の方が話を聞きたいみたいだけど、話せるかしら?」
……警察、か。あの大惨事の中での生き残りだ。そりゃ疑ってるだろうな。俺のことを。
別に逮捕されても構いやしねェさ。
あの地獄に比べればどこだって─────
─────まだ殺してねェ奴が、いる。
地獄という言葉で思い出した。俺に対する地獄が始まったのはここ最近の話だけではない。
もっと昔、俺が施設に入った7歳の頃から、ずっと続いていたじゃないか。
その間に俺を虐待するだけ虐待して施設から卒業していった奴だっていた。
そうだ。きっと俺が生き残ったのはまだ俺にはやるべきことがあったからだ。俺に地獄を見せた悪魔共を全員殺すまで、まだ死ぬなと神が言っているんだ。
俺の復讐はまだ終わっていない。俺はまだ殺し終えていない。
「話す前に、便所に行きてェ」
「ああ、そうね。御手洗は部屋を出て右に曲がったらすぐよ。付き添いましょうか?」
「……いや、一人で歩ける」
本当に火事に巻き込まれたのかと自分でも思うくらいの回復力だった。歩くのにも全く支障が無い。
……これならば、逃げられるだろう。
俺は気づかれないうちにそっと病院から抜け出し、全速力で駆ける。
身体が、軽い。いくら走っても疲れない。
俺は、こんなに体力があっただろうか。
まあ良い。不都合なことは何も無い。寧ろ好都合なくらいだ。
「……俺ァ、本当に悪魔になっちまったかもしれねえなァ」
なら、悪魔らしく振舞ってやろう。俺を生かした神よ、それが望みなんだろう。
気まぐれで俺を何度も生かしやがって。
見せてやるよ。お前の気まぐれがとんでもない殺人鬼を生み出す瞬間を。
俺は空に向かって唾を吐く。これは神に対する宣戦布告だ。
その日の月は、俺の瞳のように真っ赤だった……。
繝九ぎ縺輔リ縺
隕壽ぁ縺励m