ろくのよん
何度も死ぬ事を考え、その度死ぬことを躊躇してしまい、結局いつもの地獄の時間を迎える。
しかし、そんな俺にも生きる希望がひとつだけあった。……弟の存在だ。
部屋に篭ってしまえば、誰も俺の部屋には近づきたがらない。しかも施設のセキュリティはザルだった。
俺は夜の時間を利用して施設を抜け出し、自分の元いた家の場所を調べた。
(この時、施設から逃げてしまっても良かったのだろうが、見つかった時の怖さから朝になる前には自分の部屋へときちんと戻っていた)
そしてある日、ついに家を特定した。
バレないように覗くと、そこには懐かしい両親が居た。でも、目的はそいつらじゃない。俺にとって両親には憎しみの感情しか無いからだ。
「……!」
ふと、藍色の瞳の子供と目が合う。小さい頃の俺と同じ瞳の色だった。
「ママ、だれかいる!」
「何言ってるの、古。誰も居ないわよ?」
「ははは、気のせいさ。もう夜も遅い。早く寝ないとおばけが出てしまうよ」
「あら。古が見たのもおばけかしらね」
「えー!やだ!ねる!」
慌てて身を隠したお陰で両親にはバレずに済んだようだ。……あの子が、俺の弟……だろうか。
とにかく、弟は両親に愛されて育っているようだ。弟まで俺と同じような目に遭っていたらどうしようかと不安だったが、良かった。
……安心と同時に、もうあそこには俺の居場所は無いんだなと、痛感する。
しかし、思った以上に弟は可愛かった。
毎日毎日地獄の時間を過ごしても、夜に弟の顔を一目見るだけで、帳消しになるくらいには俺の心の支えとなっていたのだ。
最初に弟と目が合って以来、俺はかなり警戒して会いに行くようになった。
その甲斐あって、一度も弟と遭遇するようなことは無かった。
だから、弟は俺の存在を知らない。
それでも良い。俺のことなんか知らなくて良いから。ただ、誰にも知られず5分程、毎日弟の姿を見るだけで、それだけで俺は────
そんなことを続けて、気づけば俺は17歳になっていた。
あの事件が起こったのは、俺が18歳になる誕生日の前の日の夜のことだった……。




