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最愛なる殺人鬼さまへ  作者: 有氏ゆず
第五話 殺人鬼の贈り物
35/83

ごのはち





───クソ。いい笑顔しやがるなァ。




馨の笑顔を見るという、目的は達成した。

しかし、コイツは何故そんなに不安になるのだろうか。俺は捨てるなんて言ってないが。


「どうして捨てられるなんて思った?」

「だって……海行く前にもそういう話になったじゃない……」


ああ、あの話か。あれはもう俺の中では終わったことになっていたが、コイツは未だにあのことを気にしていた、と。





「それに、黎一郎は自分のこと何も話してくれない……」


予想外の返答が来た。てっきりコイツは俺のことに興味が無いと思っていたが……。


「わたし、黎一郎のこと何も知らないの。だから不安だった。殺人鬼って言っても、何をしたかも知らないし……」

「……あのなァ。気持ちのいい話じゃねェぞ」


当たり前だ。人を殺したなんて話、簡単に口に出来るようなものじゃない。罪だぞ。

ホームレス仲間でそういう奴にも会ったことはあるが。まるで武勇伝かの如く、どうやって殺したか、感触はどうだったか等、聞いてもいないのに語りやがる。正直、不快でしか無かった。


……まあ、俺も殺したくて殺したし、殺したことを後悔もしていない。思い出したくもない記憶だが。





「わたし、知りたいの。黎一郎のこと。罪も、全部」

「俺のこと、ねェ……」


誰にも話すつもりは無かったし、死ぬまで自分の胸の中にだけ留めておくつもりだった。

どう考えても愉快な話では無いし、ましてや馨は子供だ。こいつが受け止めるにはあまりにも重すぎる。


だがコイツは説得したところで納得はしないだろう。寧ろどうして話してくれないのか、また捨てられるのではないか、とか何とか勝手に不安になるに決まっている。





「本当に、良い話じゃねえからなァ」

「……うん。それは、分かってる。でも黎一郎のこと、何でも知りたいの」


最後の警告も無駄だった。まあ、こいつも生半可な覚悟で聞いてはいないことは分かる。


なら、俺も覚悟を決めるしか、ねェか……。





「……分かった。少々、長くなるぞ」

「……うん」


俺は、ずっと封じ込めていたあの忌まわしい過去を、2週間前に出会ったばかりの子供に話し始めた……。





第六話に続く……






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