5-6
「黎一郎……!?」
わたしがあれほど会いたかった相手は、簡単に目の前に現れてくれた。
「おう、俺だァ。で、テメェは俺のツレに何してやがる……?」
……あっ、いけない。
黎一郎目線だとわたしが変な人に捕らえられた、みたいに見えてる筈。説明しないと。
「黎一郎、この人は何も悪くないの。悪いのはホテルを走り回っていたわたし。……ううん、勝手に居なくなってたあなたなの」
「……あ?」
「従業員さん、騒いでごめんなさい。この人が兄です。もう大人しく部屋に戻りますので、離して下さい」
「え……?あ、ああ。見つかったのですね。それは良かったです」
わたしはようやく解放され、黎一郎をキッと睨みつける。
「いやお前、アイツに何かされてたんじゃ……」
「詳しくは部屋に戻ってから説明する。ほら、行くよ」
わたしはまだ何も納得していなさそうな黎一郎の手を無理矢理引いて、部屋へと向かった。
「どうして勝手にいなくなったの!?わたし、心配で心配で……!」
今までの経緯を全て説明し、わたしは黎一郎に怒鳴った。本当の本当に絶望したのだ。もう、世界が終わったと思えるくらいには。
だが彼にはそれが伝わっていないようだ。
「別に、ちゃんと帰ってきたんだから良いだろ」
「良くない!そもそもわたし、今日は安静にするようにって、言ったよね……!?」
「薬塗ったんだから治っただろ」
「そんなにすぐに治る訳ないでしょ……!?」
……そうじゃない。本当にわたしが伝えたいのは、そんな言葉じゃない。
「……怖かったの。捨てられたと思った」
わたしは、伝えたかった言葉を吐き出す。
「……は?」
「お願い……黙って出て行かないで。不安で、怖くて、どうにかなっちゃいそうだった……」
文字通り、彼に縋り付く。
もう得とか損とかそういうのじゃない。わたしは彼が側に居ないと、嫌だ。ただその一心で縋り付いていた。
彼は呆れているように見えた。もう、彼にとってわたしは不要なのだろうか。
「お願い。何でもする。何でも食べさせてあげるし、これからは足を引っ張らないように頑張るから……捨てないで……。わたしにはもう、黎一郎しかいないの……」
……わたし、泣いてるの?ううん、もうそんなのどうだっていい。黎一郎を引き止めないと。
「どうして何も言ってくれないの……?死ぬまでわたしの側に居てよ……。後、13日だけだから……」




