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「ん……」
久々に長時間ぐっすり眠れたかもしれない。
家に居た頃はベッドにいるのが普通だったし、死ぬまでの一ヶ月間はもう寝なくてもいい、なんて最初は思っていたが、ベッドでの睡眠がどれだけ大切かを知らされた。
それにしてもやけに静かだな。黎一郎も爆睡しているようだ。やっぱりあんな強がりを言っていて、本当は疲れが限界だったのだろうか。
黎一郎の寝顔を一目見てやろうと思い、ベッドから起き上がって……絶句した。
「何で……居ないの……?」
ベッドの上に黎一郎の姿は無かった。なら風呂かトイレだろうか。
「黎一郎、いるの?」
念の為トイレをノックをしてみるが、反応は無い。ドアノブを回してみると、鍵はかかっていなかったので意を決して扉を開けるが、そこに黎一郎はいなかった。
風呂場も覗いてみるが、黎一郎はいない。そもそもシャワーを浴びているなら音がしてもおかしくない筈だ。
ひょっとしたら大浴場にでも行ったのかもしれない。1階のゲームコーナーに行った可能性も……。だってここ、黎一郎が興味を惹かれそうなものが多いもの……。
「黎一郎、どこ……?」
自分でもびっくりするようなか細い声が出た。
とにかく、黎一郎を探さなきゃ。
「黎一郎!ねえ、いるんでしょ!」
ゲームコーナーはわたしの声がかき消されそうな程、騒がしかった。これではわたしの声が黎一郎に届かない。
わたしは精一杯の大声を出して、黎一郎を呼びながらゲームコーナーを走り回る。だが、彼の姿は何処にも無い。
「……黎一郎!」
なら大浴場か。わたしは何の躊躇いもなく、男湯に飛び込んだ。数名の客が驚いた様子でこちらを見ている。でも、そんなのに構っていられない。
黎一郎。わたしの黎一郎は、どこなの……!?
「……!」
ホテルの従業員が慌ててわたしをつまみ上げて、大浴場から無理矢理退室させられる。
「やめて!離して!」
「ど、どうなされたんですか!お客様!」
「れいいち……兄、兄が居ないの!探さないといけないの!」
「落ち着いて下さい!」
ここまで探しても居ないなんて。
わたしの頭に最悪の想像が、思い浮かんでしまう。
────わたしは黎一郎に、捨てられたの。
嫌。そんなの信じない……!
わたしは首を振ってその嫌な想像を頭から追い出そうとする。ただ、その行動を従業員は抵抗していると見なしたらしい。先程よりも強く、わたしを押さえつけてきた。
「落ち着いて下さい、お客様!」
「いや!いやだ!黎一郎!わたしのこと捨てないで!!」
「…………あァ?何してンだ、お前ェ」




