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最愛なる殺人鬼さまへ  作者: 有氏ゆず
第五話 殺人鬼の贈り物
29/83

ごのに





……よほど疲れきっていたのか、馨はすぐに眠ってしまった。

顔を近づけて、本当に眠っているのか確認をする。……間違いない。しかも深い眠りだろう。


「薬塗ったんだし、治ったよなァ」


あれだけ痛い思いをしたんだ。もう治っていてもおかしくないだろう。


「こうなったのも、お前のせいだからなァ」


俺は元々何をするにも諦めていた。

だからこそ、人気のないゴミ捨て場を住まいにして、ゴミに包まれて眠る堕落した生活を送っていたのだ。


そこに、アイツが現れた。

アイツとの契約上、アイツのわがままに俺は付き合ってやらなければならない。

だから、色々なものや景色を目にした。

そのせいで、1日動かない生活が退屈過ぎて嫌になってしまったのだ。




「……人殺し、か。馬鹿なことしやがって」


俺の捜索が本格的に行われ、アイツも家の奴らに脱走がバレた。それに加えて殺人の罪。

俺達は前以上に警戒をして動かなくてはならなくなった。


……それで、良いのだろうか。

馨は自由を求めて脱走をしたと言っていた。今の俺達は、果たして自由だと言えるのか……?







「……知るかよ、そんなこと」


学校など、行ったことのない俺には難しいことは分からない。考えても分からないことに時間を費やしても無駄だ。


そんなことより、外出だ。外出。

バレたら物凄く怒られるのだろうが、アイツが寝ている間にこっそりと出て、起きる前に戻って来れば問題無いだろう。

アイツが見ていないことは、なかったことと同じだ。


それに……馨はプレゼントを欲しがっていた。

帰ってきて起きた時の保険として、適当な物を買って与えてやれば、誤魔化せるだろ。

そうだ。アイツはもう誕生日だ。誕生日プレゼントとして渡せば冥土の土産(用法が合っているかは知らねえ)にでもなる。




……そうか。もうすぐ死ぬのか。

あの世に持って行くのに、適当な物で良いのか?


「……いや。俺には関係ねェだろ。そんなこと」


何浸ってんだ。俺らしくも無い。

何だこの感情。これが父性か?


「……気持ち悪ィ」


俺はその汚い感情を振り落とすかのよう、大きく舌打ちした。

思いのほか響いてしまったので、馨を起こしたのではないかとベッドの方を振り返るが……爆睡しているようだ。


……というか、そんな無駄な時間が惜しい。アイツはいつ目覚めるか分からないのだから。

俺はそっと部屋を出る。





後ろ手に閉めた扉が、やけに大きな音を立てた気がする。……まあ、大丈夫だろ。





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