ごのに
……よほど疲れきっていたのか、馨はすぐに眠ってしまった。
顔を近づけて、本当に眠っているのか確認をする。……間違いない。しかも深い眠りだろう。
「薬塗ったんだし、治ったよなァ」
あれだけ痛い思いをしたんだ。もう治っていてもおかしくないだろう。
「こうなったのも、お前のせいだからなァ」
俺は元々何をするにも諦めていた。
だからこそ、人気のないゴミ捨て場を住まいにして、ゴミに包まれて眠る堕落した生活を送っていたのだ。
そこに、アイツが現れた。
アイツとの契約上、アイツのわがままに俺は付き合ってやらなければならない。
だから、色々なものや景色を目にした。
そのせいで、1日動かない生活が退屈過ぎて嫌になってしまったのだ。
「……人殺し、か。馬鹿なことしやがって」
俺の捜索が本格的に行われ、アイツも家の奴らに脱走がバレた。それに加えて殺人の罪。
俺達は前以上に警戒をして動かなくてはならなくなった。
……それで、良いのだろうか。
馨は自由を求めて脱走をしたと言っていた。今の俺達は、果たして自由だと言えるのか……?
「……知るかよ、そんなこと」
学校など、行ったことのない俺には難しいことは分からない。考えても分からないことに時間を費やしても無駄だ。
そんなことより、外出だ。外出。
バレたら物凄く怒られるのだろうが、アイツが寝ている間にこっそりと出て、起きる前に戻って来れば問題無いだろう。
アイツが見ていないことは、なかったことと同じだ。
それに……馨はプレゼントを欲しがっていた。
帰ってきて起きた時の保険として、適当な物を買って与えてやれば、誤魔化せるだろ。
そうだ。アイツはもう誕生日だ。誕生日プレゼントとして渡せば冥土の土産(用法が合っているかは知らねえ)にでもなる。
……そうか。もうすぐ死ぬのか。
あの世に持って行くのに、適当な物で良いのか?
「……いや。俺には関係ねェだろ。そんなこと」
何浸ってんだ。俺らしくも無い。
何だこの感情。これが父性か?
「……気持ち悪ィ」
俺はその汚い感情を振り落とすかのよう、大きく舌打ちした。
思いのほか響いてしまったので、馨を起こしたのではないかとベッドの方を振り返るが……爆睡しているようだ。
……というか、そんな無駄な時間が惜しい。アイツはいつ目覚めるか分からないのだから。
俺はそっと部屋を出る。
後ろ手に閉めた扉が、やけに大きな音を立てた気がする。……まあ、大丈夫だろ。




