5-1
「……誕生日まで、あと13日……」
ホテルに飾られていたカレンダーを見て、わたしはぽつりと呟く。
昨日は黎一郎に最初で最後の海に連れていって貰ったのだが、その際に黎一郎が足から大量に出血。それでも海近辺に居られないと更に走ったので、彼の足はそれはまあ大変なことになってしまっていた。
本当は1週間くらい休ませた方が良いのでは……と思ったが、彼が拒否した。
「……お前、もうあんまり長くないんだろ。そんなに休んでられるか。それに、一箇所に留まり続けるのは良くねェ」
彼の言うことも一理あるし、何より彼は頑固だ。それならと1日だけでもしっかりと休ませることにしたのだ。
「あァ?3時間で平気だ」
……と、最初は拒否されたけれど。
「ダメ。これ以上はわたしも譲れない。私だってくたくたなの。休みたいの」
「お前は俺が運んでやるから良いだろ」
「たまにはベッドで休まないと早死にしちゃう」
そう言うと、流石に了承してくれたのだ。もはや半分脅迫である。
まあ、1日ゆっくりとベッドで眠りたい……と思ったのも嘘ではない。
「ってえ!!もう良いだろ!」
「ダメ。ちゃんと消毒しないと」
……しかし、まさか大の大人の足の消毒にこれほどまで手こずるとは思わなかった。
「なァ!痛いンだよ!」
「痛いのは効いてる証拠だから。我慢して。足が腐り落ちてもいいの?」
わたしの言葉に彼はさすがに怖くなったのか、少しだけ大人しくなった(それでもまだ痛い痛いと喚いていたが)
「はい。おしまい」
「終わりか?もう痛く無いんだよなァ?」
「……もう。わたしより大人なのに情けないったら……」
終わったと同時に動き出そうとするので、わたしは無理矢理ベッドに押し倒してやる。
「……ッに、すんだお前!」
「ダメ。今日はずっとねんねする日です」
「はァ!?」
「ほんとは1週間くらい安静にさせたいところを、黎一郎のワガママを聞いてあげてるの。だから、今日は動いちゃダメ。足を治さないと」
「薬塗ってんだから良いだろ!」
「薬を過信しないで。これ以上悪化させる気?」
「だから大丈夫だって言っ────」
「ねえ、黎一郎」
「いい加減にしないとわたし……」
「…………怒るよ」
わたしなりにドスを効かせてみたら、意外にも効果があったらしい。黎一郎は舌打ちをしつつも、素直にベッドに寝転がってくれた。
「ふふ。いいこいいこ」
「おいコラガキ扱いすンな。お前の方がガキだろうが」
「年齢的にはね。黎一郎、字書ける?」
「書け……っ、ねえ、けど……」
「計算は?出来る?」
「うるせえ!とっとと寝やがれ!!」
ふふん。字も書けない簡単な計算も出来ない黎一郎よりはわたしの方が精神的には大人だ。
黎一郎が不貞寝したのを確認し、わたしもベッドに寝転がった。
そして、ベッドのあまりの気持ち良さに一瞬で眠りに落ちてしまった……。




