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「おい。本当の話か」
「こんなところで立ち止まってたら目立つよ」
「……チッ」
わたしの指摘に彼は舌打ちをして、身を隠せるような場所に向かうことにした。
「泊まれる場所に行くぞ」
「……大丈夫なの?あなた、顔割れたんじゃ……」
「普通じゃねェホテルに行くから問題ねェよ」
「普通じゃない……?」
わたしの問いには答えてくれず、彼はわたしを抱き抱えたまま、場所移動をするのであった。
「……ここ?」
見た目はそんなに普通じゃないようには、見えない。でもわたしたちみたいなお尋ね者が使えるということは、やはり「普通じゃない」のだろう。
部屋に入るなり、ベッドの上に投げ飛ばされる。痛……くはないけれど、柔らかいし。でも強引だ。
「何するの」
「お前こそ、何言ってやがる」
「わたしも、殺人鬼だって話……?」
「それ以外に話すことがあるかよ」
彼は気だるげに語尾を伸ばす癖さえも忘れてしまっているほど、本気でわたしに向き合っている。
だからわたしが彼に嘘をつく理由は無かった。
「美奈子のところにいた男を、殺したの」
「あ?」
「ああ、名前言っても分からないか。この前果物店にわたし、お世話になってたでしょ」
「……あァ。お前が見つかって飛び降りて、俺が助けてやったところか」
「そこの店主の男の人を殺したの」
「何でそんなクズを……」
黎一郎は美奈子のことをよく知らない。でもあの男が金の為にわたしの家へ連絡を入れたことは知っているので、率直にクズだと述べた。
「クズだから殺したの。あの男、店主ってのも名前だけで、全部美奈子に……奥さんに仕事押し付けてた」
「そんなの俺らにゃ関係ねェだろ。何で殺した」
「ナイフで殺したの」
「そういうことを聞いてるんじゃねェや。どうして殺したって理由を聞いてる」
……どうして黎一郎は理解してくれないのだろうか。彼だって殺人鬼の筈。
どういう経緯で、どうやって殺したのかは知らないけれど、それでも人殺しという点は同じなのだから、彼ならばわたしの気持ちを分かってくれると思っていたのに。
「お世話になったから」
「はァ……?」
「美奈子にプレゼントをしたかったの」
「……っ、馬鹿野郎!!」
────パチン
黎一郎が、わたしの頬をぶった。
正直、かなり手加減をしてくれた音だと思う。それでも頬が……ジンジンと痛み出した。
「殺しがプレゼントだと!?いい加減にしろ!何馬鹿なことやってんだテメェは!!」
頬が、痛い。
それでもわたしは黎一郎に歯向かってやった。だって、彼の怒りがわたしには理解出来ない。
「……何それ。黎一郎にだけは殺しのことを咎められたくなかった。あなただって、わたしとおんなじ」
「─────ッ!!」
もう1発、もう片方の頬を引っぱたかれた。今度は先程よりも力が強かったように思える。
「……痛いよ。黎一郎」
「何で、そんな取り返しのつかねェことを……」
「……どうせ死ぬのだから、問題無いよ。でも、これでわたしも黎一郎と一緒。だから……わたしのこと、捨てないで……」
わたしは目に涙を浮かべて訴える。黎一郎に捨てられたら、わたしは間違いなく家に連れ戻される。もうわたしには、彼しか頼れる人はいないのだ。
その為なら、どんな手だって使ってやるつもりでいた。
叩かれた頬が、熱くなるのを感じた。




