表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最愛なる殺人鬼さまへ  作者: 有氏ゆず
第二話 殺人鬼の名前
13/83

2-5





何処まで乗れば良いか分からなくて、とりあえず目についた駅で降りることにした。


「……凄かったなァ、電車」

「わたしは黎一郎が心配であんまり楽しめなかった」

「テメェ」


そうは言うけれど、実際は楽しかった。

そもそも今までが部屋でだけ過ごしていたから、外の出来事全てが楽しいと思える。


でも、それでも……そろそろ、眠い。




「……黎一郎」

「ン、どうしたァ」

「眠いの。抱っこして」

「はァ?」

「起きたら、好きなごはん……食べさせてあげるから……」

「俺はペットかよ」

「わたしに飼われてるんだから、そうでしょ……」


わたしが脱走したのは夜。その日に眠れた訳は無いから、私は丸一日起きていたことになるのだ。

11歳が24時間起きっぱなしで、歩きっぱなしなのだから、少しは気遣って欲しい。……あなたの体力が異常なのだから。


というか黎一郎は何で疲れないのか。

あなた、わたしを抱えて全速力で走ったりしたよね?体力どうなってるの……?




「おい、お嬢。ここで寝るな。……チッ、」


何か今は色々考えるのも疲れちゃった……。


「抱っこ……黎一郎はわたしの、ペットだもん……言うこと聞いて……」

「……はッ。散々俺にお説教してきたから中身は大人だと思ったぜ」

「……ばか。そんなわけ、ない……」

「見つからねェように適当に移動しておくから、寝てなァ。起きたら飯だからな」

「うん……ごめん……ね……」


続けてありがとう、と口にする前にわたしの眠気が限界を突破し、そのままわたしは意識を手放した……。

























「……ごめん、か」




「いいとこのお嬢様が、ホームレスに言う台詞だとは思えねえなァ」


黎一郎は11歳にしては小さ過ぎる小さなお嬢様を抱えながら、ひとり呟く。

馨は追っ手を警戒して、ずっと起きていた。そしてようやく安全だと気が抜けてしまい、一気に眠気が襲ってきたようだ。


(……人殺しである自分に抱かれて安心するなんて、警戒心が無さすぎるにも程があるんだけどよ)




「……黎一郎、か」


与えられた自分の名を満足気に呟く。


(……名前をくれた礼だ。ゆっくり休みなァ、お嬢様)





しかしこの直後、黎一郎は改札の出方が分からず駅員と揉め、寝たばかりの馨を起こしてしまうのだった。




第三話に続く……




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ