表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怨霊転生  作者: 藤台団二
2/2

2・対決

「なに?」


「…」


「どうしたの?さみしかったら歩花とおはなしする?」


小さな影はうなづいた。


やがて、影の数が増え歩花という少女を取り囲んでいた。


少女はその影たちに愛らしい笑みを振り撒き、影たちに小さな手を広げている。


やがて影たちは光の粒となりきらきらと空へと舞い上がり消えていった。


少女は満面の笑みで空を仰ぎ手を振った。






私は雪村歩花あゆか20歳 某女子大2年生です。


大学に入学してからは マンションを借りて一人暮らしをしています。


小さい頃はずいぶん周りの子供と違っていたそうです。


幼稚園に通う様になってからでしょうか


私としては友達が何人もいたと思っていたのですが


周りから見れば自分は一人で誰も居ないのに、さも誰かと話しているように振る舞い遊んでいる子供だったのです。


小学生になって、私が他と違う目で見られているのだと自覚し気を付けるようになりました。


けれどそんな私ですが、仲間外れにされたり虐められたりする事は無かったんです。


誰にでも好意を持ってもらえる、親しくして貰える、なつかれるっていうと怒られてしまうかもしれないけれど、そんな印象なんです。


そしてそれは


それ以外でも…


おばあちゃんから言われました。




「それがお前の力なんだよ」




「…ちから?」


「きっと影響を強く受けついたんだろうね.」


おばあちゃんは、ご先祖様の中に時々現れるって言い伝えがあると、おばあちゃんもそうなのだと言っていました。


この力がなぜ自分の身に訪れたのかは分からないけど


見えないものが見える


聴こえないものが聴こえる


見えないものと話が出来る


そして、良いものと悪いものを見極められる


そしてその… モノ達をどこかに送ることができる


そのモノ達が望めばだけど…


いつかその力を本当に大事な事に使うときが来ると言われました。


子供の頃、おばあちゃんはそう私に言っていました。




小学校高学年になると、周りには気づかれないようにうまくカモフラージュするのだけれど、私の中の力は増しているようでした。


初めてその力の 本当の使い方を知ったのは中学生の頃でした。


私にだけ見えるある少女 …


私は周りに誰もいないことを確認しつつ、その少女に話しかけて、少女は泣いていたお母さんお父さんとはぐれたと泣いていました。


少女の周りには 深い闇が包み込むように近寄ってきているのを感じました 。


私は少女を守ろうとその力を使い、その闇を退け、少女は私の手の中に抱かれながら 光の粒となって空中へと舞い上がっていったんです。


それが良いことなのか当時の私には分からないかった。


それからも、いくつかそういう出来事があり、ある時私は自分の力で光の粒が空に舞い上がったその行き先を知りたくなって、突き止めるには どうすればいいのだろう思い悩んでいた。


誰かに聞きたくても、おばあちゃんはその頃はもう亡くなっていました。


高校生になってさらに私の力が大きくなった事を強く感じた時、自分で手に胸を当てて 目をつぶり念じてみました。


そして私の周りは光に包まれ、ゆっくり目を開けると、 何かぼんやりと光を纏った人影らしいものが遠くに見えていました。


「…教えてください、あなたは神様ですか?」


その人影はわずかに首を横に振ったように見えたけど、私に向かって手を差し伸べ、微笑んでいるように感じました。


それはとても暖かく


それはとても優しい


そして懐かしい存在だった 。


それ以来力を使うのに悩むことは無くなりました。


言葉ではうまく言えないけれど、あらゆる理の中で最善のものだと、決して間違ってはいないと確信を持てるようになったんです。




ただ私の力ではどうしようもできない場所があった。


それは神社仏閣です。


意外なことに神社仏閣に立ち入ると圧迫感で息ができなくなるの。


そういう場所がほとんどです。


そこには、なにやら闇が渦巻いているようでした。


どうしてなのだろう人々が願い祈る神聖な場所が私には全く違う様子を見せて いる 。


初めはどういうことを意味しているのかは私には分からなかった。


ただそれも高校を卒業する頃、私の力が更に強くなり、その実像が見えるようになってきたのだ。


それは魑魅魍魎が渦巻く姿だった。


主には動物の霊である、植物も含まれているようだ。


様々な動物が合体しているように見える。


例えて言えばキメラである。


霊魂が入り混じっているのである。


私はそれらの 思念を 読み取れるようになってきた。


人間に住処を奪われて虐待され、死に追いやられたもの、または食用とされていた家畜でした。


それらを束ねているのは主に野生の肉食獣であった霊でした。


中でも飛びぬけて長寿か、知能が比較的高い種に限られる。


明確な意志はわからなかったが人間に対する負の思いが抱かれているのを感じ取れる。


そして、その中には少数だが人間の霊も取り込まれていました。


さまよっている自縛霊が、その魑魅魍魎の集団に取り込まれたのでしょう。


そして恐ろしいのはその魑魅魍魎の塊は、多くの人々が祈り願う場所により強く止まっていることです。


神聖な場所で祈りを捧げている人々は無私の願いをする人もいるが、殆どが自分自身に関わる願いです。


実はその願いは魑魅魍魎との契約に等しいんです。


魂とその魑魅魍魎とつながり、契約するものなんです。


そして、最終的に人々はその魑魅魍魎たちに魂が、存在が、食われるという恐ろしい契約なのです。


今も人々はそれに気づかず、日々祈りを捧げています。


それこそ神仏に祈りを捧げるという神聖な行為であると信じて…


そのままにしておくことはできないと思いました。


かといって直接人々にそれを話しても、世間の常識、神社仏閣その他の人が大勢集まる場所が、魑魅魍魎の餌場と化していることを話したとしても受け入れられるはずがない。


私はその怨霊ともいえる存在に対抗し得る力までは持てずにいました。


そんな時にあの子猫の霊に出会ったんです。


子猫は古い稲荷神社の主とも言える巨大な霊力を持つ塊によって操られていて、神社に人をおびき寄せる役を担っていました。






でも私はその怨霊から離れている子猫を引き離すことに成功したんです。


子猫が受けている役目が功を奏したのでしょう、神社から離れて人を呼び込むということはある程度の神社から距離があり、等しく力が薄れるということがあったと思います。


そして子猫自体もそこから離れたいという意志を持っていました。


私はそれ以来、子猫のような存在がまた現れたのならそこから救い出してあげようと、時々その神社の付近に行っては様子を見るのが日課となっていました。




そんな時私の父が倒れたのです。




『歩花ちゃんかい?』


『おばさん、どうして?』


『ごめんね突然、歩花ちゃんのお父さんの携帯に歩花ちゃんの番号見つけたもんだから』


それは父親の携帯から掛かってきたものだった。


『さっきお父さんが救急車で運ばれて今病院にいるのよ』




それが神社に住まう魑魅魍魎の塊の仕業であることに気づくのに時間はかかりませんでした。


改めて相手の力の強大さを思い知らされました。


父は普通の人間で何の能力も持たないのです。


あの魑魅魍魎はどれだけ離れていても力を使えると、まさかそこまでとは思っていませんでした。


子猫を引き離したことで私の存在を敵視するようになったのでしょう。


わたしは悩みましたが、マンションの部屋を引き払い実家に戻り父の看病をすることにしたんです。


父の周りに結界を張り、父のそばから離れずにいることで精一杯でした。


それでも父を守り抜けるか定かではありませんでした。




(今の私の力じゃ、まだあの怨霊にはかなわない)




父の看病で私の力が分散し弱まった為、子猫すらもまた囚われてしまいました。




絶望と自分の力の弱さに落ち込む毎日でしたが、それでも父の様態は徐々に回復し、私に思いもよらない変化が起こりました。


自分の力がさらに成長しているのを身をもって感じたんです。


父への攻撃で、より守るという責任感と、邪悪なものがいかに危険かという認識を強め、立ち向かうという意思が力を強固なものにしたのだと思います。




私はそれによって別次元のものへと変貌していきました。




より霊の実態が鮮明になり、霊の過去もさかのぼりビジョンが瞬時に入ってくるようになり、自分の意思が 自分の意思が同時に複数の対象にコンタクトできるようになり、また距離が離れていても同時に浄化が可能になっていたのです。


自分が作る結界でも、何重にも重ねて張ることができ、また場所を限定せずに複数同時に張ることができるようになりました。


幽体離脱のように自分の意識を自在に遠くへ飛ばすことも可能になったんです。


そしてその力は物理的にも 同等の効力を持つようになりました。


まさに超能力者のように瞬間移動、念動力、重力操作、 時間操作などか完全に時間を停止できなくても限りなく遅く、そして早くすることが可能でした。






今であれば以前のカはあまりにもかよわいものに感


今の自分ならあの魑魅魍魎にも対抗できる自信もついていきました。


父に対する卑劣で理不尽な攻撃が許せないのと、何より、あのままにしていると、どれだけの人が被害を受け不幸になっていくか計り知れません。




「えっ」




そんなある日、テレビで見たニュースで知ったんです 。


そのニュースはある若い男性の不審死についてのものでした。


他殺もあり得るということで警察が捜査をしているという内容でした。


でも私が本当に驚いたのはその男性の亡くなった部屋が、私の以前いたマンションの部屋だったということです。


男性の死に方はかなり異常な死に方だったようでニュースではセンセーショナルに報道されていました。


私にはあの子猫と稲荷神社の関わりがすぐに頭に浮かびました。


もしかしてそうであればあの子猫がその男性をあの魑魅魍魎に引き寄せたのであれば、このニュースの人は私が懸念していた被害者ということになります。


あの時はどうしようもできなかった、でも私には後悔の念が改めて湧いてきたのです。


あの子猫は今も彷徨って誰かをあの魑魅魍魎の元に引き寄せているのでしょう。


私は父の周辺に何重にもなる結界を施し、私の分身ともいえる残留思念を残し、 思い切って以前住んでいた事件現場となるマンションに向かいました 。


今の私は瞬間移動が可能となっているため 瞬時にそのマンションの前に立ちました。


するとまだ報道関係者やカメラマンさらに警察官が多数おりパトカーも数台停まっていました人だかりもできていてとても近寄れる状態ではありませんでした。


そして、まだあの稲荷神社にはまだ足を向ける気持ちにはなれませんでした。


それから数ヶ月が過ぎました。


さすがに以前のような人だかりは無く、あの事件がさも無かったかのように静まり返っていました。


でも、 あの部屋の両隣を含め近くの部屋の表札が外されている部屋が多く、大分空き部屋が増えているみたいでした。


「あれどこかで見たような顔…あそうだ、たしか雪村さん…?」


「…管理人さんお久しぶりです」


「 あーやっぱりそうだ、でもどうして? もしかしてニュースを見て来たんですか?」


「…ええ、いえ…ちょっと気になって」


「やっぱり知ってたんだ、無理もないけどあれだけ大きなニュースになったんだしね、でも私がこう言っちゃなんだけどあなたみたいな若い子がこんなところに来ちゃだめだよ」


「はい、心配かけてごめんなさい」


「いや謝らなくてもいいんだけどね雪村さんだって気持ちが悪いでしょう正直言って、見ての通り随分周りに住んでいた人たちも引っ越しちゃって空き室が増えちゃったよ。。」


「…そうみたいですね」


「まあ、事件当時に比べれば大分静かになったけどねぇ」


「あのう亡くなった方って…?」


「えっ、雪村さんが意外だな、まあ何回も聞かれたことだからいいけどね、ほんとからっとした明るい青年だったよ、気さくでねぇ、馬鹿っぽいってわけじゃないんだけど、いや少しそうだったかね、底が抜けてんじゃないかっていう明るさって言うか、いい人でしたよ」


私の今の能力でも、なぜか何の痕跡も見当たらなかったので聞いてみたが、結局当たり障りのないよく聞くいい人でしたとしか聞けないのかと思いました。


「それがねぇ、あんなことになっちゃって、絶対悩みごとのある子じゃないし、絶対誰かに恨まれるって事は無いって私には解るんだよね、ほんと!ほんとだよ」


マンションを離れ、わたしは、そのまますぐ家に戻る気にもなれず、駅の方に歩いて行くと、さっと商店街の路地の細い方に影が走ったように感じ、直感的にあの子猫だと思いが浮かびました。


「あの子…」




そのうちに世間からはあの事件が忘れ去られていきました。


私の父の容態がかなり良くなり安心していた頃です、またあのマンションに足を運んでみるとあの部屋に誰かが住んでいる気配がしていたのです。


窓にはカーテンがつけられ、ベランダに作業着らしい洗濯物が干してありました。


あの部屋に住人が…忘れ去られた事件でもかなり大きく取り上げていたのだから事故物件だと知らないはずはないだろうと思いました。


(どんな人なんだろう?)


それから何回か足を運びましたがその度にあの部屋の住人は留守のようでした。


そして大学のサークルで遅くなり、夕方にマンションに向かうとその部屋には明かりが灯っていたので私は思い切って部屋の前まで行って玄関のチャイムを押したんです。


30代前半でしょうか男性が出てきました、見知らぬ私に最初はぎこちなかったのですけど、彼は子猫のことを知っていたのです。


もう会えないと思っていたあの子猫にまた会えるかもしれないという安堵感と、この男性がまとっている雰囲気に 軽い衝撃を覚えました。


この男性は他の誰よりも何かが違う…


私には人の悪意や善意などが接していると分かるようになるのです。


これは本人すら気付かない本質的なものです。


私にとってはリアルに視覚として見えるのです。


オーラとは違いレントゲン写真のように透けて見えるんです。


それは悪魔のようであったり天使のようであったりするんですけど、この人は何も透けて見えませんでした。


これも私の持っている力のひとつです。


この男性は他の人とは全く違う別の雰囲気をまとっていました。


普通の人は外からの悪意に晒されています。


他に自分自身の内から沸き起こる憎悪、恨み、呪いを秘めています。


この男性からは外側からの悪意に覆われているのは他の人と同じでも,,自分自身の内から湧き出る悪意のようなものが一切感じられなかったのです。




人間というのは弱いものです。




悪いとわかっていても人を憎み、人を呪い、そしてかなり多くの人が自分を憎んでいます。


この男性は特別な力を感じないけど、天使のような慈しみや善意も感じないし…だからと言って内から湧き出る憎しみや恨みなどというものが一切ないのです。


こんな人と出会うのは初めてでした。


私自身は内から悪意が湧き出る事はないし、私が持っている特殊な力が悪意を寄せ付けないバリアになっているのだと思います。


この男性はそういう特殊なものを持ち合わせていないのに、悪い意味ではなく何も無いというのが奇跡的なことのように私には思えました 。


何故か、この人と接しているとホッとする自分がいました。




(あの時と似ている)




ふと、私の力で光の粒になって消えていった霊魂のその先に感じた人影のような存在を思い浮かべていたんです。


しかしあの子猫がここに来ているということは あの魑魅魍魎に狙われているのかもしれない。


そうなればこの男性に自分を守るほどの力があるとは到底思えないのです。


私は出来る限りこの男性を守り、そしてあの子猫もできるならば救えればと思いました。


何度か男性と連絡を取り、男性のところに行くにしたがってこの人といるとより安心感を感じるようになりました。


しかし決して油断していたわけではないのに父の容態がまた突然急変したのでした。


父の容態はかなり良くなっていましたけど、あの【怨霊】の力が食い込んだ牙のように父の中に潜んでいたのでしょう。


私がまた子猫に近づいていることや標的としているかもしれないあの男性に接近していることも感づいたのかもしれません。


再び私に対して私の弱い部分 ,つまり普通の人間である父を攻撃されていることは明らかでした。


私は以前より、強い力を持ったというのに…その力で何重にも張り巡らした結界もやすやすと打ち砕かれ、


やはり私の力はまだまだ あの怨霊には遠く及ばないことを認めるしかありませんでした。


私はそれから大学を休み、今私にできる最大級の結界を張り、ただ一心に 集中しました。




なのに…




父は亡くなってしまいました。




敗北感と 失望感…




何よりただ一人の肉親である父親を失った悲しみから立ち直れそうもありませんでした。




すぐにでも、あの怨霊と立ち向かわなければいけない。




そうしなければすぐ目の前に犠牲になる人がいる。




早く立ち上がらなければいけない。




「…歩花」


「…!?」


「おばあちゃん…なの…?」


「かわいそうに…歩花」


「おばあちゃん…」


私はただただ泣き縋るように宙に手を伸ばしました。


これは夢なんだろうか、私は父の遺灰を抱き抱えたまま泣き疲れて眠ってしまっていました。


その私の肩にすでに亡くなっていた祖母の手がそっと乗せられていました。




「夢じゃないよ」




振り返ると、子供の頃から大好きだった祖母の笑顔がそこにありました。


私は子供のように泣きじゃくりながら祖母の胸に顔を埋めてしがみ付きました。


「どうして此処に?」




人は死んで浄化されれば、この世に舞い戻ることはない。


祖母はこの世に彷徨う浮遊霊になるはずはなかった。


世界の理を一番理解していたのは力を持っていた祖母なのだから


「心配ないよ、ちゃんとお願いして此処にいるんだから、ちょっと無理しちゃったけど許してもらえたからね」


と悪戯っぽく笑っていました。


「歩花のお父さんは大丈夫、ちゃんと行くべきところに行っているよ、歩花のせいじゃない、寿命だったんだよ」


私は聞き返そうとしたが、祖母が口にそっと手を添えて頭を横に振ったので、私は頷きました。




「さあ、しっかりおし、昔、歩花に話したこと、その時が来たんだよ」


「ハイ、だけど…私の力じゃ何も出来なかったの」


「知ってるよ、なんたって千年以上この世に居座っている化け物だからねぇ」


「でもどうしてあんなのが存在するの」


「あの化け物はねぇ、私たち人間が作ったとも言えるのさ」




私は魑魅魍魎の塊を具体的に認識できていませんでした。


でも、それがなぜか頭の中に形が鮮明に浮かび上がってきたのです。




その正体は、九尾の狐…




1000年以上前から言い伝えられるときには神獣、そして妖怪と言われる存在


私には鮮明にビジョンが浮かび上がり、その姿は、中央にその九本の尾を広げ、後ろには禍々しい木の根で檻のようになった囲いの中に様々な動物の霊が、よだれを垂らし牙をむき出し隙間から首を突き出しうごめいていました。


その囲いを尾でしっかりと包み込んでいるのです。いや鷲掴みにしていると言ったほうが合っています。


これは悪しきモノ、怨霊としか言いようがありませんでした。






「この世界には三つの行いしか出来ないような仕組みに成っている。[善]、[罪]、[悪]さ」


―善は自分がされて嫌なことを相手に行わないこと―


―罪はその嫌な事を相手に、時には自分に行う事―


ー悪は罪を行なって喜ぶ事―


「それって…」


「わかったかい、この世界では生きて行く為には他のものを食べなきゃいけない、誰も自分が食べられる事を嫌じゃないものは居ないよ、だから生きているもので罪を犯さずに生きられる生き物なんていないのさ、せいぜい悪を行わないように自分を戒めながら生きるだけさ」


「動物は殆ど悪を行わない。生きるために食べる罪だけ、でも人間は罪だけに収まらない」


「誰だって何を食べるでも、おいしく食べたいだろう?煮たり、焼いたり、甘くしたり、しょっぱくしたり、美味しいから喜ぶ」


「…美味しいから生きる為以上に食べるのさ」


「人間はどの生き物より悪事をしているっていう事?」


「認めたくはないけどね」


「だからあの怨霊は、その人間に報いを受けさせるために存在しているの?」


おばあちゃんは目を瞑り、何も答えてくれなかった。


「おばあちゃん…私それでも」


「行くのかい」


「はい、どうしても…行かなきゃいけない…助けなきゃ」


おばあちゃんは私に言いました。


そのために私の前に来たのだと、あの怨霊を九尾の狐を倒せないかもしれないけれど、せめてあの人と子猫を助け出すことができればと思いました。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ