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追放・獣人×女装ショタ  作者: 善信
第七章 魔界進行作戦
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11 いっそ、こうしてみたら

 怒りのオーラを撒き散らしながら、ギストルナーダは僕達に迫る!

 だけど、その攻撃が繰り出される寸前に、飛び込んでくる影があった!


「うおぉぉぉっ!『反撃の盾撃(カウンター・バッシュ)』!」


 ギストルナーダの攻撃を受け止め、その威力を乗せたグリウスさんのカウンターが炸裂する!

 さらに、体勢を崩した大魔王に向かったルキスさんの手から、鋼線の光が放たれ、奴を拘束した!


「対大型魔獣用に、聖なる魔力が込められたブレードワイヤー……下手に動くと、スパスパ斬れるわよ!」

「ちっ……小賢しい真似を!」

 グリウスさんとルキスさんの連携に、ギストルナーダの足が止まる!

 しかし、噴き上がる大魔王の闘気は、徐々にワイヤーの拘束を弛めていった!


「この程度の小細工なんぞ、足止めにしかならんぞ!」

「ああ、足止めで十分だ!」

「トドメは、あいつらに任せるからね!」

「なにっ!?」


 そうやって、二人が足止めをしている間に、僕達の所へやって来たヴァイエルさんが、回復魔法を発動させた!

癒しの光(リカヴァリィ)!」

 彼女の両手から降り注ぐ暖かな光に包まれると、エルビオさんとの殴り合いの傷がみるみるうちに癒されていく。

「ヴァイエル……それにグリウス、ルキスも……さっきはすまなかった……」

 癒しの光に当てられながら、エルビオさんは仲間達に頭を下げる。


「フッ、なんかよくわからん方向には行ったが、丸く納まったようで何よりだ」

「色々と溜め込んでいた物を吐き出せたようですが、スッキリしましたか?」

「つーか、闇堕ちしてやることが愚痴を吐くだけって辺りが、エルビオらしいわね」

 勇者が暗黒面に堕ちたという重大な危機だったというのに、グリウスさん達は結果オーライと事も無げに笑う。

 それは、エルビオさんに余計な後ろめたさを感じさせないための、彼らなりの優しさなんだろう。

「みんな……ありがとう」

 そんな一行の想いを察したエルビオさんも、多くは語らず一言だけ礼を言うと、軽く頭を下げた。


「勇者一行か……いいパーティだね」

「ええ」

 ディセルさんの言葉に、僕も頷く。

 そして、一時ではあるけれど彼らのチームに在籍できた事を、誇りに思った。


「まぁ、アタシ的にはヴァイエルとの関係をバラされたおかげで、今後は堂々とイチャつけるけどさ」

「も、もう!ルキスさんたら……♥」

「あ、ついでと言っちゃなんだが、誰か優しくて家庭的な獣人族の女の子を紹介してくれませんかね、ディセルさん?」

 先程、エルビオさんに色々な性癖や秘密を暴露されたグリウスさん達は、ここぞとばかりに好き勝手な事を言う。

 これも、エルビオさんをおもかんばっての事……なんだよね?


「この私を前に、よくもそこまでふざけられるものだ!」

「!?」

 一瞬、空気が緩んだ僕達に、拘束するワイヤーを引きちぎったギストルナーダの怒号が叩きつけられる!


「勇者が復帰しただけで、もう勝ったつもりか!」

「へっ!少なくとも、リーチはかかってるな!」

「そうよ!アンタ、聖剣の攻撃でなら死ぬんでしょ!」

 大魔王と対峙しながら、グリウスさんとルキスさんは、挑発するように煽っていく。

 しかし、激高するかと思われていたギストルナーダは、小さく鼻を鳴らした。


「確かに、勇者の聖剣でなら、私にトドメは刺せよう……だが、致命の一撃(そんなもの)は食らわなければいいだけの事だ!」

 そう吼えたと同時に、突然この部屋の床全体を覆うような、巨大魔法陣が展開する!

 詠唱もなしに、これだけの規模の魔法を!?

 いや、この部屋全体が、すでに奴の罠だったのか!


「まとめてくたばれ!『極大地走雷撃魔法(ヘル・ヴォルテクス)』!」


 大魔王の咆哮と共に魔法陣が発動し、地面から天を突くように伸びた何十本もの雷の槍が、室内すべてを覆い尽くす!

 激しい轟音と、視界をすべて白く塗りつぶす閃光が、死と破壊の嵐となって荒れ狂った!

 そして、長い魔法が終わりを告げた時……ギストルナーダ以外に命ある者は残されていない……ハズだった!


「なっ!?」

 恐るべき魔法の効果が切れた後、ほぼ無傷で生存していた僕達の姿に、さすがの大魔王も驚愕の声をあげる!

「ば、馬鹿なっ!なぜ、生きているっ!?」

「それは、みんなに対してボクが防御魔法を使っていたからさ!」

 ドヤっとした顔で答える僕を憎々しげに睨みながら、ギストルナーダは吼える!


「それこそ不可能だっ!わたしの魔法が発動するあの一瞬で、防御魔法などが間に合うわけがない!」

「そうさ……だから、お前が動き出した時、正確にはグリウスさん達が足止めしてくれた時からこっそり詠唱して、発動させたんだ!」

「な、なんだと……」

「いままで散々裏で動いてきたお前が、怒りに任せて真正面から接近戦を挑むなんて、おかしいと思っていたからね。案の定、あんな恐ろしい魔法が仕掛けてあった……」

 実際、防御魔法が間に合わなければ、僕達は全員消し炭みたいになっていただろう。

 その辺は、さすが大魔王といったところである。


「おのれぇ!ならば、これはどうだぁ!」

 高速で詠唱を始めた大魔王の前に、再び魔法陣が展開していく!

 さっきの魔法みたいに瞬間発動とはいかないまでも、また馬鹿げた威力の魔法を使うつもりだろう。

 だがっ!


「遅い」

「っ!?」

 詠唱していたギストルナーダの懐に、神速で飛び込んでいたのは、完全獣人化して美しい獣となったディセルさん!

 一条の光となって抜き放たれた剣閃が、大魔王の魔力障壁と肉体を深々と斬り裂いた!


「ごはっ!」

 血を吐き、グラリとよろめきながらも、ギストルナーダは詠唱を中断していない!

 なんて根性……いや大魔王の意地か?

 だけど、僕の魔法もすでに完成しているっ!


無属性螺旋貫通魔法(ゼロ・マグナム)!」


 ギストルナーダに向けた僕の手から放たれた、一筋の閃光!

 極限まで魔力を圧縮し、さらに回転を加える事で、大魔王の分厚い魔法障壁を破れるハズ!

 僕の狙い通り、放たれた魔法は完成しかけた魔法陣と魔力障壁を貫き、ギストルナーダの心臓付近を穿った!


「ごぼっ……」

 普通なら、これで致命傷……いや、即死していてもおかしくないだろう。

 しかし、奴は聖剣の一撃でしか倒すことができない!

 だから、トドメは任せました!


「おぉぉぉぉっ!」

 気合いの咆哮をあげ、聖剣を手にしたエルビオさんが走る!

 そして、大上段に振りかぶった剣を全身全霊でもって振り下ろすと、ギストルナーダの脳天から股間までを、真っ二つに両断した!


「滅びろ、大魔王!」

「がっ……ああ……わ、私が……負ける……?」

 僕達の攻撃と違い、致命の一撃となる聖剣のダメージに、ギストルナーダの口から死を自覚するような言葉が漏れる。

「こ、こんな……馬鹿な……な、なぜだ……」

「お前の敗因……それは、人間の心を甘く見た事だ!」

「ひ、人の心……いや、そんな……曖昧なものに……負けるはずが……たぶん、あれだ……朝御飯を……ちゃんと食べてなかったから……もしくは……今朝の星占いが……最下位だったから……」

「そんなわけがあるか!」

 ツッコミじみたエルビオさんの追加の一撃入ると、ギストルナーダは限界に達したのか、足元から灰になって崩れていく。


「く、くくく……これですべてが……終わったと思うな……。邪神様がおられる限り……いずれ……第二、第三の、大魔王……が……」

 そんな不吉な言葉を残し、大魔王ギストルナーダは完全に灰となって消滅した。


「終わった……のか?」

 誰がともなく漏らしたそんな呟きが、静寂が支配していた部屋に響く。

 一瞬、「まだ終わらんよ!」とか言って、新しい敵でも出てくるんじゃないかと警戒していたけど、どうやらそんな事もないようだ。


「う……うおぉぉおっ!」

 聖剣を天にかざし、エルビオさんが勝利の雄叫びをあげる!

 それにつられて、僕達も腹の底から勝鬨の声をあげた!

「よっしゃあ!勝ったぞぉ!」

「これで、魔族との戦争もおわりよぉ!」

「ようやく……平和が戻って来るですね!」

 各々が、胸に込み上げる想いを口にする。

 そして、僕とディセルさんも感極まって抱き締めあいながら、勝利を祝った!


「やりました、ディセルさん!」

「ああ、私達の勝利だ!」

 再び、固く抱き締めあう僕とディセルさん。

 そうして昂った気持ちに任せて、キスを交わそうとしていると、ニュッと横からエルビオさんが顔を覗かせた。


「二人だけで、勝手に盛り上がらないでほしいね。僕も交ぜてくれなきゃ」

 そう言って、僕の背後から胸を押し付けるようにして、エルビオさんがしがみついてくる!

「こら!ここは、正妻である私が満足するまでイチャついてからでしょう!」

「ふふん。確かに、二番めに甘んじるとは言ったけど、いままでアムールとイチャつけていなかった分くらいは、補填させてもらいたいね」

 僕を挟んだまま、目は笑ってないのに、顔だけ笑みを浮かべた二人がバチバチと火花を散らす!

 こ、怖い……。

 そんな僕達を、グリウスさん達は微妙な笑みを浮かべながら、生暖かく見守っていてくれた。


            ◆


「……それにしても、これから帰還して国のお偉いさんに報告するに、エルビオの事をどう話したもんかな……」

 少し時間が経ち、冷静になったグリウスさん達は、僕達も交えて、今後の事で話し合っていた。

「まさか馬鹿正直に『勇者は女になって、好きになった女装少年の第二夫人を目指す』なんて言えるはずもないし……」

「そこだけ聞くと、怪しい小説のタイトルみたいですね……」

「確かに……」

 つい、いらない事を言ってしまった僕の言葉に、みんなからクスクスと笑う声が漏れる。


「でも、そうですね……いっそ、こうしてみたらどうでしょうか?」

 ポンと小さく手を打って、ヴァイエルさんが提案した作戦。

 それは……。

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