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追放・獣人×女装ショタ  作者: 善信
第七章 魔界進行作戦
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02 同じ術式を施す事によってね!

「よい……考えですか?」

「ええ!」

 自信満々に頷くお祖母ちゃんの態度に、不安そうなギルドの面々の顔に、わずかながら希望の光が差し込む。

 さすが、世界で五指に入る魔法使いの言葉には、大きな期待がかかるみたいだ。


「そ、それで、どのような策が?」

「慌てちゃダメよぅ」

 食ってかかりそうになるギルド支部長をなだめ、お祖母ちゃんは小さく咳払いをしてから、この場にいる全員を見回した。

「向こうに連れていかれたハンター達に対抗するには、こちらの戦力を引き上げるしかないわ」

「そ、それはそうかもしれませんが、このギルドに所属しているのはB級までで……」

 とてもA級ハンターには対抗できない……そう言いかけた支部長の声を、お祖母ちゃんは片手で制する。


「大丈夫。少なくとも、魔法使いに限っては、一段階くらい上のランクに引き上げる手段があるわぁ!」

 そう言って、お祖母ちゃんはチラリと僕を見る。

 え、まさか……。


「そう!あーちゃんと、同じ術式を施す事によってね!」


 お祖母ちゃんは全力の笑顔で、ウインクしながらハンター達に微笑みかけた!

 や、やっぱり、そうきたかっ!

 でも、それってつまり……。


「それは……魔法使いの男性達に、女装をさせるという事……ですか?」

「そのとおりっ!」

 にこやかに肯定するお祖母ちゃんとは裏腹に、ハンター達の間からは否定的などよめきが起こった!


「じょ、女装って……」

「元がいいならともかく、俺達なんかがやっても見るに耐えない化け物ができるだけじゃ……」

「それに、私達みたいな女性はどうすれば……」


 ざわつくハンター達を落ち着かせるように、お祖母ちゃんがパンパンと手を叩く。

 すると、皆の注目が再びこちらに集まった。

「女性の場合は、もともと繊細な魔力のコントロールに長けているから、私が直接指導して能力を引き上げてあげるわぁ」

 世界で最高峰の魔法使いに、直接教えを受けられるとあって、女性魔法使い達がわっ!と色めき立つ!

 それとは対照的に、男性魔法使い達の表情は不安気なままだ。


「まぁ、心配なのはわかるけど、『我こそは!』って立候補する人はいないかしらぁ?」

 そんな問いかけに、わずかな沈黙が流れたけれど、やがておずおずと手をあげる者達が現れた。

 一人は、駆け出しといった風の少年魔法使い。

 一人は、古参な初老の魔法使い。

 そして、最後の一人は中堅どころのベテランハンターだった。

 どの面々も、女装とは縁遠い風体ではあるけれど、それは本人達も自覚している節があるみたい。

 だけど、見た目は酷くなっても、今の自分より上のステージに行けるなら……そんな、望みを内に秘めたような面構えをする三人は、ゆっくりとハンター達の間から歩みでて、お祖母ちゃんの前に立つ。


「ぼ、ぼくはまだ駆け出しなんですけど、今より強くなれますか?」

「はい、なれますよ」


「ワシは、もう年齢的にキツい特訓や終業は無理なんだが、それでも強くなれますか?」

「はい、大丈夫ですよ」


「俺は今、C級なんですが……A級並みに強くなれますか?」

「はい、強くなれますよ」


 真剣な顔で質問をぶつけてくるハンター達に、張貼り付いたような笑顔でニコニコしながら返事を返すお祖母ちゃん。

 なにやら怪しい雰囲気も醸しているけれど、そんな答えを聞いてハンター達が決意を決めたように頷き合った。


「それじゃあ、別室で準備しましょうか」

 立候補してきた魔法使い達を連れて、お祖母ちゃんは隣の部屋へと移動していく。

 そうして、部屋のドアを閉めた瞬間!


「なめてんじゃねぇぞ!女装も魔法も、そう簡単に極められる訳がねぇだろうがぁ!」

 突然の怒声と共に、激しい殴打のような音が響き渡った!

 そんないきなりの豹変っぷりに、この場にいた全員が固まってしまう!


 ──それから、十分ほどが過ぎた頃だろうか。

 ようやく静かになった、向こうの部屋のドアがゆっくりと開かれる。

「おまたせぇ♥」

 そして、いい笑顔を向けてくるお祖母ちゃんの背後から姿を現したのは……見覚えのない、美女が二人に美少女が一人!

 誰!? 誰なのっ!?

 そう思いはしたけれど、よく見れば彼女(?)達が身に付けている装備からして、さっきの立候補した魔法使い達に間違いない無さそうだ!


「これが……ぼく……」

「なんだか、ちょっと実感がないな……」

「うーん、どこか変じゃないかな?」

 しん……と静まり返る皆を前にして、完璧な女装を施された三人は少し居心地が悪そうににモジモジしている。

 その仕種がまた、妙に可愛らしくて、男性ハンター達からゴクリと息を飲む音が聞こえた。


「な、なんだあれ……完全に別人じゃねぇか……」

「ヤバ……めっちゃ好みのタイプなんだけど……」

「あそこまで綺麗だと、男だとかどうでもよくなってくるような……」

 戸惑いが混じりながらも、好意的な視線にさらされた女装ハンター達は、頬を染めながら恥ずかしそうに身をよじった。

「あ、あんまり見つめないでくださいぃ……」

「そんな目で見られたら、ワシ……」

「なんだか……へんな気分になってきちゃう……♥」

 心なしか、口調まで女性っぽくなった三人に対して、再び男達が唾を飲む音が響いた。


「フフフ、どうかしら。もちろん、見た目が整っただけじゃなく、すでに魔力コントロールのレベルも上がっているわ!」

 ドヤッとした顔で胸を張るお祖母ちゃんだったけど、唐突に女性ハンター達に取り囲まれた!

 そして、彼女達は少し鬼気迫る表情で、お祖母ちゃんに迫る!

「あ、あのっ!カルノ様の女装メイクのテクニックは、私達にも適用されますか!?」

「ま、魔法使い以外では能力向上に効果はないけど、綺麗になるためのメイクアップなら可能よぉ」

「是非、手解きをお願いします!」

 我も我もと、武骨な男性を美女に変えるメイクアップ方法を学びたいと、お祖母ちゃんに群がっていく!

「い、一度には無理だから!予約制で講座を開くから、順番に予約してぇ!」

 あのお祖母ちゃんが、圧されているなんて……。

 女性の美に対する追求心は、すごいなぁ……。


「……私も、少しは化粧っ気をつけた方がいいのかな」

 女性のハンター達に感化されたのか、ディセルさんがポツリとそんな事を呟く。

 だけど、僕にとっては……。

「ディセルさんは、今でも十分に綺麗ですよ!」

 力を込めて僕がそう言うと、彼女は嬉しそうに微笑みながら頭を撫でてくれる。

 そう、彼女は本当に綺麗だ。

 そして、そんなディセルさんがメイクなんかしたら、ますます人目を引き付けるようになってしまう。

 ちょっと情けない感じの独占欲だとは思うけど、ディセルさんに惹かれて介入してくるような輩に、彼女と一緒に過ごす時間を邪魔されたくない。

 そんな僕の心情を知ってか知らずか、ディセルさんは僕の手をギュッと握ってきた。

 そして、耳元に顔を近づけると、小さな声で囁く。


「君に綺麗だって言って貰えるのが、私にいいとって最高の美容法かもしれないね♥」

 ほんの少し、からかうようなニュアンスを含んだ彼女の台詞に、僕は顔が熱くなっていくのを感じていた。


「──皆さん、落ち着いてください!話の本筋がズレてますよっ!」

 ギルドの受付嬢である、ネッサさんの呼び掛けに、騒がしかったハンター達の喧騒がピタリと泊まる!

 さすがに、普段からハンターの扱いに馴れてるだけの事はあって、静めるのもお手のものだ。

 そして、ちゃっかりお祖母ちゃんのメイクアップ講座に予約も取り付けていた事にも僕は気付いていた。

 ますますもって、見事だなぁ……。


 そんなネッサさんが、仕切り直すようにお祖母ちゃんに問いかける。

「マーシェリーさ……いえ、カルノ様の術式の力は、本物だと思われます。ですが、やはり行動を起こすには、人手が足りなさすぎます」

 確かに……このバートの街のハンター達が全員集合しても、魔界で待ち構える敵の総数からくべれば、数で圧倒されてボコボコにされる可能性もある。

 というか、そうなる未来しか見えないな。

 現実的な問題に、盛り上がっていた空気がまた沈みかけた時、どこからか「ククク……」と笑うような声が聞こえてきた。

 その声の主は……ロロッサさん!?


「ククク、皆さんご心配なく……たった今、手練れの戦士達、約二百名の協力が得られる事になったッス!」

 な、なんですって!

 急なロロッサさんの言葉に、室内がざわつく。

 だけど、二百名とはいえどこからかそんな援軍が……?


「んも~、お忘れッスか?ドワーフの国で、獣人族の人達を鍛えていた、ターミヤ氏と連絡がついたんスよぉ」

「あ……」

 そうだ……その手があったんだ!


 ディセルさんの師匠であり、かつて剣聖と呼ばれた達人のターミヤさん!

 ドワーフの国で、襲撃してきた獣人族の連中を(無理矢理に)弟子にし、その指導のために別れていた彼が参戦してくれるならこれは心強い!

 なんせ、戦士界隈における

うちのお祖母ちゃんみたいなものだもん!

 そのうえ、『抜刀術』を学んだ獣人族の人達が力を貸してくれるなら、これは大きな戦力になる事、間違いない!


「ふむ……ならば、魔界での案内役は、我に任せてもらおう」

 そんな声と共に、ロロッサさんの影から沸き上がる人影。

 言わずと知れた、元魔王四天王の一人、ガマスターさん!


「げえっ!あ、あのアンデッドは!?」

 ガマスターさんの姿を見た一部のハンター達から、恐怖の混じった悲鳴のような声が上がる!

 そうか、この街は一度ガマスターさんからの襲撃を受けているし、彼を驚異に思っていてもおかしくないか。

 だけど、ここでまだ話を脱線させる訳にもいかない。

 だから僕は、丁寧に、かつ簡単に事情を説明して、ガマスターさんが敵ではないと言う事を訴えた。

 そおかげで、あんたらがそこまで言うなら……といった感じで、なんとか納得してもらう事ができたようだった。


 ──そうして、いよいよ最後の決戦に向けた作戦が始まろうとしている。

 そんな状況を前にして、ハンター達へ向けてお祖母ちゃんが呼び掛けた!


「皆も薄々感じてるだろうけど、いよいよ大きな戦いに向かう事になるわぁ。でも、その前に」

 言いながら、お祖母ちゃんはモゾモゾと、胸の谷間から一枚の紙を取り出す。

「これは、私が今回ギルドに出す依頼書よぉ。依頼内容は……勇者を救い、大魔王を倒す事!危険極まりない依頼ではあるけれど、ランクは問わずに参加可能よぉ!」

 グワッとした熱のこもった言葉に、ハンター達の顔が緊張していくのが見えた。


「へへっ……世界を救う依頼か……」

「こんな田舎ギルドで燻ってたけどよぅ……ここで名を上げるのも悪くねぇよな」

「ふふっ、伝説に名が残るかもって思うと、ハンター冥利につきるわね」


 やる気が沸いてきてるハンターを、さらに焚き付けるように、お祖母ちゃんが言い放つ!

「ちなみに、参加してくれるチームには、前金で金貨五十枚!そして、成功報酬はさらに金貨五十枚追加よぉ!」

 その一言で、完全にハンター達の血に火が着いた!

 むせかえるような熱気のハンター達に、お祖母ちゃんは満足そうに頷いる。

 でも、そんなお金……どこから持ってくるんだろう……。

 ちょっと気になって、聞いてみたところ、「自腹」といったあっさりした答えがかえってきた。


 確かに魔法の研究なんかにはお金が必要だし、お祖母ちゃんの経歴を考えると、かなりの資産があってもおかしくないけど……。

 それでも、ポンと千枚単位の金貨を出せると言うのは、常識外だよね。

 少なくとも、僕は今回のケースが初めてだ。

 そうやって半分感心、半分あきれていると、ハンター達経向けてお祖母ちゃんが拳を振り上げながら呼び掛けた!


「やるわよ、みんな!大魔王を倒し、世界を救うために!」

 その掛け声に、一丸となったハンター達の歓声が、大きなうねりとなって建物内に響き渡った!

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