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追放・獣人×女装ショタ  作者: 善信
第七章 魔界進行作戦
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01 やる事は決まっている

 大魔王ギストルナーダや、魔王四天王であるラグロンドにウェルティムに瀕死のダメージを与えながらも、僕達は敗北感を感じずにはいられなかった。

 いや、闇に堕ちた勇者エルビオさんや、魅了で洗脳され連れ去られたA級ハンター達……。

 結果だけ見れば、実質上の敗北と言っても過言ではないと思える。

 辛うじて残された僕達のチーム『レギーナ・レグルス』と、勇者のパーティであるヴァイエルさん達は、重い足を引きずりながらもバートの街へと帰還する事ができた。

 だけど……戻った僕達を待ち受けていたのは、今までのツケを精算する裁判じみた糾弾の場であった……。


            ◆


「……では、改めて確認させていただきます。本当に、あなたは……アムルズさんなのですか?」

 テーブルを挟んで、僕達の前に座るヴァイエルさんが問いかけてくた。

 そんな彼女の隣には、同じく勇者一行の仲間である、ルキスさんとグリウスさんが陣取っている。

 そして、さらにはその後ろには、息を飲んで見守るバートの街のギルド職員達や、ハンター達の姿があった。

 事がここまで大きくなってしまった以上、僕に何か事情があったとしても、隠しだてすることはできないとヴァイエルさん達の判断によるものである。

 状況を見れば、彼女のその判断について僕も同意できるし、何より僕の正体を明かすいい機会なのかもしれない。

 だから僕は、所属するギルドの皆の前で事情を話すことにしたのだ。


「……はい。アムールは仮の姿……本当のボクは、かつて勇者一行から追放された、アムルズで間違いありません」

 今まで隠していて、申し訳ありませんと、僕は皆に向かって深く頭を下げる。

 それと同時に、ギルド職員やハンター達の間に、どよめきが沸き上がった。


「マ、マジかよ……あのアムールちゃんが、男の子……!?」

「そんな……どう見ても美少女じゃねーか!」

「それに、ディセルとは百合カップルじゃなかったって事なのか!?」

「嘘でしょ……あんなに推してたのに……」


 ……ざわめきの中には、一部「驚くポイントそこ?」と思わないでもない声もあったけれど、やはり信じられないといった声が多かった。

 さらに一部では、「もしかして他のメンバーも男だったりするのか?」なんて声もあった聞かれる。

 そんなざわめきを払うかのように、突然バン!とテーブルを叩く音が響いた!


「……少なくとも、ディセルとロロッサは、本物の女よ。アタシ、おっぱい揉んだ事があるからね」

 静かに、そしてハッキリと断言するルキスさんに、後方のハンター達から安堵のため息が漏れた。


「まぁ、確かにビックリはしたけどさ、問題は他にもあるでしょう!」

 そう言って、ルキスさんが僕を睨むように見据えてきた。

「アンタさ、アタシらといた時には、全然魔法がダメだったじゃない!なのに、大魔王に使ったあのスゴい魔法はなんなのよ!」

 怒りに満ちた彼女の表情に、悔しさみたいな感情が混じり、じわりと目の端に光るものが浮かぶ。


「アタシらといた時は、手ぇ抜いてたわけ!? だとしたら、絶対に許せないんだけど!」

「そ、そんな事はありません!ただ……」

「ただ、なによ!」

「ただ……あの時は、女装ができてなかったので、魔法が使えなかったんです……」

「はぁ!?」

 僕の答えを聞いて、再びルキスさんの怒りに火がついたのか、彼女はまたテーブルを叩いた!


「なに、訳のわかんない事言ってんのよ!魔法と女装に、なんの関係があるっていうの!」

 ルキスさんの反応も、もっともだ。

 それに、同じ疑問を持っているのか、ヴァイエルさん達もうんうんと頷いている。


「……それについては、私が説明してあげるわぁ」

 静かに控えていたお姉ちゃんが、スッと立ち上がり、皆の前で小さく咳払いをする。

 するとハンター達の方から、「まさか、マーシェリーさんも男……?」なんて声が囁かれた。

 そんな声に、クスッと小さく笑いながら、お姉ちゃんは舞台女優のように皆に向かってその正体を明かす!


「アムールの姉、マーシェリーとは仮の姿……その正体は、あーちゃんの師匠であり(ごにょごにょ)である、魔法使いカルノ・トロワフィルと申します!」

 ごにょごにょの部分はよく聞き取れなかったけど、たぶん『祖母』って言ってたみたいだ。

 しかし、言葉を濁した部分よりも、お姉ちゃん……いや、お祖母ちゃんの名前に、皆が大きくざわめいた!


「カ、カルノって、あの世界で五本の指に数えられるっていう、大魔法使いの!?」

「ほ、本当かよ……生ける伝説じゃねーか!」

「だ、だけど、確か勇者のパーティを追放されたアムルズって、カルノさんの孫だったって言うし……」

「え?じゃあ、マーシェリーさんて、実は結構なババァ……グハッ!」

 最後の言葉を漏らしたハンターが、突然見えない拳で殴られたかのように、吹っ飛ばされた!

「ウフフフ、口は禍の元よぉ」

 にこやかに微笑みながらも、圧力のある声にハンター達も一斉に口を紡ぐ。

 そうして静かになったのを見計らって、お祖母ちゃんは説明を始めた。


「……と、いう訳で、あーちゃんは女装しないと、魔法が使えなかったという事なのよぉ」

 そう締めくくるお祖母ちゃんの説明を聞いて、室内はシン……とした静寂に包まれていた。


「魔力制御のために、神の模倣で女装を……」

「っていうか、神っていわゆる女神様じゃなくて、両性なの!?」

「た、確かに、人間など超越しておられる方々だし、そうであってもおかしくはないが……」

「私はいいと思う」


 神々の本当の姿を知って、信仰系の魔法を使う人達の間でちょっとした衝撃が走っている。

 これが適当な人のいう事なら与太話ですむんだろうけど、お祖母ちゃん程の実力者の言葉には説得力があった。


「……まぁ、そちらの事情はわかりました。ですが、個人的なわだかまりなんかは一旦置いておいて、これからの事を決めねばなりますまい」

 動揺する一部のハンター達から話題を反らすように、そう言ったのは、この街のギルド支部長だった。

 その言葉に、他の職員の人達も大きく頷いている。


「アムルズ……いや、ここはあえてアムールと呼ばせてもらおう。それで、君達はこれからどうするつもりかね?」

 口調こそは柔らかいものの、その眼光は鋭く光っている。


「敵の策に乗せられた事は仕方がないが、勇者様が闇に堕ちた一因は、君にもあるのだろう?」

 確かに、あの場で僕が男の子だってバラされたショックで、エルビオさんは闇堕ちしてしまった。

 そのあげく、淫魔女王(ウェルティム)の性転換光線を偶然くらって女性になっちゃったんだもんな……。

 だいたい、僕とお祖母ちゃんのせいかもしれない……。


 しかもそれだけではなく、ウェルティムに魅了(チャーム)で洗脳された、手練れのA級ハンター達まで魔族サイドに取り込まれてしまっている。

 この絶望的な状況に、打開案などあるのか?

 皆の視線には、そんな無言の問いかけが込められているようだった。


「……どうするも何も、やる事は決まっている」


 沈黙を破り、そう言い切ったのは……ディセルさん!

「き、決まっているって……どうするというんだ?」

「だから、私達のやる事はひとつ……魔界に乗り込んで勇者を取り戻し、大魔王を討つ!」

 それだけですと締めくくって、ディセルさんは得意気な表情で胸を張った。

 しかし、それを聞いていたギルド支部長達の顔から、渋面が消える事はない。


「か、簡単に言うが、こちらの戦力は向こうに比べてあまりにも少ない!そんなんで魔界に乗り込むなど、自殺行為ではないか!」

「そうかな?今、大魔王ギストルナーダは、私の斬撃とアムールの魔法おかげで、かなりのダメージを受けている」

 確かに、大魔王は勇者の聖剣による攻撃以外では殺すことができないらしいけれど、それでもダメージは受ける。

 ディセルさんの『抜刀術』で両断され、僕の魔法で焼かれた奴は、二度死ぬくらいの深傷は負っただろう。

 そこまでのダメージを受ければ、回復魔法を使おうとも、傷が癒えるまでにかなりの時間がかかるハズだ。


「だ、大魔王が動けんのは、わかった。しかし、先程も言ったがこちらの戦力が……」

「それに関しては、私にいい考えがあるわぁ」

 ギルド支部長の言葉に対して、お祖母ちゃんが声をあげる。

 しかし、その表情にはちょっとしたイタズラを思い付いた、子供のような笑みが浮かんでいた。

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