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追放・獣人×女装ショタ  作者: 善信
第六章 大魔王の策略
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09 大魔王

 雷のような聖剣の一閃を、鋼のごとき拳が迎え撃つ!

 火花を散らし、激しい金属音が響き渡ったと同時に、エルビオさんと偽アムルズの間合いが開いた!


「ふんん!これが聖剣の一撃か!なるほど、鋭いな!」

「それを拳で防ぐなんて、どんな鍛え方をしたんだ、君は!」

 火を吹くような闘気をぶつけ合いながら、二人の戦士は再びぶつかり合い、激しい打ち合いにもつれ込んだ!

 でも、いい加減に気づいてください、エルビオさん!

 魔法使いの少年()がどれだけ体を鍛えたって、聖剣と素手で打ち合えるようにはなりませんって!

 ハラハラしながら二人の戦いを見守っていたけど、嵐のような打ち合いの果てに、再び両者は間合いを取った。


「むぅ……まさか、あれほどとは……」

 ふと、僕達と一緒にエルビオさんの戦いを見ていた、グリウスさんが声を漏らす。

 いや、解説役になってるのかもしれないけど、加勢しなくていいんですか!?


「……もしも本当にアムルズと戦う事になったら、手出しをしないと俺達は約束させられたからな」

「えっ!?」

 な、なんでそんな約束を……?

「あの日……アムルズさんをパーティから追放しよう(外そう)と最初に提案したのが、エルビオさんだったからですよ」

「戦いについてこれないだろうからって、外したくせにさ……最後まで責任持とうとか、真面目すぎるのよ、エルビオは」

 ヴァイエルさんもルキスさんも、辛そうな表情を浮かべながら、エルビオさんの戦いを見守っている。

 そ、そうだったのか……。

 確かに……真面目過ぎますよ、エルビオさんは!

 そして、その偽アムルズ相手にそこまで思い込まなくてもいいんです……。


 なんとか、偽者の化けの皮を剥がしたいけれど、どうすればエルビオさん達の勘違いが解けるだろう。

 僕達が、もどかしさに頭を抱えそうになっていると、不意に静かな声が響いた!


「……茶番はその辺にしておくんだな」


 突然の水を差す指摘に、周囲の目が声の主に集まる!

 その視線の先にいたのは……ロロッサさん!?


「ち、ち、ち、違うッス!ウチじゃないッスよ!」

「その通り。ロロッサ嬢ではなく、我である!」

 慌てて否定するロロッサさんの影から、浮かび上がるようにして姿を現したのは……ガマスターさん!

 突如、出現した高位のアンデッドモンスターに、周辺のハンター達にザワリと警戒した気配が走るけれど、ガマスターさんはヒラヒラと手を振ってそれを制した。


「安心するがいい。我は、こちらのロロッサ嬢の護衛だ」

 憮然とした様子で言い放つと、それを受けてまたハンター達の間にざわめきが起こった!

「じ、自意識のあるアンデッド!?」

「そんな物を使役するとは……まさか、あの目隠れ巨乳が、噂の『冥界神の加護』持ちか!?」

「あ、あの噂って、新参ハンターのハッタリじゃなかったのかよ!」


 さすがに、冥界神の加護持ちがいる事はちょっとした噂になってたみたいで、ロロッサさんに対して、一気に周囲の目が集まる!

「ひ、ひえぇ……!」

 そんな風に突然、注目を浴びたロロッサさんは、小さな悲鳴をあげてお姉ちゃんの後ろに隠れてしまった。

 人見知りな彼女だし、無理もない。


「はいはい!いま注目すべきは我らではなく、向こうの者達でしょ!」

 パンパンと手を叩くガマスターさんの言葉に、全員がハッ!としてエルビオさん達の方へ顔を向ける。

 なぜか、当人であるのにこちらに気をとられていたエルビオさんと偽アムルズも、弾かれたように目の前の敵へと視線を戻した!


「さて、結論から言えばあの『アムルズ』を名乗る男は、本物ではない!」

「な、なんだってー!?」

 キッパリと断言するガマスターさんに、周りから驚きの声があがる!

「じゃ、じゃあ、あれはいったい誰だと言うんだ!」

「よくぞ聞いてくれた。奴の名は……ラグロンド!魔王四天王の一人、鬼人王(オーガ・キング)のラグロンドである!」

 再び、衝撃におののくハンター達のざわめきが、空気を揺らした!


「ま、魔王四天王!」

「な、なんだってそんな奴が、追放された小僧の名を騙っていたんだ!?」

 動揺するハンター達に、ガマスターさんは「さぁな」と肩をすくめる。

「正体を隠す必要は無くなったんだ、本人に語ってもらおうてはないか」

「……ククク、そういえば、そちらにはお前(・・・・・・・)がいたんだったな(・・・・・・・・)、裏切りの元魔王四天王、ガマスター!」

 同じく、元魔王四天王に指摘された偽アムルズは、すでに正体を隠すつもりも無さそうだ。

 ガマスターさんの言葉を肯定するように、マントとフードを脱ぎ捨て、その下に隠されていた真の姿を白日の元に晒す!


「貴様の言う通り!俺こそ、魔王四天王で最強のパワーを誇る鬼人王、ラグロンド様よぉ!」

 まるで、枷を外すかのように、隠していた肉体を誇示しながら、ラグロン高らかに名乗りをあげた!


「うおっ!本当に魔王四天王かよ!」

「しかも、正体を見破った方も元魔王四天王だとっ!?」

「そんなもんを使役するメンバーを連れてる、『レギーナ・レグルス(あいつら)』はなんなんだ……」

 さすがに百戦錬磨のハンター達も、急展開する現状に動揺が隠せないでいる。

 そんなハンター達や元同僚に対して、ガマスターさんはフン!と小さく鼻を鳴らした。


「それで、わざわざ『アムルズ』の名を騙り、A級ハンターを狙っていた理由はなんだ?」

「フッ……お前なら、わかっているのだろう?」

「まぁ、単純に考えれば、勇者一行と人間界の強敵であるA級ハンターを一同に集めて、まとめて潰すため……か?」

「そうだな……お前なら、そのくらいは読めるだろうよ」

「フン……本当にそれだけなら、雑な作戦すぎるであろう。我が聞きたいのは、あの方(・・・)が絡んでいるであろう、その裏の……まてよ?」

 不意に、ガマスターさんが何か引っ掛かりを覚えて、言葉を止めた。


「……ラグロンド、『アムルズ』の事もそうだが、なぜお前が我がこちらについた事(・・・・・・・・・・)を知っていた(・・・・・・)?」


 一瞬、彼が何を言っているのかわからなかったけれど、すぐに僕達もハッとなった!

 そうだ、ガマスターさんが参戦したのは、すぐ前の獣人王国の戦いの時!

 それ以降は、普段はロロッサさんの影に潜っていて、ほとんど姿を現していない。

 つまり、あの戦いに関係していた者以外は、ガマスターさんがロロッサさんに使役されている事を、知る人はいないはずなんだ!


「それなら、私がラグロンドに教えたから……に決まっているではないか!」


 ガマスターさんの問いに答えるその声は、突然に僕のすぐ後ろから聞こえた!


「えっ!?」

 驚き、振り返るよりも早く、その何者かは僕の首を背後から鷲掴みにし、猫の子みたいに軽々と持ち上げる!

 そして、すでに抜刀体勢で斬りかかろうとしていたディセルさんに対して、盾の代わりに使った!


「くっ!」

 僕に当たる寸前で刃を止め、ディセルさんが苦々しい表情で、突然の乱入者を睨み付ける!

「危ない、危ない。もう少しで、真っ二つにされる所だった」

 クスクスと小馬鹿にしたように笑いながら、謎の人物は僕を人質だとアピールするかのように高く掲げる!


「ば、馬鹿なっ!まったく気配を感じなかったぞ!?」

 驚愕したのは、グリウスさん達だけじゃない!

 この場にいた、誰も僕の背後にいた人物の気配に気づけなかったのだ!

 いったい、いつの間に……。


「フフフ……誰も彼も、向こうに気を取られていたからな。そう難しい事でもなかったぞ。しかし、勇者の仲間やA級ハンター達ともあろう者が、少しばかり注意力が足りないのは事実だな」

 やれやれと呟きながら、ダメ出しをする謎の人物!

 くっ……舐めてもらっては困るぞ!


電撃ライトニング……」

「君は、もう少しおとなしくしていていてもらおう」

 魔法を発動させ、脱出を試みようとしたけれど、それよりも早く鷲掴みにされた首の後ろに、チクリとした小さな痛みを感じた!

 と、同時に、全身に痺れるような感覚が走り、体が麻痺して動けなくなってしまう!


「あ……がっ……」

「これでよし。さて……」

 ダラリとした僕を見て満足そうに頷き、周囲を見回した謎の人物は、僕を持ったままフワリと飛び上がると、ハンター達やエルビオさんを越えて、ラグロンドの隣に降り立った!


「ご苦労だった、ラグロンド」

「ははっ!」

 恭しく頭を下げるラグロンドとは対照的に、ガマスターさんは緊張の面持ちでこちらを見ている!


「くっ……やはり絵を描いていたのは、あなた様でしたか……」

「その通りだよ、ガマスター。しかし、私の存在にすぐ気づいたのは、さすがだったな」

 なんとも気楽な口調で、元魔王四天王に声をかける背後の人物。

 かつての、そして現役の魔王達に対して、ここまで飄々としていられる辺り、やはりこいつが……。


「お、おい!あいつは一体、何者なんだ!」

 先にその存在(・・・・)をガマスターさんから知らされていた僕達はともかく、まったく前情報の無かったグリウスさん達が、困惑しながら詰め寄った!


「あの方は……」

「おい、待て待て。自己紹介くらい、自分でやらせろ」

 そう言ってガマスターさんの言葉を遮り、皆の注目を集めた謎の人物がコホンと小さく咳払いをする。

 そうして、堂々とした態度でそいつは名乗りをあげた!


「初めまして、私の宿敵である勇者一行!そして、人間界の精鋭たるA級ハンターの諸君!私こそ、君達が倒すべき最大の敵にして、邪神様より魔界を統べるべく加護を受けた者……その名も、大魔王ギストルナーダである!」


「だっ……」

 一瞬の沈黙。


『大魔王おぉぉぉっ!?!?』

 そして、その場にいた全員の口から一斉に放たれた言葉が、揺り返しのように辺りに響き渡った!

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