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追放・獣人×女装ショタ  作者: 善信
第六章 大魔王の策略
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08 我が名はアムルズ!

 バートの街を出て、今は廃村となってしまっている『狩人の村』へ向かう僕達だったけど、道中は驚くほどなんのトラブルも起きなかった。

 おかげで、あっさりと目的地にたどり着き、予定通りに勇者一行を始めとする、他のA級チームを迎えるための準備を始めたんだけど……なんだか、順調すぎて不安な気持ちになってくる。

 今までが今までだけに、これから大変な事が起こる前兆……いわゆる、嵐の前の静けさなんじゃないかって考えが、ムクムクと頭をもたげてくるのだ。


「まぁ、私達の戦いを振り返って見れば、アムールが不安になる気持ちもわかるけどね」

 使えそうな家屋の掃除なんかをしながら、ふと漏らした僕の不安に、ディセルさんはそう答えながら苦笑する。

「なにより、今回の敵は君の名を語る謎の相手……ガマスター曰く、魔王四天王の最後の一人や、大魔王なる奴が暗躍しているそうだし、いつもよりナイーブになるのも仕方がないさ」

「それは……そうなんですが……」

 いまいち、胸のモヤモヤが拭えないでいる僕を、不意に掃除の手を止めたディセルさんが、優しく抱きしめてくれた。


「大丈夫、私達ならどんな相手が来ても、乗り越えられるさ……」

「はい……」

 ディセルさんの胸の温もり、そして優しく頭を撫でてくれる彼女の手が、僕の不安を溶かしてくれるみたいだ……。

 うん、こんなに優しいディセルさんに心配をかけないよう、僕もしっかりしなきゃな!

 彼女のためだと思えば、俄然やる気が沸いてくる!

 そうして、一転して元気になった僕は作業をグングンとこなし、数日の後にいよいよ今作戦の要となる、勇者一行を迎え入れたのだった。


            ◆


「……なんだか、ここに来ると複雑な気分になるなぁ」

 村に到着したエルビオさんが、開口一番に小さく呟く。

 たしかに、以前この村の人達に化けた邪神教団の連中によって、エルビオさん達は一服盛られた経験があり、不覚を取った苦い思い出が浮かんでくるんだろう。


「あの時は、君達が……アムールがいてくれたおかげで、本当に助かった」

「そ、そう言ってもらえると、光栄です」

 キラキラとした、真っ直ぐな瞳で僕を見つめるエルビオさん。

 だけど、どちらかと言えば大暴れしていたのは、ディセルさんとターミヤさんだったんだけどね。


「ほら、エルビオ。アムールにアプローチしたい気持ちはわかるが、今は皆のまとめをしてもらわんと!」

 僕に迫ろうとしていたエルビオさんの首根っこを、勇者一行の重戦士グリウスさんが掴まえる。

「……僕の気持ちがわかっているなら、少しは融通を効かせてくれてもいいんじゃないのかい?」

 少し拗ねたようにエルビオさんが漏らすと、同じく勇者一行のヴァイエルさんとルキスさんが、あからさまなため息を吐いて見せた。


「っていうかさ、放っておいたら、アンタまたディセルと揉めるでしょ?」

「あまり揉め事ばかりでは、皆さんの士気に関わりますもの。しばらくは、貴方の方が自重なさってください」

 二人にもたしなめられ、さすがのエルビオさんもしょんぼりとした表情で項垂れてしまう。

 ……まぁ、僕としてもこれ以上は深入りされても困るので、あまり絡んで来なくなるなら、ありがたい。


 ……しかし、エルビオさんには、そろそろ僕の事を諦めてもらいたいんだけどなぁ。

 僕達が、どれだけ彼の目の前で仲睦まじい恋人同士な様子を見せつけても、いっこうにエルビオさんは諦める気配を見せない。

 やんわりと……というか、割りとはっきり僕が好きなのはディセルさんだと伝えても、さっぱり効いていない様子は、メンタルが強いを通り越して、ちょっと怖くすらなってくる。


 決して諦めない、不屈の闘志と言えば勇者っぽいけれど、こんな事でそれを発揮してほしくはなかった……。

 いっそ、僕の正体を話す事ができたなら楽なんだろうけど、今の状況下では、それも難しいもんなぁ。


 ただ、今回の一連の事件に本当に大魔王が関わっているのなら……『勇者対大魔王』な最終決戦が行われるかもしれない事に、少し期待してる面もある。

 エルビオさんが大魔王を倒して勇者としての役目を終えれば、きっと世界を救った英雄として国から貴族の子女(場合によってはお姫様)との婚姻が待ってるだろう。

 そうなれば、僕の事も諦めざるを得なくなるはずだ。

 それに、見た目が女の子でも中身が男な僕を追いかけるより、そっちの方がエルビオさんも幸せになるはずだもんね。

 だから、是非とも大魔王討伐を頑張ってもらいたい。


 ──そんな事を、考えていたせいなんだろうか。

 その翌日、まるで僕達が集まるのを待っていたかのように、大勢の魔族やモンスターが突然に姿を現して、元『狩人の村』を包囲したのだ!


 その数は、ざっと見ても数百はくだらない。

 いったい、これだけの数をどこに隠していたというんだろう。

 こんな大群なら、何らかの網にかかっても良さそうなものなのにっ!

 ある意味、作戦通りではあったものの、先手を取られた感は否めなかった。

 だけど……。


「ふん……いきなり総力戦とはな」

「ははっ、手間が省けていいじゃないか」

「さて、あとはまとまって動くか、各々で自由にやるかだが……」

「やり方は違うんだ、適当に組んでバラバラに動いた方が、効率はいいだろ」


 こちらを大幅に上回る数に囲まれながらも、百戦錬磨なA級ハンター達の闘志は衰えない。

 まったく、頼もしい限りである。


 そんな迎撃体勢を取る僕達に対し、包囲している側のモンスター達は動きを見せていない。

 しかし、そんな大群の中から、こちらに向かって歩を進めてくる、一人の人物が姿を現した。


 身長は、およそ三メートル近くもあり、体を覆い隠すマントの下からは盛り上がった筋肉の脈動が仄かに見てとれる。

 顔を隠すように、目深にフードを被ってはいるけれど、わずかに見える口元には、鋭い牙が並んでいるのが確認できた。


 まさか……あれが……。


「クックックッ……よくぞ集まったな、ハンターども……」

 体躯に見合った圧力を感じさせる声で、巨体の男はグルリと僕達を見回す。

 そして、ビリビリと空気を震わせるような大声で名乗りをあげた!


「我が名はアムルズ!勇者どもに追放された恨みを晴らすべく、人界に仇なす者なり!」

 や、やっぱり!

 こいつが……僕の名を語る、偽アムルズかっ!

 だけど、それにしたって……に、似てなさすぎでしょう!?

 本物である僕の倍近い身長に、魔法使いという設定にあるまじき立派すぎる筋肉!

 いったい、どこをどうやったら僕を名乗れるのか?

 理解できないくらいにかけ離れた外見の偽アムルズは、臆した様子のないハンター達を見据えて、「結構、結構」と愉快そうに笑っていた。

 

 しかし、状況だけ見れば敵の大将がわざわざ単身で現れたのだから、ある意味でチャンスでもある。

 偽アムルズの隙をうかがい、いつでも襲いかかれる体勢を取るA級ハンター達!


「待ってくれ、みんな!ここは、僕達に任せてくれ!」

 だけど、そんな彼等を制しながらエルビオさん達が前に出て、偽アムルズと対峙した!


「久しぶり……と言いたい所だが……君は本当にアムルズなのか?」

 至極もっともな質問を、エルビオさんはぶつける。

 そりゃ、あまりにも外見から雰囲気から違いすぎるもんね。疑わない訳がない。

 そんなエルビオさんの問いに、偽アムルズは「クックックッ……」と肩を揺らした。


「無論!我は本物のアムルズよ!」

「いや、いくらなんでも無理があるでしょ!どうやったら、割りとかわいい系だった男の子が、そんな風になるのよ!」

 思わずつっこんだルキスさんを、偽アムルズは鼻で笑う。

「男子、三日会わざれば刮目して見よ!貴様らに追放された恨みを糧に、鍛えに鍛えた結果よ!」

 ガハハハ!と豪快に笑う偽アムルズだったけど……いや、それでも無理があるって!

 そんな言い分を、誰が信じるっていうのか……。


「くっ……まさか、そこまで僕達が恨まれていたとは……」

 エルビオさん!?

 簡単に信じすぎですよ!?

 ギョッとする僕を尻目に、すっかり偽者を本物のアムルズだと思い込んだエルビオさんは、説得するように声をかける!


「百歩譲って、僕達を恨むのはいい……だが、魔王軍に付いてハンター達を襲った罪は免れないぞ!今からでも、自首するつもりはないか!」

「はっ!ハンター襲撃なぞ、元より貴様らを誘きだすための戯れ事よ!まんまと集まった邪魔者もろとも、ここで始末してくれるわ!」

 聖剣を抜き、身構えるエルビオさん達!

 万力の力を込めて、拳を握る偽アムルズ!

 わずかな睨み合いを経て……両者は弾かれたように地を蹴った!

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