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追放・獣人×女装ショタ  作者: 善信
第六章 大魔王の策略
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07 行ってきます!

 屋敷に戻った僕達は、早速リズさんに支度の手伝いをお願いする。

『お任せください!二時間ほどで、準備いたしますね!』

 やる気に満ちた彼女の()が、僕達の頭の中に直接響く。

 なんだか、気合いが入ってるなぁ。


「リズ氏は、メイドとしての仕事に死ぬほど……もとい、死んでもやりがいを感じる人ッスからね」

 そういえば、そういうゴースト()だった。

 普段の屋敷の生活環境もお任せしっぱなしなのに、今回の件で増えた仕事に文句も言わず、むしろ楽しそうに取り組んでくれる彼女の存在は本当にありがたい。

 そうして、『フン!フン!』と気合いの入った様子で買い物に出掛けるリズさんを見送り、僕達は作戦の野営地となる場所……以前、エルビオさん達と共に訪れ、村人に成り代わっていた、邪神教団と戦ったあの村へ向かう前に、軽くミーティングをすることにした。


「まだあの村があった場所は、誰も住んでいないんだよね?」

「そうらしいです。いくつか使えそうな家屋はあるんですが、さすがに戦いの跡が大きすぎたみたいで……」

「とりあえず、周辺のモンスターが村の跡地に住み着かないように、ギルドから派遣されたチームが、簡易結界だけは敷いてきたそうよぉ」

「そ、それなら倒された邪神教団の人達も、アンデッド化して出てきたり……なんて事も、無さそうッスね」

「ふむ……邪神教団か……」

「っ!?」

 不意に、ロロッサさんの影から出てきたガマスターさんが、僕達の話し合いに混ざってきた。


「ガマスターさんは、邪神教団の事に詳しいんですか?」

「詳しいというか、大魔王様の指示なんかを連中に伝える役はしていた」

「それじゃあ、『狩人の村』を奴等に襲わせたのも……」

「ああ。我が伝えた、大魔王様の指示通りだ。まさか、その後すぐに、勇者や君達が村に来るとは思わなかったが、都合がいいという事で暗殺しようとしていた」

 結構、怖いことをあっさりと言うなぁ。

 まぁ、当時は敵同士だったし、そういう作戦もあったんだろうけど。


「その、邪神教団というのは、どんな組織なんですの?」

 奴等と面識の無かったシェロンちゃんが、僕達に尋ねてくる。

「ええっと、そのまんま邪神の信奉者達なんだけど……」

 そうして僕達は、あの村での戦いの事を彼女に話す。

 勇者一行のピンチや、半分魔物となった教団の脅威。

 そして、ロロッサさんとターミヤさんの協力を得て、危機を脱したこと等々……。


「あの時は、ロロッサやターミヤ先生のお陰で、本当に助かったよ」

「そ、そんな、ターミヤ氏はともかく、ウチは大した役には立ってなかったッスよぉ……」

 謙遜するロロッサさんだったけど、その口からは「うへへへ……」と独特の笑い声がもれており、ニヤニヤと嬉しさを隠せないでいる。


「なるほど、そんな事があったのねぇ……」

 事の成り行きを聞いたお姉ちゃん達が、神妙な顔つきで頷いた。

「どうやら……その一件で、勇者さまはアムールさまに、想いを寄せるようになったようですの」

「それっぽいわねぇ」

「そっちの話!?」

 邪神教団との戦いより、エルビオさん達とのやり取りに食い付くなんて……。

 でも、どこにエルビオさんから好かれる要素があったんだろうか?

 そりゃ、確かに勧誘とかはされたけど、僕は正体がバレそうになってアワアワしていた覚えしかないんだけど……?

 心当たりがない僕に、お姉ちゃんとシェロンちゃんはズイッと詰めよってきた!


「お風呂から逃げた時に、勇者君とほぼ全裸でぶつかったんでしょう?」

「純情で潔白な勇者さまなら、責任を取ろうとしてもおかしくはありませんの!」

「それだけじゃなくて、アムール氏の見た目も勇者氏のストライクゾーンど真ん中だったそうッスよ」

 ひょいと話に入ってきたロロッサさんから、特に知りたくなかった情報がもたらされた。


「ボ、ボクの外見が?」

「はいッス。『小さなお胸、低めの身長、眼鏡美少女』と、見事に勇者氏の好みに一致していたそうッス」

 ええ……狙い済ましたみたいに、僕すぎる……。

「そ、それはどこの情報なんですか?」

「ドワーフの国で、ヴァイエル氏やルキス氏から、おっぱいを揉まれながら……いえ、体を張って聞いた情報ッス」

 あ……不自然に、僕とエルビオさんを二人きりにしようとした、あの時か。

 何かを思い出したのか、ロロッサさんはブルリと身を震わせる。

 本当に、御愁傷様です……。


「しかし、よい事を聞きましたの!」

 僕の外見がエルビオさんの好みだと知ったにも関わらず、シェロンちゃんはグッと拳を握って、不敵に笑う。

「小さなお胸と低めの身長は、ワタクシにも該当しておりますの!ここに眼鏡を装備して、ディセルお姉さまとアムールさまが結ばれた後、振られて傷心の勇者さまに迫れば、ワタクシにもワンチャンありますの!」

 ああ、言われてみれば……でも、たくましい!

 エルビオさんに恋心を抱いているのは知ってるけど、シェロンちゃんがここまで貪欲に攻めの姿勢を崩さない娘だとは、ちょっと意外だった。


「まぁ、獣人族は情が深いし、狙った獲物は逃がさないといった、気概があるからね……」

 少し苦笑いしながら、不意にディセルさんは僕を抱き寄せる。

「……もちろん、私も君を逃がさないよ♥」

「……逃げませんよ、ボクはとっくにディセルさんに捕まってますから♥」

 準備の手を止めて体を擦り合わせる僕達は、「また始まった……」と、生暖かく見つめてくる皆の視線に気づかずに、幸せな気持ちで二人だけの世界に入っていった。


            ◆


「──そういえば、あの戦いが終わった後、協力してくれた元『狩人の村』のラースさんの姿が見えなくなっていたけど、ちゃんと冥界へと向かえたんでしょうかね……」

 一通りイチャついた後、今回の偽アムルズを誘き寄せるための野営地が、元『狩人の村』な事もあって、少し気になっていた疑問が口をついた。

 邪神教団により殺され、スケルトンとなって復讐するために、僕達に協力してくれたのが、元村長であったラースさんだけど、教団との戦いの後で姿が見えなくなっていたからなぁ。


「ああ、それなら大丈夫だ。ちゃんと冥界に向かった……というか、冥界(むこう)で会ったからな」

「えっ!? 直接会ったんですか?」

「うむ。冥界神様から『さぁ……お前の罪を数えろ!』と言われ、今まで我が関わった様々な死者と対面させられた。その中に、ラースとやらもいたのだよ」

「そ、そうだったんですか……」

「無事に、冥界へ行けていたならよかったッス」

 彼に、護衛として付いてもらった事のあるロロッサさんも、ひと安心といった表情だった。


「それで、ガマスター氏は他の死者の皆さんとも、和解はしたんスよね?」

「ああ、冥界神様の前で、関係各者全員からケツバットをくらい許される事で、我は一からやり直す権利を得たのだ」

 ケ、ケツバット?

 何をされたのかはよくわからないけれど、とにかくガマスターさんは、なんらかの贖罪は果たしたんだろう。


「ちなみに、邪神教団の連中とも冥界で会ったりしたのかい?」

 何気ないディセルさんの問いかけに、首を横に振ったのはロロッサさんだった。


「彼等は、半分魔物化してたんで、魂が行き着くのは邪神の所なんスよ。そうして、魔物や魔族へ生まれ変わり、邪神の下僕として働くんス」

「なんと……」

 ディセルさんが驚くのも、無理はない。

 というか、僕もそんなのを初めて知って驚いた。

「まぁ、そういった人達もいずれ冥界神様の元へ行って、こちら側(・・・・)へ帰ってくる事もあるんスけどね。魂は、あちこち迷いながら、グルグルと巡りめぐる物なんスよ……」

 そう言って、ロロッサさんは小さく頷いた。

 なるほどなぁ……ちょっと魔法使いとしても、興味深い話だった。

 いずれ落ち着いたら、もっと色々と教えてもらおうっと。


 そんな感じで、装備を整えながらほぼ雑談に近いミーティングを交わしていると、いつの間にか二時間が経ったようで、リズさんから『準備が整いました』と、テレパシーが届いた。

 僕達が玄関のロビーへ向かうと、そこにはすっかり旅の一式を用意されており、リズさんがにこやかに頭を下げる。


「さすが、リズ氏。抜かりはないッスね」

『お誉めにあずかり、光栄です』

 主であるロロッサさんに誉められ、リズさんは主人の役に立てた喜びに笑顔を浮かべる。

 本当に、彼女はメイドさんとしての仕事に、誇りをもっているんだなぁ。


「さぁて、それじゃあ出発しようか」

 僕達は、元『狩人の村』への地理に明るいという事もあり、先行してエルビオさん一行やA級チームの皆を迎える準備をする手筈になっている。

 リズさんが手際よく準備をしてくれたお陰で、滞りなく予定をこなせそうだ。


「それじゃあリズさん、行ってきます!留守の間、よろしくお願いします」

『はい。皆様も、お気を付けて』

 深々と一礼した後、手を振るリズさんに見送られながら、僕達は一路、決戦の地へとむかうのだった。

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