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追放・獣人×女装ショタ  作者: 善信
第六章 大魔王の策略
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03 魔人アムルズ討伐依頼が発令されています

 ディセルさんと約束を交わし、上機嫌になった彼女と手を繋ぎながら、僕達はギルドへ赴くと、その扉を開いた。


 そうして、『アムルズ討伐依頼』の件について尋ねるべく、受付嬢のネッサさんの所へ向かおうとしたんだけど……そんな僕達よりも先にカウンターを飛び出した彼女が、高速タックルでしがみついてきた!

 ど、どうしたっていうんだ!?

 まさか、僕の正体になにか感づいたんじゃ……!?


「アムールさん!そして、ディセルさん!よくぞ来てくれましたぁ!」

 あ、違った。

 けど、半泣きになりながら、僕達のスカートで涙を拭うネッサさんの様子は尋常ではない。

 いったい、何が彼女に何があったっていうんだ……。

「落ち着いてください、ネッサさん!」

「いったい、どうしたというんだい?」

 僕達が優しくなだめると、彼女は鼻をすすりながら訳を話始めた。


「うう……おそらく、ロロッサさん達からもう聞いてると思うんですけど、現在ハンターギルド全支部に『魔人アムルズ討伐依頼』が発令されています……」

 ま、魔人アムルズ……すっかり人類の敵扱いになっちゃってる。

 偽者なのはわかっているんだけど、(アムルズ)があっさり敵認定されているのは、さすがにちょっとへこむなぁ……。


 そんな風に内心で少し落ち込んでいると、手を繋いでいたディセルさんが、わずかに握る手に力を込めてきた。

 ふと彼女の顔を見上げると、優しい微笑みで僕を見つめてくれている。

 無言だけどその顔が、「私はずっと味方だよ」と言ってくれているみたいで、胸の奥が「キュン♥」と高鳴った。

 もう……大好き……♥


「私達も、その件について詳しく聞きにきたんだ」

 うっとりとディセルさんに見とれていた僕に代わって、彼女がそう告げると、ネッサさんはハッとした表情でこちらをに顔を向けた。

「そ、それじゃあ、この依頼を……?」

「はい、受けようと思っています」

 正気に戻り、僕が頷きながら告げた途端、ネッサさんの顔が笑顔でパァッと輝きだす!


「ありがとうございますぅ!これで、ギルド長のプレッシャーから、解放されますぅ!」

 嬉し泣きに、膝から崩れ落ちるネッサさん。

 ど、どれだけの圧力をかけられてたっていうんだろう……。

 そんな彼女に向かって、たまたま居合わせたハンター達から、暖かい拍手が贈られていく。

 ……なんだかよくわからないけど、とにかくネッサさんの心労を察した僕達も、周りに釣られて拍手を贈る。


「ありがとう……ありがとう、皆さん……」

 どこからか当てられるスポットライトに照らされて、ネッサさんは歌劇女優みたいに皆に向かって手を振っていた……。


            ◆


「……いや、取り乱してしまいまして、大変お見苦しい所を」

 ギルドの奥にある応接室に通された僕達に、ネッサさんはお茶を運びながら、恥ずかしそうに頭を下げる。

「でも、これというのも、ギルド長が悪いんですよ!支部会で大きな事を言うから……」

 彼女があんなに取り乱していた訳を聞いてみれば、発端はギルドの各支部長達が集まる会議で、ここのギルド長が調子にのっていたのが原因らしい。


 なんでも、今までこの街のハンターギルドは、所詮は辺境の田舎ギルドと、長らく甘く見られていたのだそうだ。

 しかし、僕達『レギーナ・レグルス』が発足してから、このギルドは瞬く間に評判を上げ、それでギルド長も少し浮かれていたのだと言う。

 あんまり気にしてなかったけど、僕達がやって来た事を振り替えれば、注目を浴びるのも無理はないかもしれない。


 魔王四天王のほとんどを撃破してるし、ドワーフの国と獣人王国を人間サイドに引き入れる要因になってたりもしている。

 さらに、聖剣の勇者一行からも一目置かれてのが、大きいみたいだ。

 それだけに、今回の『アムルズ討伐依頼』に絶対参加するよう説得しろと、ネッサさんにプレッシャーがかけられてたいたのだという。

 まぁ、生き死にがかかっているハンター稼業は、基本的に依頼を受けるかどうかの選択権は、ハンターの側にある。

 それを必ず参加するようになんて言われたら、今後どんな軋轢が生まれるかわからない。

 それだけに、本来なら強請なんてあり得ない話なのだ。

 それをしろと言われたのだから、ネッサさんが心労はかなりの物だったんだろう。


「まぁ、うちの支部から初めて出たA級ですし、華やかな美人さんばかりのチームですから、大きな事を言っちゃったっていうのは、わかるんですけどね……」

 ハァ……と、小さくため息を吐き、一度うつむいたネッサさんだったけど、顔を上げたその時にはギルドの受付としての仕事を果たす、プロの顔つきになっていた。


「──改めて、今回の緊急依頼を受けてくれて、ありがとうございます。では、依頼の詳細について説明いたしますね。 なお、ここから先は、口外なさらないようにお願いします!」

 真剣な彼女の表情に、僕達も真面目な表情で頷く。

 そうして語られたのは、ロロッサさん達が聞いてきた大まかな情報に加え、依頼を受けてくれた者達だけに伝える裏の情報。

 曰く、『魔人アムルズの容姿』、『その目的』と『討伐計画』について。


 それによれば、まず魔人アムルズを名乗るその男は、身の丈三メートルに近い、筋骨粒々なそりゃ物凄い大男だそうだ。

 ……うん、もうその時点で完全に僕とは別人じゃないですか。

「まぁ、相手は魔人を名乗るくらいですから、邪神に魂を売って力を得たとも考えられますね」

「な、なるほど……」

 世間では、そんな受けとられ方をしてるんだ……。


「次にその目的ですが、やつは『ブラック&ブラック』を倒した際に勇者一行が出場ってくるまで、A級ハンターを狙うと宣言していたそうなんです」

 それは初耳だった。

 もっとも、様々な難題をこなすA級が狙われるなんて話が広まると、下位のチームにも動揺が伝わるだろうから伏せていたのも理解できる。

「……これは極秘の話ですが、すでに『ブラック&ブラック』以外にも、『ザ・モブ』、『ミレニアム・フォックス』の二チームが、魔人アムルズの手にかかったと思われます」

「なっ……!?」

 ネッサさんの言葉に、思わず僕達もギョッとする!

 その二つのA級チームも、かなり有名な実力者のはずなのに……。

 でも、まだ『魔人アムルズ』が出現してからたいした時間も経っていないのに、その動きがいくらなんでも早すぎる。

 普通に考えて、複数犯の行動じゃないんだろうか?


「……そういう意見もあったんですが、襲撃されたチームからの情報と、やられた際に行われた独特な行為から、ほぼ同一の犯人だと思われます」

 独特の行動……あの、女性ハンターの装備をはいで、男性ハンターに着させるってやつか。

「A級チームを倒すほどの力と、そんな変態行為をする者がそう何人もいるはずがないという観点から、複数犯説は却下されました」

 変態行為……ま、まぁ、無理矢理に女装させるのは、確かにそうだよね。

 女装してる身としては、ちょっと耳が痛いけど……。


「そして、いよいよギルドが建てた、その討伐計画なんですが……」

 ここからが本題と言わんばかりに、ネッサさんは一息ついてからそれを口にする。


「狙われているのは、A級チームと勇者様の一行。ならばそれらを一ヶ所に集め、魔人アムルズを呼び寄せて、叩きます!」

 グッ!と拳を握り、ネッサさんは宣言した!

 確かに、わかりやすくてシンプルな計画だ。

 でも……。


「敵は、A級が一ヶ所に集まった所で、手薄になった都市を襲う計画かもしれないが……?」

 ディセルさんが懸念していた事を問い掛けると、ネッサさんからはご安心を、との返事が返ってきた。


「今回の件に限っては、各国の軍も協力を承諾してくれています」

「あらまぁ……」

 驚いたように、お姉ちゃんが口を開いた。

「ハンターのゴタゴタに国が動いてくれるなんて、随分と気前がいいのねぇ」

「ええ、普段ならあり得ない事ですが、魔人アムルズに対しては、治安維持の観点から見れば、軍とハンターが協力した方が効率的ですから」

 そうだよね……民衆に不安が広まったら、国としても困るもんね。


「さらに、いざと言う時には一部のG級の方々にも力を貸していただけるよう、話も通してあります。なので、A級不在の心配はありません!」

 えっ!それは凄い!

 胸を張るネッサさんの言葉は、自信に満ち溢れているのも納得だ。


「ちなみに、アムルズの祖母で、彼の師匠でもある大魔法使いのカルノ様にも協力の要請が言ったそうなんですが……本人がどこへ行ったのか、行方が知れないそうなんですよ……」

 あの方が出てくだされば、話が早そうなんですけどね……と、ネッサさんは肩をすくめる。

 すいません、その人なら僕の姉(マーシェリー)を名乗って、隣で「てへっ☆」って感じで舌を出してます……。


 なんにしても、想像以上に早いギルドの対応には感心させられた。

 後は、作戦当時の集合場所について聞いておかないと。

 その事についてネッサさんに尋ねると、彼女は何やら複雑な顔をしながら答えた。


「実は……ここなんです」

「ここ?」

「はい。このバートの街が、魔人アムルズを迎え撃つ拠点として、選ばれたんです」

「ええっ!?」

 そ、それは複雑な顔にもなるよね……。

 ここのギルド長が、何がなんでも僕達に参加してもらいたがっていたのも、改めて理解できる……。

 でも、なんだってこの街が選ばれたんだろう。


「それは……そこそこ栄えてはいるけど、ほどよく辺境であり、被害が抑えられそうな事。何より、勇者様からの鶴の一声がありまして……」

 勇者様(エルビオさん)の?

「はい。彼等が、絶対的に信頼する者達がいる街だから、だと……」

 そ、それってやっぱり、僕達の事なんだよね……。

「なんでも、想い人を語るような、熱烈な推薦があったらしいですよ」

 ああ、僕達の事ですね……。


「まったく、性懲りもなく……」

「うふふ……勇者様がいらっしゃるのでしたら、アピールするチャンスですの!」

 計画の裏で、エルビオさん達の動きがあった事を知ったディセルさんとシェロンちゃんの姉妹は、まったく対称的な反応を見せている。

 ううん……これがトラブルの元にならなきゃいいけど……なるんだろなぁ、いままでの経験からして。


 あきらかな波乱の予感と、未知なる魔人アムルズ(僕の偽者)の事を思い、僕は内心で小さくため息をついていた。

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