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追放・獣人×女装ショタ  作者: 善信
第五章 奪還、獣人王国
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11 余興も思い付いたし

「私を倒す……あなた一人で?」

 ウェルティムはボクの言葉を、ちゃんちゃら可笑しいとばかりに鼻で笑った。


「あなたの戦い方は知っているのよ、『アナルブレイカー』!」

「だから、その呼び方は止めてくださいっ!」

 いったい、いつまでその不名誉なあだ名は付きまとうんだろう……。

 内心で「トホホ……」と意気消沈していると、そんなボクを淫魔女王に魅了された兵士達が取り囲んだ!


「小細工は無しよ。どんなに特異な魔法を使うとしても、これだけの人数が一斉にかかれば、対処できるものではないでしょう?」

 さすが、魔法使いの弱点を心得てるなぁ……もっとも、並の対処法と言わざるをえないけどね!


連鎖式(チェーン・)爆発魔法(エクスプロード)!』


 囲まれた時点で、すでに完成していた魔法を発動させる!

 それと同時に、ボクの真正面にいた兵士を起点として、時計回りに連鎖していった爆発が、次々と兵士達を爆破していき、一瞬で全員の鎧が吹き飛ばされ、倒れていった!


『なっ!』

 この光景に、ウェルティムはおろか、後ろにいたガマスターさんまで驚きの声を漏らす!

「バ、バカな!あの規模の魔法で、死人も出さずに鎧だけ吹き飛ばすだとっ!?」

 やっぱり、今の魔法の繊細さと精密さが、わかる人にはわかるんだな。

 それにしても……。


「……ヨシっ!」

 思ったとおり、自在に魔力をコントロールできた手応えに、ボクはグッと拳を握る!


 ──この肉体が女の子になった時、今まで以上に魔力をコントロールしやすくなった気がしていた。

 これも、ボクが幼少の頃にお祖母ちゃん(お姉ちゃん)から施された術式のおかげなんだと思う。

 男の体に、女の子の格好をさせて、神に近い『両性』性を持たせる事で魔力をコントロールしやすくするこの術式。

 今のボクは、体こそ女の子だけど、魂は男のまま(なつもり)だ。

 だとすれば、女装よりも深いレベルで『両性』性を得たと言ってもいい。

 以前、ガマスターさんと戦った時よりも、より高次元で魔力を扱えるようになった今のボクにとって、操られている獣人兵士達のダメージコントロールなど容易い事だった。


「……フッ」

「?」

 ここに集めた精鋭の兵士達が一瞬で倒されたというのに、ウェルティムの表情にはまだ余裕が見える。

 その態度に、ボクもつい怪訝そうな顔になっていた。

「なるほど、大したものだわ。でも、私の『魅了』を甘く見ないでもらいたいわね!」

 そう言ったウェルティムがと命令を下すと、彼女の椅子を果たしていた人間ピラミッドが崩れ、ボクに向かって殺到してくる!


「その小娘を殺すか、自分達が死ぬまで戦いなさい!」

 無茶な命令をされているのに、ボクに迫る獣人達は喜色満面の緩んだ笑みを見せていた。

 この様子では、本当に死ぬまで戦いかねない。

 なら……。


 意を決したボクは、逆に迫る敵に向かって突進する!

 まさか、魔法使いが自ら接近してくると思っていなかった獣人達は、一瞬だけ面食らったようで、そこにわずかな隙が生まれた!


「せりゃあっ!」

 先頭を走る獣人に杖で殴りかかり、そのまま引き倒す!

 たかが魔法使い、しかも少女ごときに獣人である自分達が力負けするとは思っていなかった集団の勢いがそこで止まる!

 さらにボクは後続へ切り込むと、反撃してくる者達の攻撃を避けながら一団の背後へ回り込んだ!

 そこで、詠唱を終えた魔法を発動させる!


電撃失神束縛魔法スタンガン・バインド!」


 最初に殴り倒した獣人から、最後尾に抜けたボクを繋ぐような電撃の一線が走り、その間にいた獣人の群れをまとめて感電させた!

 電撃のせいで硬直し、悲鳴をあげる事すらできずに、バタバタと倒れていく獣人達!

 中には、完全獣人化で耐えようとしている者も何人かいたけれど、帯電した魔法の電撃がそんな彼等を束縛する!

 やがて、力尽きた最後の一人……ディセルさんのお父さんである獣人王が倒れた所で、若干の焦げ臭さを残しつつ、パチッと弾けた電撃の残り火が消滅した。


 たった一人の魔法使いの少女(ボク)が、群がる獣人族の戦士達を圧倒した現実に、みんな言葉も無くシン……と静まりかえる。

 いや、ただ一人、ディセルさんだけが、そんなボクをキラキラした瞳で見つめていた。


「バ……カな……なんなの、あなたは……」

 あり得ない目の前の光景に、ウェルティムが呆然としながら呟く。

「なんで、お尻を狙わないのっ!」

 驚いたの、そっち!?

 いい加減に、恥ずかしい二つ名のイメージから、離れてほしいんですけど!


 まぁ、それはさておき!

 これもディセルさんが提案、協力してくれた常時身体強化魔法を使用していたからこそ、この結果が出たと言えるだろう。

 つまりは、彼女(今は彼だけど)との協同作業……あれ、そう考えると、なんだかドキドキしてきた。

 女の子の肉体って、男の時よりも感情で反応が出やすい気がするな……。

 ディセルさんの事を考えただけで、なんだかお股が……。


「よぉし、アムール!手足になる男達(下僕)がいなければ、ウェルティム本人の戦闘力はゴミだ!」

 不意に声をかけられ、モジモジしていたボクはビクッ!と正気にかえる!

 い、いけない……まだ戦闘中なのに、いけない妄想に浸る所だった。

 ちゃんと、気持ちを引き締めなくちゃ!


 しかし、ひどい言い方だけど、元魔王四天王であるガマスターさんが言うなら、ウェルティム本人の力はそうなんだろう。

 一気に決めてしまえとのアドバイスに従い、ボクはウェルティムに杖を向けた!


火焔槍魔法バーニング・ランス!」


 高速詠唱で生み出された炎の槍が淫魔女王に向かって尾を引きながら突き進む!

 だがっ!


「……フッ」

 小さく笑ったウェルティムは、その炎の槍を片手で止めると、あろうことか握り潰して掻き消してしまった!

 ええっ!?

 一応、今の魔法って小さなドラゴンくらいなら、貫通するくらいの威力があったはずなんでけど!?

 そんな魔法を平然と握り潰す、ウェルティムのどこが「戦闘力はゴミ」なのさ!

 てきとうな事を言うガマスターさんをジト目で見ると、なぜか向こうもキョトンとしていた。

 あれ……ひょっとして、彼にとっても想定外の事だったの?


「確かに、普段の私は自分で戦わないし、戦闘力は皆無よ……でも、奥の手が無い訳じゃないの」

 ビキビキと音を立てながら、ウェルティムの背に黒い翼が生え、纏っていたドレスが革の光沢を放ってぴったりと体に張り付く、ボンテージ姿へと変化していく!

 さらに、視覚出来るほどに濃厚な淫気が彼女の肢体から溢れだし、それに当てられた者達が前屈みになって踞ってしまった!


「う……うう……」

「ディ、ディセルさん!」

 まさか、ディセルさんまでが頬を紅潮させながら、前屈みになるなんて……。

 ボクの前だけで見せてくれていた、潤んだような表情を浮かべてウェルティムを凝視する彼女に、胸の奥がザワザワと粟立つような感覚が広がっていく。

 こ、これが噂に聞く「NTRやんけ~!」っていう感情なんだろうか!?


「……いままで吸い尽くし、貯めてきた男達の精力。それを一気に解放すれば、私の力も魅了も、遥かにパワーアップするわ」

 フワリと髪をかきあげながら浮かび上がり、ボクを見下ろしながらウェルティムは囁くように言う。

 その言葉を肯定するように、シェロンちゃんの母であるウェイルットさんを始め、辛うじて意識のあった獣人の戦士達も、忘我の表情で淫魔女王を見上げている。

 それはまるで、魅了を超えて崇拝に至ったと思わせるような光景だった!


「さぁ、これで最後にしましょう……」

 ペロリと唇を舐め、妖艶な微笑みと淫靡に肢体をしならせて色香を振り撒くウェルティムは、誘うようにボクへ手招きをした。

 その姿に、彼女を見上げる男達から感嘆のため息のような物が漏れる。

 そして、そのため息は……ディセルさんからも漏れていた!


 ううっ!なんかスゴく嫌だ!

 頭では、彼女がウェルティムの淫気に当てられるだけだってわかっているけど、ボク以外に興奮して、ボク以外をあんな目で見るなんて……。

 そんな想いがボクの内側で、異様なまでの嫉妬の炎がとなり、ジリジリと心を炙る。

 そこに、大きな隙ができてしまった!


「おい、アムール!」

 アンデッド故に、ウェルティムの影響を受けていなかったガマスターさんが、大声で呼び掛けてくる!

 その声にハッ!とした時には、黒い翼をはためかせた淫魔女王が、ボクの懐へと飛び込んで来ていた!

 鋭い爪の一撃は、辛うじて防いだけれど、その後につづくように襲ってきたウェイルットさん達にボクは捕まってしまう!


「きゃあっ!」

「アハハハ!お前達、そのままその娘をなぶってあげなさい!」

 淫魔女王の命令に従う獣人達に服の一部が切り裂かれ、ボクの肌が顕になる!

 くっ!ダメっ!これ以上は、ディセルさん以外に見せられないんだからっ!

 必死で抵抗するボクを押さえつけ、辱しめようとする獣人達!

 だけどその時、ガマスターさんの魔法が発動した!


最恐衝撃魔法テラー・インパクト!」


 それは、ガマスターさんが使った、精神にダメージを与える暗黒魔法の一種だった!

 おかげで、ボクの回りにいた獣人達が錯乱したように悲鳴をあげながら、気を失っていく!

「大丈夫か、アムール!」

「あ、ありがとうございます!」

 すんでの所で貞操が守れたボクは、お礼を言いながら体制を立て直した!


「チッ!邪魔してくれるじゃない!」

 ガマスターさんに対して、舌打ちするウェルティム。

 しかし、すぐに余裕が溢れる表情へと戻っていく。

「まぁ、いいわ……面白い余興も思い付いたし」

 そう呟いた淫魔女王は、ニンマリと意地の悪そうな微笑みを浮かべた。

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