表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放・獣人×女装ショタ  作者: 善信
第五章 奪還、獣人王国
57/84

10 初めてを捧げても

 僕達を包んだ謎の光は、すぐに消滅して収まった。

 ダメージは特にないみたいだけど……魔王四天王の攻撃が、ただびっくりさせるだけの物なハズがない!

 状態異常なんかを起こしていないか、みんなの方を確認しようとした僕は、そこで絶句してしまった!


「こ、これは……」

「な、なんなんスか、いったい……」

「あらあらぁ……」


 戸惑う三人……だけど!その理由は一目瞭然だった!

 なぜなら、彼女達の……その、胸が無くなっていたから!

 いつも僕を温かく、そして柔らかく包んでくれた、ディセルさんの豊かな双丘が、いまは平たい広野となっている。

 さらに、そんなディセルさん以上の質量をもって、霊峰のような威風を放っていたロロッサさんの胸元も、伸びた服のシワだけが憐れさを残していた。

 あ、肉親(お姉ちゃん)の胸は、別に気にしなくていいです。


「アハハハ!どうやら、無事に性転換したみたいね!」

 僕達の様子を見て、ウェルティムが高笑いする!

 せ、性転換って……本当にそんな真似が……ってまてよ!?

 ウェルティムの言葉に、僕は慌てて自分の体を確認した!


 胸……ほんのり膨らんでる!

 股間……無くなってるぅっ!

 そ、そんな……ボク、女の子になっちゃった……!?


「なっ!ひょっとして、我も女の子になっちゃったのか!?」

 ショックを受けてた僕の隣で、ガマスターが愕然とするけど、淫魔女王はそれをフン!と鼻で笑う。

「すでに死んでる、アンデッドにまで効果は及ばない……わよ?」

 それを聞いて、ホッとした様子のガマスターを横目に、ウェルティムはボクの方をマジマジと見てきた。

 な、なにか……?


「バカな……アンデッドでもあるまいし、なんであなたは性転換してないの(・・・・・・・・)!?」

 は、はわわ……。

 さすが、サキュバス……今のボクが女の子だと、すぐ見破るとは!

「女だったディセル達は、確かに男になっている……なのに、あなただけ女の子のままなんて……あんた、まさかっ(・・・・)!」

 ま、まずいっ!

 もしかして、ボクが女装してた男の子だって事が、ばれちゃった!?


「私の『TSビーム』を防いだっていうのっ!」

 よし!ばれてなかった!


「そんな……私の『TSビーム』が防がれた事なんて、いままで一度も……だけど、こんなに可愛い娘が男の子だった訳がないし……」

 信じられないと動揺しながら、ウェルティムはブツブツと呟く。

 今のうちに、性転換してしまったディセルさん達の様子を……そう思った矢先、「まぁいいわ!」と淫魔女王は開き直った!

 くっ、立ち直るのが早いっ!


「なんにしても、あなた達のほとんどは男になったんだもん。ほぼ、狙い通りと言っていいわ」

「狙い……だって?」

「ええ、そう。あなた達を誘い込んだ、私の本当の狙いはね……人間の中でも相当な力を持つあなた達、『レギーナ・レグルス』のメンバーを私の下僕にすることよ!」

 な、なんだってぇ!


「そんなに驚く事はないわ。私達、魔王四天王を撃退したあなた達を、それだけ高く評価しているのよ」

 うう……敵とはいえ、そう言われると悪い気はしない。

 もっとも、評価というよりは警戒されてると言った方が正しいんだろうけど。


「ウフフ……強敵とはいえ、こうして男になった以上、もはや私の掌の上」

 ペロリと唇を舐めながら、僕達を見下ろす淫魔女王の目に、再び妖しい光が宿る!

 ま、まずい!

 男になったみんなが、ウェルティムに『魅了』されちゃう!

「さぁ、あなた達。私の元に来て、ひざまずきなさい!」

 その仕種すべてが、色気に溢れるサキュバスに相応しい仕種で、ウェルティムはボク達を誘う。

 だけど……。


「ハァハァ……なぜか、アムール氏がいつもより輝いて見えるッス……」

「本当……昔みたいに、ちゅーしたくなっちゃうわぁ」

「ま、まった!二人とも、アムールは私の婚約者だよっ!」


 なぜか、みんなは淫魔女王に興味を示さず、女の子になったボクの所に集まってくる。

 どうやら、ウェルティムに『魅了』されていないようではあったけど、みんなから向けられる視線がなんだか恥ずかしいよぉ……。


「バ、バカな……私よりも、そんな小娘の方が魅力的だっていうのっ!」

 サキュバスとしてのプライドが傷つけられたのか、人間ピラミッドから転げ落ちそうになりながら、ウェルティムはボクを睨み付けてきた!

「ゆ、許せない……私よりも男にチヤホヤされる女は、いてはいけないのよ!」

 そう言うが早いか、ウェルティムの手からピンク色の霧が発生し、ボク達の所に流れてきた!

 つい、それを吸い込んでしまった途端、みんなが前屈みになりながらうずくまってしまう!


「こ、これは……いったい、皆に何をしたのっ!?」

「フフン、今のは男の情欲を何倍にもする『淫魔の夜霧』というものよ。これを吸い込んだ男は、もはや発情期のケダモノも同然!」

 なっ……さすがサキュバス!

 男を誘惑する手段は、いくつも持ってるという事か!

「さぁ、今度こそこっちにいらっしゃい。元女に、男の悦楽をたっぷり教えてあげるわ」

 妖艶に微笑み、みんなを再度みんなを誘うウェルティム!

 だけど!


「ハァハァ……ヤベえッス……アムール氏が、エロく見えてたまんないッス……」

「あ、あーちゃん……久しぶりに、私とおねんねしましょう……」

 男になったロロッサさんとお姉ちゃんが、ジリジリとボクに迫る!

 目が……目が怖い!

 男の人から、欲望でギラギラした目を向けられるのが、こんなに怖いなんて、知らなかったよぉ……。


「って、なんでそっちにいくのよ!」

 思わず、ツッコミを入れるウェルティム!

「なんなのよ、あなたは!サキュバス以上に、フェロモンでも振り撒いているっていうの!?」

 そ、そんなことボクに言われても、女の子になったのなんて初めてなんだから、わかんないし……。

 でも、サキュバスより魅力的って言われてるみたいで、ちょっとだけ嬉しいかも……。


「このロリビッチが……こうなれば、あなたには最高の屈辱を与えてあげるわ!」

 そう宣言したウェルティムから、またあの欲情を煽るピンクの霧が噴き出した!

「信頼していた仲間に汚され、純潔を散らす屈辱……たっぷりと味わいなさい!」

 まともに動けないみんなが、再び霧に包まれる!

 そして次の瞬間、理性の鎖が完全に切れたような、ギラついた視線がボクに集まった!


「アムール氏ぃぃ!」

「あーちゃんんんっ!」

「い、いやぁ!」

 飛びかかってくる、ロロッサさんとお姉ちゃん!

 だけど二人がボクにのし掛かる寸前で、一筋の閃光が走った!

 それと同時に意識を断たれて、失神したお姉ちゃん達はゴロリと床に転がる。


「……峰打ちよ」

 すんでの所で、ボクを助けてくれたディセルさんが刀を鞘に収めながら、ポツリと呟いた。

 やだ、かっこいい……♥


「ディ、ディセルさん!ありがとうございますぅ!」

「あ、ああ……」

 いつもの癖で、ボクはディセルさんに抱きつこうとしたけど、ヒョイと彼女に避けられてしまう。

 そ、そんな……ちょっとショック……。


「す、すまないアムール……かろうじて自制はしてるんだけど、いま君の体を抱きしめてしまったら……私は、自分を抑える自信がない……」

 よく見れば、ディセルさんの頬は朱に染まり、ボクを見つめる潤んだ瞳にも、情欲がチロチロと燃えているのが見える。

 それを強靭な精神力で、なんとか耐えているんだろう。

 でも、なんだろう……このロロッサさん達の時とは、なにか違ったこの感情……。

 ディセルさんがボクを欲しがっていると思うと、胸のドキドキが大きくなり、お腹の奥がじんわりと熱くなってくるような感覚が湧いてくる。


「あ、あの……ボ、ボクは……ディセルさんになら……初めてを捧げても……」

「ア、アムール……」

「ディセルさん……」

 互いにゴクリと息をのみ、ハァハァと息を荒げたディセルさんの手が、ボクに延びてきて……。


「うぉい、あんたら!こっちを無視して、何をイチャついてんのよっ!」

 なぜかいい雰囲気になっていたボク達に対し、苛立った淫魔女王の叫び声が響いた!

 そのまま八つ当たりぎみに、人間椅子になってる獣人王の尻をひっぱたく!

「あふん!」

 悶える獣人王!

 それを羨ましそうに横目でみる、獣人王妃!

 ……ディセルさんが、こんな風にならなくて良かった。


「ふぅふぅ……」

 横槍が入ってうやむやになったけど、一度火が付きそうになったディセルさんは、欲望を押さえるのにかなり辛そうだ。

 できれば、前屈みになって暴走寸前になってる彼女の彼な部位を、スッキリさせてあげたいとも思う。

 まぁ、それをやっちゃったら各方面からめちゃくちゃ怒られるだろうから、すぐにできはしないんだけど……。

 ならば、今のボクにできる事はひとつ!


「ガマスター……さん、みんなの事をよろしくお願いします」

「それは構わんが……お前はどうするのだ?」

「ボクは……」

 眼前の兵士を見据えて、杖を構える。

 そして、こちらを見下ろす淫魔女王をキッと睨み付けてながら、ハッキリと宣言した!


「淫魔女王・ウェルティムを倒します!」

 と。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ