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追放・獣人×女装ショタ  作者: 善信
第三章 迫る死霊王の影
33/84

07 久しぶりねぇ

            ◆


 まだ夜も明けぬ深夜のうちに、街を守る防壁の外に出た、僕達を含めた全ハンター達は、迫るアンデッドの軍勢を迎え撃つべく陣を組む。

 とは言っても、ガチガチに固まる訳じゃなく、ある程度の連携が取れるように、広がって配置されているといった感じだ。


「そ、それじゃあ、冥界の『獄卒』を呼び出すッス!」

 今回のアンデッド軍団に対する、強力な手札ともなるかもしれない冥界神の眷族。

 死霊"召喚"師であり、冥界神からの加護を持つロロッサさんだからこそ、呼び出せるというその存在に興味を示した、皆の目が彼女に集まる。

 そんな中、激しい緊張の面持ちで、ロロッサさんは詠唱を始めた。


「あ、あびゃ……びゃ……」

 皆に見られているプレッシャーから、なんだか頼りない感じの詠唱になってるけど、大丈夫なんだろうか?

 そんな風に少し心配していたけど、一分ほどが過ぎた頃にロロッサさんの周囲に変化が現れた!

 彼女の影が水面みたいにボコンと泡立ったかと思うと、まるで沼から這い上がってくるかのような、黒い塊が浮かび上がってくる!

 それは、やがてロロッサさんの頭上に集まると、人に似た形を取り始めた。


 身長は優に二メートルを越え、巨大な鎌を携えている筋骨粒々な肉体。しかし、表面は闇を凝縮したかのような黒一色となっている。

 そして、顔に当たる部分だけが、つるりとした仮面を思わせる凹凸の無い白いのっぺらぼうという、異形の姿だった。


 こ、これが、冥界の『獄卒』……。

 以前、狩人の村で邪神教団の連中が喚び出した『悪魔』とは、また違った威圧感を醸しながら、堂々と佇んでいた。


 皆が遠巻きに『獄卒』を眺める中、それを喚び出したロロッサさんは、平然と歩み寄っていく。

「おひさしぶりッス、カマー氏!」

『あら~、ロロちゃんじゃない!久しぶりねぇ!』

 なんかイメージと違う!?

 野太い声なのに、女性っぽいしゃべり方の『獄卒』は、クネクネとしな(・・)を作りながら、ロロッサさんに話しかける。


『ロロちゃんてば、最近ぜんぜん冥界(ウチ)に顔を出さないじゃない?冥界神様(ママ)が寂しがってたわよ~』

「すんませんッス。近くご機嫌うかがいに行くッス」

『そうしてねぇ。ロロちゃんは冥界神様(ママ)お気になんだから!』

 まるで、行きつけの飲み屋の店員と常連客みたいな会話を終えると、カマーと呼ばれた『獄卒』は僕達をぐるりと見回した。


『で、今日はなんだって、アタシを現世に喚び出したりしたのかしら?』

「実は、少しカマー氏の力を貸してほしいんス!」

『ああ~ん、ダメよ!アタシ、現世の理には介入できないからっ!』

 カマー……さんは、両手でバツを作りながら、無理無理と首を振った。

 ダ、ダメなの!?

 一瞬、僕達の間に落胆する空気が流れたけど、ロロッサさんは言葉を続けた。


「それはよくわかってるッス。でも、ウチらの敵は邪悪な死霊魔術師なんスよ!」

『ああん!?』

 邪悪な死霊魔術師……このくだりを聞いた途端、怒気のこもった声と共に、顔のないカマーさんに怒りの表情が浮かんだ気がした。

『邪悪なって事は、邪神の流れを汲む死霊魔術を使う野郎が敵って事?』

「アンデッドが大量発生してこちらに向かって来てるそうなんで、まず間違いないッス!」

 むぅ、死霊魔術にも系統の違いとかあるんだろうか?

 僕も魔法使いの一人として、ちょっとその辺の話には興味が湧いてくる。

 後で話を聞いてみようと思っていたら、僕以上に好奇心を刺激されたらしいお祖母ちゃんが、ロロッサさんの袖をクイクイと引いていた。

 ああ、もう!

 こういう時には、歳甲斐なく落ち着きがないんだから!


「ねぇねぇ、ロロッサちゃん。話の腰を折って悪いんだけど、死霊魔術に系統の違いなんてあるのぉ?」

「あ、はい。簡単に言うと、冥界神様の許可を貰う形で死者に仮初めの命を与える、ウチの死霊召喚系。そして、無理矢理に死者の魂を縛って傀儡にする、邪神由来の死霊魔術系の二種類があるッス」

『前者はいいのよ、アタシ達も管理できてるし、用事が終われば死者の魂(子猫ちゃん達)も冥界に還って来るから。でも……』

 そこで言葉を区切ったカマーさんが、メキメキと音を立つほどに拳を握りしめる。


『邪神系の死霊魔術はさぁ!こっちの管理もお構いなしに、好き勝手にやるから後始末が大変なのよ!残業も増えるし、ストレスたまるし、憎たらしいったらありゃしないっ!』

 こ、怖い……。

 怒りを顕にするカマーさんは、なんだか倍以上に膨らんだ気がするほどに威圧感を増していた。

 邪神系の死霊魔術なんて物があるのに驚いたけど、こんなにも冥界の人達から嫌われてるとは思いもしなかった。


『いいわ、ロロちゃん。今回は手伝ってあげる!その代わり、敵の死霊魔術師にトドメを刺す前に、アタシにも一発ぶん殴らせてよねっ!』

「了解ッス!」

『それで、アタシは何をすればいいのかしら?』

 その質問に、ロロッサさんと交代して僕が答える。


「カマーさんには、基本的に街の防衛をお願いしたいんです」

『防衛を?』

 強大な『獄卒』の力を攻撃に使うのが普通なんだろうけど、もしも街中にアンデッドが侵入でもしたら、あっという間にパニックになるだろう。

 そうなれば、かなりの犠牲者が出ることは避けられない上、背後から襲われる可能性も出てくる。

 だから、カマーさんの力でゴースト一匹入れないよう、守ってほしいのだと、危惧していた辺りを説明をした。


『ふぅん……でも、こちらに向かった来てるっいう、アンデッドの軍勢はどうするの?』

「それは、僕達ハンターが対処します!」

 どうあがいても対処できない天災とかなら相手ならともかく、僕達自身の力でどうにかなりそうなら、モンスター退治を生業としているハンターが人任せで見物してる訳にはいかない。

 その決意を感じ取ってくれたのか、カマーさんの仮面に笑みが浮かんだような気がした。


『困難に立ち向かう気概を持っているのは、良いことだわ。もしもこの戦いで死んじゃう子猫ちゃんが出ても、冥界でサービスしちゃうからっ!』

 そのサービスというのがどういう物なのかわからないけど、投げキッスをするカマーさんの姿に、僕達全員がブルリと震え、「絶対に死なない!」と決意を新たにしていた。


 ──それから少しして、偵察に出ていた数人のハンターが戻ってきた。

 彼等からの報告によると、あと十分ほどで敵の先頭集団が見えてくるらしい。

 理想としては、アンデッドが弱体化する太陽が出てから会敵するのが一番だったんだけど、さすがに相手もそんな迂闊な真似はしないか。


「それじゃあ、皆さん!作戦通りにお願いします!」

「私達が敵の頭を潰すまで、アンデッドの群れは任せたよ!」

 僕とディセルさんの呼び掛けに、ハンター達から大きな歓声があがる。

 うん、皆の士気は高いみたいだ。

 もしかしたら、戦闘後の宴会を想像しての、気合いの入りっぷりかもしれないけど。


「それじゃあ、私からも皆にプレゼントよぉ!」

 そう言って、ちょこんと前に出たお祖母ちゃんが、魔法を発動させる。

 すると、この場にいる全ハンターの体に(・・・・・・・・)光が灯った!


「アンデッドが得意なぁ、毒、麻痺、精神汚染への耐性を大幅にアップさせたわぁ!これでみんな、頑張ってねぇ」

 お祖母ちゃんは軽くいうけど、これだけの人数に一度でそんな強化魔法をかけるなんて、またとんでもない事を……。


「すげえ……さすがアムールちゃんのお姉さんだぜ!」

「おお、この美人眼鏡姉妹がいれば、勝てるっ!」

「マーシェリーさん……素敵……」


 もしかして、みんなから引かれるかと思ったけれど、単純に喜ぶ戦士系と、魔法技術の高さからうっとりする魔法使い系がいただけだった。

 お祖母ちゃんの正体を詮索するような声も無いし、ひと安心である。


「……きたぞ!」

 その時、アンデッドが進行してくる方向に目を向けていたディセルさんが、警告の声を発する!

 僕達もそちらに目を向ければ、確かに夜の闇に紛れるようにして蠢く、無数の影が見えた!


「よし!行こう、アムール!」

「はいっ!ディセルさん!」

 僕達、『レギーナ・レグルス』の面々が、先頭をきって駆け出す!

 それに続いてハンター達も、怒濤の勢いでアンデッドの軍勢へと攻撃を開始し始め、戦いの火蓋は切って落とされた!

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