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追放・獣人×女装ショタ  作者: 善信
第三章 迫る死霊王の影
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06 私も鼻が高いわぁ

 広間へ僕達が到着すると、すでにターミヤさん、ロロッサさん、そしてお祖母ちゃんまで準備を整えて待機していた。

「遅いわよぉ、二人とも!」

 お祖母ちゃんが可愛いらしくプンプンと叱って来るけど、ターミヤさんとロロッサさんが「まぁまぁ……」と、宥めてくれる。


『盛り上がっていた若い二人が水を差されたんだし、大目に見てやってくれ』

「そうッス!いつも以上にイチャついていたご様子のお二人だったんで、どれほど無念だったか……」

 いや、ターミヤさんとロロッサさんが力説するほど、残念がってはいないんだけど……。


「あらまぁ!ひょっとして、もうすぐ曾孫の顔が見れるかもしれない所だったのぉ!?」

「お祖母ちゃん!」

 緊急事態っぽいのに、ふざけすぎだよっ!

 それに、そんな風にからかわれたら、ディセルさんだって……。

「その時が来たら、頑張ります!」

 うん……尻尾の揺れ具合からも、本気度がうかがえるくらい、超ノリ気だった。

 いや、その気持ちは嬉しいし、僕もいずれはちゃんと気持ちに応えたいとは思うけど……今はそれどころじゃないよね。


「と、とにかく街の方も騒がしくなってるようですし、ひとまずはギルドに行ってみましょう」

「そうだね、何が起きてるのか確認しなくては」

 特に異論も出ず、まずは情報収集のために僕達はギルドの建物がある、街の方へと向かった。


            ◆


 ギルドの建物近くまでくると、すでに集まっていた多くのハンター達がひしめいていた。

 なん組かのハンターチームに声をかけてみたけれど、まだ緊急事態の銅鑼が鳴らしされた理由について、説明はされていないらしい。


「ある程度のハンターが集まったら、ギルド長から説明があるみたいだが……」

「そうなんですか……ありがとうございます」

 教えてくれたハンターに礼を言い、僕達もギルド長からの発表を待つことにした。


 ──しばらくして、ようやく姿を現したギルド長が、驚くべき現状を告げる!


「よく集まってくれた、ハンターの諸君。現在、南の方向からこの街に向かって、アンデッドの軍勢が迫っているとの報告があった。恐らく、あと数時間後にはこの街に到達すると思われる」

 ざわざわと、ハンター達からざわめきが沸き上がる。

 だけど、それも当然だ。

 何故なら、突発的かつ偶然にアンデッドが群れを成したとしても、それは十体前後が精々で、軍勢(・・)と呼称されるほどの数がたまたま出現するなんて事はありえない。

 それだけの数が一度に現れたという事は、背後に強力な死霊魔術師がいるという事の証明だった。


「それで、そのアンデッドの数はどれくらいなんだ?」

 ハンター達から飛ばされた当たり前の質問に、ギルド長は一瞬だけ躊躇してから答えを返す。

「……推定では、五百体以上。しかもそのほとんどが、モンスター(・・・・・)がアンデッド化した物だ」

 その言葉に、再びどよめきがハンター達から起こった。


「ご、五百体!?」

「ここに集まったハンターの、五倍以上もいるのか!?」

「しかも、アンデッド化したモンスターって……」

 想定外過ぎる事案に、みんな浮き足立っている。

 でも、それは僕達も同じだ。

 前の吸血鬼王の襲撃よりも厄介な事態に、どこから対策を練ればいいのか、考えがまとまらない。

 そんな中、唯一、落ち着いて見えたお祖母ちゃんが、スッと手を挙げた。


「まずは皆、落ち着きなさぁい。数でこちらが劣るというならぁ、しっかりと対策を練らないと全滅するだけよぉ」

 緊迫した場にそぐわない、どこかおっとりとしたお祖母ちゃんの物言いに、皆の注目が集まる。

「あ、あんた……見ない顔だが、何者だ?」

 突然の見慣れない部外者からの言動に、いぶかしむハンター達へ、お祖母ちゃんはにっこりと笑顔を向けた。

 そうしてから、僕の肩にポンと手を置く。


「私はあーちゃん……アムールの()のマーシェリーといいますぅ」

「ぶふっ!」

 あ、姉っ!?

 唐突なお祖母ちゃんの嘘自己紹介に、思わず噴き出してしまった!

(お、お祖母ちゃん!? 急に何を言ってるのさ!)

(だって、あーちゃんは正体を隠してるんでしょう?だったら私も正体を誤魔化さないと、あーちゃんの事がバレちゃうかもしれないじゃない?)

(う……)

 それは……そうかもしれない。

 有名なお祖母ちゃんの本名と、僕との関係性を正直に話せば、僕がアムルズなんじゃないかと、推測する人も出てくる可能性がある。

 でも……外見は確かに若いけど、いい歳をして、姉って……。


「ア、アムールちゃんのお姉さん!?」

「言われてみれば、似てるな」

「美人眼鏡姉妹……いい……」

 幸い、ハンターの皆はお祖母ちゃんの言葉を、すんなり信じてくれたようだ。

 何人かが、挨拶しようと順番を争っていたけど、それらを飛び越えて、ギルド長がお祖母ちゃんに声をかける。


「マーシェリー殿……といったか。しっかりとした対策とおっしゃったが、何か目処はあるのかね?」

「もちろんよぉ」

 断言するお祖母ちゃんに、「おお……」と声があがり、皆が続く言葉に耳を傾けた。


「その数や珍しいアンデッドに気を取られているけどぉ、基本はその軍勢の首魁、つまり敵の死霊魔術師を倒せばいいだけの話じゃなぁい?」

 あまりにも基本中な基本の話に、僕を含めた全員がハッ!とさせられた。

 そ、そうだよ!

 自然発生した訳じゃないアンデッドなら、それを操っている者を倒せば自壊するはずだもの!

 つい浮き足立っていて、そんな事にすら気づかなかったなんて、不覚だ……。


「術師はだいたい、軍勢の最後尾に控えている物だからぁ、突貫力のあるパーティが一直線に軍勢を突っ切って、敵の頭を潰すのが一番手っ取り早い方法かしらねぇ」

 確かに、無駄にタフなアンデッドを全部倒すよりは、それが現実的だろう。

 そして、ここのハンター達の中で、もっとも戦力の高いチームといえば……。

 皆の視線が、僕達へと集中する。

 そうだよね、僕達『レギーナ・レグルス』だよね。


「じゃあ、ボク達が敵の死霊魔術師を叩く、皆にはそれを援護してもらう……で、いいのかな?」

「そうねぇ。それと、街の防衛もお願いしたいわぁ」

 そうか、もしもアンデッドが街に侵入してきたら、襲われた住民がアンデッド化させられてしまう恐れもあるか。


「問題はぁ、本隊の他に伏兵なんかいた場合よねぇ」

 ううむ……確かに小数でも街中に侵入して混乱を起こされれば、下手をすると挟み撃ちにされる可能性もある。

 かといって、数で優る敵の本隊には、ハンター全員で当たる必要もあるし……。

 皆が頭を悩ませる中、今度はロロッサさんがおずおずと手を挙げた。


「あ、あの……街の防衛なら、ウチがなんとかできるかもしれないッス……」

「本当ですか、ロロッサさん!」

「は、はい……『獄卒』の力を借りれれば、街ひとつを守るくらいは……」

「『獄卒』……ですか?」

 聞きなれない単語に首をかしげていると、ロロッサさんがそれについて説明してくれた。


 なんでも、創造神の『天使』や邪神の『悪魔』に匹敵する、冥界神の眷族なのだという。

 冥界で、魂を管理する立場にある『獄卒』ならば、アンデッドに対して強い効果を発揮してくれるそうだ。

 最初の絶望的な一報から、一筋の光明が見えた事で、皆から不安げな雰囲気が払拭されていく。


「よっしゃ!マーシェリーちゃんの作戦通り、アムールちゃん達を全力でサポートするぞ!」

「おおよ!それでもって、勝利の暁には、また大宴会といくか!」

「それなら、アムールちゃんとディセルに、また給事服を着てもらおうぜ!」

「っ!?」

 な、なんでそうなるのっ!?

 今回は僕達が、そんな事をする必要なんて無いのにっ!

 慌てて断ろうとした僕が口を開くよりも早く、お祖母ちゃんがその話題に食いついて行った!


「なぁに、それ!面白そうじゃなぁい!」

 楽しそうに訪ねるお祖母ちゃんに、ハンター達は前回の吸血鬼王襲撃後の宴会について説明する。

 すると、お祖母ちゃんは目を輝かせて、とんでもない事を口走り始めた。


「いいわねぇ。なら、今度は私とロロッサちゃんも、一緒にお給事しようかしらぁ」

「ウ、ウチもッスか!?」

 お祖母ちゃんの言葉に、ハンター達から歓声があがる!

 その反応に気をよくしたのか、お祖母ちゃんはさらに追加でえらい事を言い出した!


「でも、前と同じじゃあ盛り上がりに欠けるわよねぇ。だから、今回はバニーガール姿で給事するっていうのは、どうかしらぁ?」

「なっ!?」

「うおぉぉぉぉぉぉっ!!」

 思わず抗議しようとした僕達だったけど、怒濤のようなハンター達の雄叫びに、それも掻き消されてしまった!

 い、いったい何を考えてるんだっ!?


 僕は沸き上がるハンター達から、お祖母ちゃんを連れて少し距離を取ると、声を潜めて問い詰めた!

「お、お祖母ちゃん!なんであんな事を言い出したのさっ!」

「でもほらぁ、士気はすごく上ったじゃない?」

 た、確かに、みんなヤル気に満ち溢れているけど……。


「これから死地に向かうんだから、これくらいの盛り上がりが無いと、ね!」

 うっ……それは、そうかもしれない。

 なにより、皆が弱気になってしまい、犠牲者が増えるよりはマシ……なのかな。

 少し……いや、かなり恥ずかしいけど。


「それにしてもぉ、皆があーちゃんの可愛い姿でこんなに喜んでくれるなんて、私も鼻が高いわぁ!」

 あまり嬉しくないタイプの孫バカな発言をするお祖母ちゃんに、僕は小さくため息を吐く。

 そんな僕の背中を、ディセルさんが軽く叩いて、にっこりと微笑みかけてくれた。


「後の事はさておいて、今は目の前の脅威に集中しよう」

「……はいっ!」

 さすがはディセルさん、戦士の心構えができていて素敵だ……好き♥

 そんなディセルさんの期待に応えるべく、僕はアンデッド迎撃作戦に向けて、気合いを入れ直した!

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