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追放・獣人×女装ショタ  作者: 善信
第二章 邪神教団の罠
15/84

01 『レギーナ・レグルス』の昇級が決まりました

           ◆◆◆


 邪神により選ばれた魔王が支配する地域、いわゆる魔界において、ひとつの事件が魔王軍を震撼させていた。

 その事件とは……。


「スウォルドが敗れた……だと?」

「あの不死身の吸血鬼が?本当なの、それ」

「ああ、残念ながら事実のようだ」


 わずかな照明によってぼんやりと照らされる、とある広い部屋の中。

 中央に配置された円卓に座る者達が、いま魔界を揺るがしている『吸血鬼王(ロードヴァンパイア)の敗北』について話し合っていた。

 この三人こそ、スウォルドと同格の、残る魔王四天王達。


 三メートル近い身長と、鋼のような筋肉の鎧を纏う『鬼人王(オーガキング)』ラグロンド・ムマンガ。


 匂い立つ色気を振り撒き、肢体に張り付くような衣装を纏った扇情的な美女『淫魔女王(サキュバスクィーン)』ウェルティム・アレビレア。


 そして、豪奢な漆黒の法衣を身に付け、白骨化した頭蓋骨の瞳に赤い炎を宿した『死霊王(デスカーディナル)』フハイン・マスターナの三人である。


「太陽すら克服した吸血鬼を倒すなど、いまいち信じられんが……まさか、『聖剣の勇者』か?」

「いいや……『ハンター』と呼ばれる連中を知っているだろう?」

 宿敵の名をあげ、ニヤリと笑うラグロンドに対して、フハインは否定の言葉と共に首を振ると、意味深に問いかけた。

「たしか、人間のモンスター退治組織よね……って、ちょっと、まさか!?」

 身を乗り出しだラグロンドとウェルティムに、フハインはコクリと頷く。


「そのハンターの一人……なんでも、『アナルブレイカー』の二つ名をもつ、人間の魔法使いに殺られたそうだ」

「『アナルブレイカー』!?」

 その酷い二つ名に反応した鬼人王と淫魔女王が、ギョッとした様子で声を上げた!


「な、なんだその異名は!? ふざけているのかっ!」

 ラグロンドがダン!と激しく机に拳を打ち付けながら吠える!

 そのもっともな反応に、死霊王はため息のようなものを吐いて、落ち着けと促した。

「ふざけてなどいない。実際、スウォルドの奴は尻に杖の先をブチ込まれて、敗れたそうだ」

「あら、すごい♥」

 にちゃ……っと粘つく笑みを浮かべる淫魔女王に、二人の幹部は嫌そうな表情で視線をそらす。


「と、とにかくだ!我らの怨敵である『聖剣の勇者』ならいざ知らず、在野のモンスター退治なんぞやっている雑魚(にんげん)に敗れたとあっては、四天王の沽券にかかわるぞ!」

「その通りだ。早急に、スウォルドを殺した『アナルブレイカー』を始末せねばならん」

「その物言いだと……もう手は打ってあるのかしら?」

「ククク……もちろんだ」

 含み笑いを漏らしながら、フハインは骨だけの拳を握る。


「あの周辺に潜伏している、我等が神を信奉する教団に、すでに指令を飛ばしてある」

「フッ……なるほどな」

「闇に紛れる暗殺者の群れに狙われては、『アナルブレイカー』とやらもおしまいね……できれば一度、試してみたかったけど」

 ウェルティムの台詞に、男二人は「イヤイヤイヤ……」と小さく手を振りながら、その話題から逃れるように次の議題を持ち出して、話を変えていった。


            ◆◆◆


「くしゅん!」

 急に背筋にゾクリとした物を感じて、僕は大きなくしゃみをひとつした。

 なんだろう……どこかで誰かが、僕の噂でもしてたんだろうか。


「大丈夫かい、アムール?」

 隣を歩いていたディセルさんが、ひょっこり僕の顔を覗き込んでくる。

「え、ええ。大丈夫ですよ」

「うん、それならよかった」

 ニコリと微笑んで、彼女はまたピタリと元の位置に戻った。

 う、うーん……。

 吸血鬼王スウォルドを倒してから数日が経ち、日常に戻った僕達は、いつものように依頼を終えた帰路についていた。

 ただ、この前のキスの一件から、ディセルさんがずっとこの調子なのである。


 良く言えば、姫を守る騎士。悪く言えば大きな忠犬(ワンコ)といった感じで、常に僕から付かず離れずの位置をディセルさんはキープしていた。

 実際、戦闘の最中でもいいタイミングで僕を守ると、『ほめて!』といった感じで、チラチラと見てくる事が多くなっている。

 そんな時に賞賛すると、顔ではクールに決めながらも尻尾がブンブン振れてたりするのだ。

 いや、それは自体はすごく可愛いし、良いことなんだけどね。


 ただ、その度に守られる喜びと情けなさみたいな物が入り雑じって、複雑な気持ちになる。

 パーティなんだから、役割分担の範疇と割り切ればいいんだろうけど……やっぱり男としては、お姫様みたいに守られてばかりよりも、僕がディセルさんを守りたいって気持ちもあるのだ。

 そんな、少しばかりのモヤモヤを抱えたまま、僕達はバートの街へと帰還した。


 依頼の完了をギルドに報告するため、僕達はまっすぐ支部へと向かい建物に入ったんだけれど……何やら室内の雰囲気がおかしい。

 何かあったのかな……?

 そう思って、手近にいたハンターに声をかけると、思わぬ情報が彼の口から飛び出した!


「せ、『聖剣の勇者』一行がこの国に!?」

「そうなんだよ。なんでも、この前の吸血鬼野郎の事で、情報を集めに来てるらしいぜ」

 もしも会えたら、サイン貰わなきゃ!と瞳を輝かせるハンターに礼を言って、僕はその場を離れた。が……。


 し、しまったあぁぁ!

 そりゃ、こんな辺境の街に魔王四天王の一人が現れ、しかも撃退されたとなれば、噂は広まるに決まってる!

 そうなれば、聖剣の勇者一行(エルビオさん達)の耳に入るのも当たり前じゃないかっ!

 あああ……どうしよう。

 万が一、顔でも合わせて僕の正体がバレたりしたら……。

 考えただけで恐ろしくなり、僕はブルブルと身を震わせた。

「ア、アムール、しっかりして!」

 ディセルさんが心配そうに声をかけてくれるけど、素直に大丈夫とは言いがたい。


 よし……ここは、勇者様が来る前に、長期の依頼でも受けて街を離れておこう!

 ディセルさんにもその旨を伝えてみたところ、二つ返事で賛同してくれた。ありがたい。

 そうと決まれば、さっそく依頼を受けるために、僕達は受付へと向かった。


「ああ、お帰りなさい、アムールさんにディセルさん!」

 カウンターでは、受付嬢のネッサさんが、僕達をいつもの……いや、いつもよりさらにほがらかな笑顔で迎えてくれた。

 何かいい事でもあったんだろうか?

 ひとまず、今回の依頼を終えた報告をして、しばらく遠出するような依頼がないか尋ねようとした、その時。

 ネッサさんの方から唐突に、「おめでとうございます!」と声をかけられた!

「え……?」

 戸惑う僕達に、ネッサさんは少し声を抑えて「おめでとうの訳」を説明してくる。


「実はですね、アムールさん達のチーム『レギーナ・レグルス』の昇級が決まりました!」

 ええっ!

 思わぬ話に僕もディセルさんもギョッとするけど、それ以上にネッサさんの方が興奮していた。


「こんな辺境の支部から、B級チームが生まれるなんて、快挙ですよ!お二人のギルド入会を担当した私としても、すごく感慨深いです!」

 うんうんと、力強く頷くネッサさん。

 なんとも突然で意外な話だったけど、こんなにも我が事のように喜んでもらえると、僕達としても悪い気はしない。


 でも、そうか……僕達もB級か……。

 追放されてからというものの、あまり自分に自信が持てなかったけれど、ディセルさんやちゃんとした組織から認められると、僕なんかでもやれるんだって、なんだか元気が沸いてくる!


「良かったね、アムール!」

「はい!ディセルさん!」

 浮かれてハイタッチする僕達を眺めていた、ネッサさんの目がキラリと光った。

「ウフフ……実は、もうひとつ良い知らせがあるんですよ」

「まだ、何かあるんですか?」

 問い返す僕に、彼女は「はい!」と間髪入れずに返してきた。

 いったい、どんな良い知らせなんだろう。

 期待する僕達に、満を持してネッサさんは口を開く!


「なんと、この国を訪れている『聖剣の勇者』さま一行と、合同で依頼を受けていただくことになりました!」


「………………え?」

 それを聞いた瞬間、僕は世界が一転して、目の前が暗くなっていくのを感じていた。

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