インターミッション [ 二章 → 三章 ]
● ここまでのあらすじ
第一章 堀江咲也は、とにかく帰りたい!
主人公・堀江咲也は小説家である。
いや、正確に言えば、小説家未満の小説家志望――しかしながら、彼は、ライトノベル界でも最高峰と呼ばれるコンペの最終選考に残った猛者だ。
ほぼ小説家みたいなもんである。(本人談)
そして、そのコンペの結果発表日、編集部から連絡を今か今かと待ち続けた咲也だったが……
携帯の呼び出しが鳴った瞬間――――彼は世界から消えた。
異世界へと召喚されてしまったのである。
召喚者は、自分と同じ顔の男だった。
その男は王を名乗り、別々の並行世界から喚び出した「別世界の自分」都合十二人に対し「余の影武者となれ」と迫る。
戸惑う咲也と十一人の召喚者たち。
しかし、王の差し出した対価、「貴族待遇で異世界ライフ」という飴につられ、召喚者たちは王との取引を承諾する。
召喚者の一人、小林が最初の影武者に指名され、
残りの十一人は「カネもヒマもある、優雅な異世界暮らし」を始める。
それぞれ、元の世界で培ったスキルを活かし、異世界のスーパースターとしてチヤホヤされる中……
咲也だけは燻り続ける毎日を送っていた。
そうなのだ。
小説家には全く出番がないのだ。
そもそも、義務教育もない世界だ。識字率は相当に低く、小説のマーケットが存在しない。
演劇や吟遊詩人、琵琶法師、紙芝居屋には、純ライター以外のスキルが求められる。
元の世界へ戻れさえすれば!
僕には、輝かしい小説家ライフが約束されているのに!(※咲也談)
華やかな同期召喚者たちの活躍を尻目に、酒浸りの日々の咲也。
キャッチセールスの女に追いかけられて、逃げ込んだ尖塔……そこでウッカリ足を滑らせ、墜落死しかけるが、そこで一人の軍人に命を救われる。
テュルミー中尉と名乗る彼は、「思想警察」なる組織を率い、邪教の摘発を担当していた。
咲也が入隊するなり、即、摩利支丹なる邪教徒の捜索に駆り出されるが……
咲也は信徒を見逃してしまう。
なぜなら彼は、信仰=悪とは考えていない男だった。
人が信じるものは(自分が理解できなくとも)大切にするべきではないか? と咲也は思う。
そんな咲也を、なぜか気に入った老婆がいた。
アルコ婆と名乗る老婆は、「いい嫁を娶せてやる!」と、勝手に縁談を進めてくる!
別に頼んでもいないのに!(咲也談)
ストーカーも真っ青な勢いで見合いを勧めてくるアルコ婆に、咲也もタジタジ。
「一度だけだぞ!」とキツく念を押して、見合い話を受けるも……
やってきたお相手は、超どストライクの美女!
立つ鳥跡を濁さず、でサッサと元の世界へ戻りたい! と熱望していたはずの決心も、グラグラ揺らぐほどのいい女。
その本心をアルコ婆に見抜かれ、窮地に陥る咲也。
果たして彼は、異世界婚活を(不本意ながら)成就してしまうのか?
第二章 堀江咲也は嘘を決意する
咲也の見合いは(無事?)破談となった。
なぜか?
龍が帝都を襲ったからである。
民から【龍災】と呼ばれる龍の襲来は、不定期に帝都を襲う災害のようなもの。
自警団が必死の抵抗を見せるも――巨大な龍を前にしては、為す術もなし。
王の秘策「龍曲掃界 ポリフォニカ(=龍を弱らせる音響兵器)」も、爆炎ブレスで蒸発!
結局、龍は帝都を離れたものの、被害は甚大だった。
が――
意気消沈する民衆の前に現れたのは、(龍の爆炎ブレスで)死んだはずの王だった!
王の健在に民衆は驚喜! 不死身の王を称える声が都中に溢れた。
しかし、召喚者たちは知ってしまった。
「不死身王」のカラクリを。
それは影武者を生贄にした、馬鹿みたいに単純な入れ替わり劇だった。
つまり、龍が帝都を襲うたび、影武者が一人、死ぬ。確実に死ぬ。
希望を失った召喚者たちは自暴自棄となり、自堕落な生活に耽ってしまうが……
咲也だけは違っていた。
何とか(王の力を借りずに)自力で元の世界へ帰れる方法はないか? と帝都中の書庫を巡り、召喚魔術の書物を漁りまくった。
成果はゼロだったけどね!(※本人談)
――しかし、
そんな手詰まりの昨夜に、朗報が飛び込んでくる。
テュルミー中尉が「摩利支丹最後の大物を発見した」というのだ。
帝都中の魔術書を調べ尽くした咲也だったが、一つだけ、全く手を付けていない場所がある。
邪教徒・摩利支丹が秘匿する魔術書類だ。
「これだけ探しても見つからないんだ、必ずそこにあるに違いない!」と確信した咲也、
摩利支丹最後の大物、のアジトへの潜入捜査を志願する。
ところが……テュルミー中尉に指示された場所には、アルコ婆の婚活事務所があるだけだった。
確かに、アルコ婆は信者に敬われる教祖的な存在っぽいが……
邪悪なカルト教団とは、とても思えない。
咲也は「邪教の幹部など、いなかった」と嘘の報告を決意するが……
その時!
婚活事務所に殴り込んでくる思想警察!
咲也が呆気に取られる中、「邪教の最高幹部」ことアルコ婆は、中尉の手に落ちてしまった……




